日本内科学会雑誌
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95 巻, 11 号
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内科学会ニュース
会告
特集●抗菌化学療法 : 診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I. 化学療法の基礎
  • 満田 年宏
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2168-2175
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    抗菌薬感受性試験は最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, ブレイクポイントMICに基づき評価され臨床医に報告される. 今後は, 薬物動態/薬力学 (PK/PD) ブレイクポイントを考慮した抗菌薬感受性試験成績の評価に基づく抗菌薬療法が重要となろう. MRSA判定の検査精度を高めるため, 指示薬が従来のオキサシリンからセフォキシチンに移行しつつある. 検査室で実施可能なβラクタマーゼのクラス別分類に関する検査試薬が登場してきた. また, 抗菌薬の適正使用の観点から検査成績に基づく抗菌薬のde-escalation療法が注目されている.
  • 井上 松久
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2176-2180
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    抗菌薬耐性菌の分離動向は, 治療現場での抗菌薬の使い方と細菌と抗菌薬との組み合わせによって左右される. 特にCEP系薬やCBP系薬の使用は, ESBL産生菌, グラム陰性桿菌の染色体性クラス℃型酵素AmpCのプラスミド化, あるいはCBP系薬耐性緑膿菌の出現を招いている. 一方, FQL系薬の使用は, 種々の菌種から耐性菌の選択を招いているし, 新たにFQLの不活化酵素の選択やプラスミドの伝達能の亢進などをもたらしている.
  • 斧 康雄
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2181-2187
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    β-ラクタム系薬のように抗菌薬の殺菌効果がPK/PDパラメータのtime above MICと相関する薬剤では, 病巣において起炎菌のMIC以上の濃度が長くなるように分割投与を行うなどの投与法の工夫が必要である. アミノグリコシド系薬やニューキノロン系薬のような殺菌効果がAUC/MICと相関する抗菌薬では, 1日の総投与量が重要となるため投与回数が少なくても良く, さらにCmax/MICとも相関するので分割投与よりは, 1回投与量を増やす方が殺菌効果が高くなる.
  • 平松 和史, 門田 淳一
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2188-2192
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    感染症の薬物療法において, 抗菌薬はその中心となる薬剤である. しかしながら近年の肺炎球菌などの各種抗菌薬に対する薬剤耐性菌の増加は, 抗菌薬の選択を複雑にしている. さらに耐性菌の増加を可能な限り抑制する, 賢い抗菌薬の選択も望まれている. これらのためには抗菌スペクトラム, 臓器移行性, 副作用などの抗菌薬の特性と患者の病態を正確に把握し, 抗菌薬の選択を行う必要がある.
II. 特殊病態における抗菌化学療法
  • 伊賀瀬 道也, 三木 哲郎
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2193-2196
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    高齢者は健康な状態でも基礎体力や免疫能が低下しており, 多くは既存の基礎疾患があることなどにより感染症が重症化しやすい. このため初期治療の如何により予後が大きく影響されることが考えられる. 従って抗菌薬を選択する際には高齢者の特性を理解すること, 抗菌薬の投与前にその薬剤の副作用, 薬剤間相互作用に十分理解することが必要である. さらに抗菌薬の投与方法もその抗菌薬の体内動態を理解したうえで決定していく必要がある.
  • 吉田 篤博, 木村 玄次郎
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2197-2201
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    腎不全・透析患者への抗菌薬投与を考えるにあたり, 対象症例の腎機能の正しい評価とその薬剤の排泄経路を考える必要がある. また, 感染症による腎障害と判断されている症例の中には使用している抗菌薬の副作用で腎機能障害を起こしている場合もある. 薬剤による腎障害でさらに薬剤の排泄が遅延し, 副作用を増幅している症例も少なくないと思われる.
  • 田村 和夫
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2202-2207
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    造血器疾患や抗がん治療後に顆粒球減少 (好中球減少) 症に遭遇する機会は多く, 重症例では感染症のため死にいたることもある. そのため抗菌薬の予防的投与, 発熱性好中球減少症 (febrile neutropenia, FN) では適切な検査の後, 経験的な抗菌薬投与が薦められる. FN時の起因菌の検出率は10%以下だが, 分離菌ではグラム陽性菌の検出率が増加する一方で, 一定の割合で緑膿菌などのグラム陰性桿菌も分離される. FNでは重症感染症発生リスクが低い群と高い群に分け, 前者ではキノロン系経口薬か広域抗菌薬単剤の静注, 後者ではより強力に広域静注抗菌薬を使用する. その結果60~70%が改善する. 今後とも治療法の改善に向けて臨床研究を続けていくことが重要である.
