日本内科学会雑誌
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53 巻, 4 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 倉田 誠, 中元 克己
    1964 年53 巻4 号 p. 407-412
    発行日: 1964/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    中枢性血糖調節機序を究明せんとして,健常家兎にバゾプレッシンを静注し,その際の血糖値の変動ならびに肝細胞内グリローゲン顆粒の消長を追究すると共に,副腎・甲状腺・膵の摘除,自律神経切断あるいは中脳・脊髄切断を行ない,その影響を観察することによりその調節路を探索せんと試みた.その結果バゾプレッシンによる血糖上昇は,中枢性に中脳・胸髄・内臓神経を経て起こり,肝内のグリコーゲンが糖となり血中に移行したためと思われるが,膵グルカゴンとの関連については目下検索中である.なおかゝる血糖上昇路が遮断された場合にはバゾプレッシンにより迷走神経を経て血糖低下を来たすように思われる.
  • 心不全時の尿中Catecholamine排泄態度の変動
    松本 哲郎
    1964 年53 巻4 号 p. 413-423
    発行日: 1964/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    弁膜障害ならびに高血圧症に基づく心不全患者の尿中catecholainineの分離定量を行ない,それと各種臨床検査所見,心不全の程度,経過との関係を検討した.尿中active catecholsは心不全の程度が進むにつれて増加し,その頂点は心不全III度にみられる.心不全IV度ではかえつて減少するが,なお正常値より高値をとる.この型は個々の症例を追求しても認められ, IV度からIII度へは増加を, III度からII度へは減少する.酸カテコールス,ドパミンは,心不全の程度と特に相関を認め得ない. activecatecholsの排泄量は心不全の原因よりもその程度に関係する.尿中adrenalineの排泄量は比較的安定しているが, noradrenaline排泄量はばらつきが大である.尿中active cate-cholsの増加は心不全にたいし有益性を有していると考えられ,その点につき,種々の点より考察を加えた.
  • 西本 幸男, 勝田 静知, 佐藤 哲也, 末田 敏, 行武 正刀, 野島 達也, 中島 武嗣, 西田 修実, 河内 孝明, 原田 信徳, 浜 ...
    1964 年53 巻4 号 p. 424-433
    発行日: 1964/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性気管支炎は,ようやく,わが国の呼吸器疾患の中で重要な疾患の一つに数えられるべき状態になりつゝあるが,難治の疾患であつて,全治せしめることは必ずしも容易ではない現状である.そこでわれわれは,慢性気管支炎を気道感染の強弱および閉塞性換気障害の有無により4型に分けた新しい臨床的分類を提案し,その有用性について検討を加えた.この分類は慢性気管支炎の経過中のある時点における状態を卒直に表現し,行なうべき治療方針をうるためのものである.従つて治療効果のいかんによつては,ある型から他の型へ移行する場合もありうる.ともあれ,慢性気管支炎と診断された延べ252例について,化学療法薬・抗炎症薬・気管支拡張薬・酵素薬による治療を実施して検討を加えた結果,われわれの臨床的分類は薬物の選沢・治療成績の向上に対し実地上の価値を有するものであることが判明した.
  • 小林 快三, 柴田 昌雄, 藤井 隆吉, 加藤 克己, 岩津 秋久
    1964 年53 巻4 号 p. 434-445
    発行日: 1964/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    2, 4, 7-triamino-6-ghenylpteridine (TPPと略) (Triamteren)を浮腫性疾患および高血圧症に投与し,その臨床効果を検討し,とくに長期間投与とサイアザイド系薬物との併用例について観察した.本薬を,まず,単独で投与すれば,有効なNa利尿と水利尿作用を有し,尿中Kの排泄が抑制された.次に,サイアザイド薬との種々の組合せで投与することにより, Na利尿は増強し, K排泄には著変をみず,相殺的態度を示した.腎疾患および高血圧症に投与し,緩徐な利尿と降圧が認められ,単独短期投与(1カ月以内)で血清Kの上昇が認められたが,長期投与では上昇傾向あるも正常範囲の変動を示した.次に,サイアザイド薬との併用例では,利尿・降圧効果が増強し,血清Kの変動は単独例に比して少なく,血清Naは著明な低下を認めなかつた.長期間(約6カ月以上)の併用によつても,血清電解質は著しい異常値を示さなかつた.副作用としては, 150mg/日以上の投与例において,血清尿素窒素の上昇傾向,肝機能の軽度障害例がみられた.以上, TPPの臨床効果はサイアザイド薬との併用が合理的であつて,長期投与のさい,高血圧症では最小有効量の併用が望ましく,浮腫疾患では150mg/日以上のさい,肝・腎の機能に注意しつゝ使用すべきものと思われる.
  • 倉光 宏
    1964 年53 巻4 号 p. 446-453
    発行日: 1964/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    眼球ないし頚動脈洞圧迫の臨床的応用が最近再評価されてきたが,健康者についての観察は案外少ない.わた〓しは健康青年(134名)の心に対するこれら反射性迷走神経作用を観察した.これらの成績を概括するとnegative chronotrophic effectはかなり高率に出現し,かつその個人差はきわめて大きい.それに比し伝導抑制効果はずつと少ない.さらに期外収縮その他の能動的異所刺激生成の出現は通常みられないが,圧迫停止後に期外収縮が出現することは稀でない. P変型はしばしばみられるが,洞房調律におけるQRSの変型はきわめて稀であり,また一次性のST, T変化はみられない,なお圧迫中に出現した房室性補充収縮が全例とも変行性伝播を示したことは,そのmechanismの上から興味深い.眼球圧迫の左右差は認められない.頚動脈洞圧迫の心電図効果は眼球圧迫のそれとくらべるとずつと少ない.
  • 伊達 正
    1964 年53 巻4 号 p. 454-461
    発行日: 1964/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    目的: glucuronide分解酵素であるβ-glucuronidase (B-G)を阻害すれば, glucuronide生成による抱合を増進し得るのではないかと考え,強力なB-G阻害物質であるglucosaccharo-1: 4-lactone (SL)を用いて,その生体に及ぼす諸影響を検した.結果:ヒトおよび家兎にSLを単独投与しても尿中glucuronideは増加しないが, menthol, PAS, thyroxineなどのグルクロン酸(G酸)被抱合物質にSLを併用すると,各単独投与に比較し, glucuronideは有意に増加した,すなわちSLはそのB-G阻害作用により, G酸による抱合を増進させることを知り得た.さらにthyroxine投与でみられた家兎の体重減少がSLの併用で防止されたことはthyroxine glucuronideに及ぼす影響を暗示させるが,甲状腺機能亢進症患者にSLを投与しても,基礎代謝率の改善はみられなかつた. SLは肝機能,腎機能,血液像になんら惡影響はみられなかつたはが, G酸抱合や, B-Gの作用が多岐にわたることを思えば,これを臨床に利用するるにはさらに検討を要するものがあろう.
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