  • 三鴨 廣繁
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2208-2213
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    妊婦の感染症治療に有用な抗菌薬は, ペニシリン薬やセフェム薬などのβ-ラクタム薬を第1選択薬とし, 次いで, マクロライド薬を使用する. 投与量は, 常用量でよいが, 投与期間は, 可能な限り短くする. 併用療法は可能な限り避け, 単剤で治療する. さらに, 新薬の使用には, 慎重になるべきであり, 可能な限り直ちに用いない. また, 十分なインフォームド・コンセントを得てから使用することに心がける必要がある.
  • 鯉渕 智彦, 岩本 愛吉
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2214-2219
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    Human immunodeficiency virus (HIV) 感染者に対する抗菌化学療法は, 原則として非HIV感染者と同様でよい. しかし, HIV感染者では特有な日和見感染症を生じることがあり, それらの感染症を迅速に鑑別することが必要である. 鑑別診断の参考になる指標はCD4陽性Tリンパ球数である. 一部の日和見感染症に対しては予防薬投与により罹患率が低下することが示されている. また, 抗菌薬の中には抗HIV薬と相互作用を有するものがあり, 注意を要する.
III. 臓器感染症の特性と抗菌化学療法
  • 笠原 敬, 三笠 桂一
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2220-2224
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症を惹起する微生物は非常に多彩である. そして基礎疾患や年齢などの生体側の要因により, 発症する感染症はその時間経過や重症度など, さらに多様化する. 一方で呼吸器感染症に使用できる抗微生物薬の種類もその抗菌力や臓器移行性など, 非常に多様化している. 呼吸器感染症における抗菌化学療法では, 微生物, 患者, 抗微生物薬の三者の関係をことさら強く意識する必要がある.
  • 小林 芳夫
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2225-2231
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    以前は敗血症の代表的な疾患は亜急性細菌性心内膜炎であったが, 現在は亜急性細菌性心内膜炎は感染性心内膜炎と呼称が変わりいくつかの血中から菌が検出される疾患とともに敗血症から除外されるようになった. これに加えてSIRSの概念を導入したセプシスも敗血症を構成する新しい疾患概念として登場した. セプシスはsepsisの邦語訳であるが菌血症が必要とされないためあえてセプシスと表記した. 血中菌の証明は血液培養のみであったが, 現在は遺伝子診断法を応用したハイブリゼップ法, DNAマイクロアレイ法, Real-time PCR法などがある.
  • 渡邊 浩, 土橋 佳子
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2232-2237
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    髄膜炎は細菌感染による細菌性髄膜炎とウイルス感染が主体である無菌性髄膜炎に分けられるが, 細菌性髄膜炎について概説した. わが国における細菌性髄膜炎の原因菌としては, Haemophilus influenzae, Streptococcus pneumoniae の頻度が高いが, いずれも耐性菌の増加が問題となっており, そのため抗菌化学療法は耐性菌にも対応したものへと変化しつつある. 既に海外でその効果が確立されたH. influenzae type bに対する蛋白結合ワクチンなど髄膜炎予防に有効なワクチンの導入が望まれる.
  • 清田 浩
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2238-2245
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    尿路感染症は外尿道口からの起炎菌の上行性感染により起こる. 起炎菌の多くは大腸菌あるいはコアグラーゼ陰性ブドウ球菌であるが, これら以外が起炎菌であるときには尿路に基礎疾患をもつ複雑性尿路感染症を考慮する必要がある. 男性の尿道炎の主な起炎菌は淋菌とクラミジアであるが, 前者は薬剤耐性菌が多く, 注射用抗菌薬であるスペクチノマイシン, セフトリアキソンあるいはセフォジジムのみが有効である. クラミジアには薬剤耐性菌はないがアジスロマイシンのみが単回内服投与が可能である. 内科医診療の際の注意点を述べた.
  • 伊藤 博彰, 飯塚 政弘, 渡辺 純夫
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2246-2250
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    腸管は経口摂取した食物が通過するため, 常に細菌やウイルスといった感染因子に晒されている. 近年の生活環境や食生活の変化などにより感染性腸炎は多種多様になり, その発生件数も増加している. 本稿では, 主な腸管感染症および抗菌化学療法を用いた治療について述べた. 腸管感染症は速やかに鑑別し治療を開始することが重要であるが, 確定診断を待たずとも補液などによる脱水症に対する治療は速やかに行う必要がある.
IV. 最近の話題
  • 田中 裕士
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2251-2255
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    バイオフィルムは気道, 歯, 医療器具病面などに細菌を定着させて, 抗菌薬や宿主免疫に対する抵抗性を高め, 慢性化, 難治化に導く病原因子である. バイオフィルムは段階的に, 浮遊細菌の付着, 微小コロニー形成, 成熟バイオフィルムの順に形成される. クオラムセンシング機構やtwitching motilityも細菌バイオフィルム形成に関与しており, 14員環, 15員環マクロライドにはバイオフィルム形成阻害作用がある.
座談会
トレーニング問題
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 白川 妙子, 大重 雅寛, 栗本 典昭, 宮澤 輝臣
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2302-2309
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    肺癌をはじめとする肺末梢病変の診断には, 気管支鏡による経気管支肺生検が不可欠であるがその診断率は満足できるものではない. より侵襲の高い検査を避けるためにも経気管支的診断率を向上させる必要がある. この目的で近年行われている方法を紹介する. EBUS-GSはガイドシースを装着した細径超音波プローブで病巣の位置を確認し, シースを通じて生検をする. CTガイド下気管支鏡はX線透視の代わりにCTを用いる. 外径2.8mmの極細径気管支鏡は病巣のより近くまでアプローチする. 仮想気管支鏡を用いたナビゲーションシステムは病巣に至るまでの仮想気管支鏡像を示す精巧なガイドマップといえよう. superDimension/Bronchus systemは, 電磁気を利用して気管支内のプローブの位置をモニターしながら病巣までリアルタイムで誘導する謂わばカーナビゲーションのようなシステムである. これらの方法を駆使していかに診断率を上げるかが重要な課題である.
  • 藤村 欣吾
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2310-2320
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) は後天性の血小板減少症で, 出血症状を主徴とし, 発症に血小板膜に対する抗体が関与する自己免疫疾患の一つと考えられ副腎皮質ステロイド療法や摘脾療法が治療の基本である. 最近本疾患の中でヘリコバクタピロリ菌 (HP菌) 陽性症例に対して除菌療法により約40~60%の症例が血小板増加効果を示し, HP菌が一部のITP症例の発症に関係していることが示唆され注目を浴びている. HP陽性ITPの臨床的特徴は (1) HP感染頻度の高い中高年者のITPが多い. (2) ITPとしての重症例は少ない. (3) 骨髄巨核球数は正常よりも増加している症例が多い. (4) 除菌成功群は不成功群に比し有意に, 長期の血小板増加反応が認められる. (5) 除菌前の血小板数, ITPとしての前治療は血小板増加反応に影響しない. (6) 除菌療法による血小板増加反応はITPとしての罹病期間が短い症例に有意に多い. (7) 血小板増加反応は除菌後1カ月で認められる. (8) 除菌療法の有用性の報告は日本, イタリア, 台湾など一部の国に限られている. (9) HP陽性ITPにはHLA-DR, DQ領域に特徴がある, などである. HP陽性ITPに対して除菌療法がITP治療として有用であり, HP関連ITPとしてITPの中に位置づける事が可能と考えられる. HP菌感染とITPの発症にはCag A抗原と血小板膜抗原との間の所謂分子相同性機序が有力である.
  • ―QT延長症候群とBrugada症候群を中心に―
    清水 渉
    2006 年 95 巻 11 号 p. 2321-2329
    発行日: 2006/11/10
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    1990年代後半からの分子遺伝学的研究の進歩により, 一部の致死性遺伝性不整脈疾患が心筋イオンチャネル機能や細胞膜蛋白の調節に関係する遺伝子の変異によって発症することが判明し, 「イオンチャネル病」という概念が生まれた. その代表的疾患である先天性QT延長症候群ではすでに10の遺伝子型が同定されており, 遺伝子診断率も50~70%と高い. このため, 特に頻度の多いLQT1, LQT2, LQT3型患者では, 遺伝子型と表現型 (臨床病態) の関連が詳細に検討され, 遺伝子情報が患者の治療や生活指導に還元されている. 一方, 先天性QT延長症候群以外の遺伝性不整脈疾患では, 遺伝子診断率も低く, 遺伝子診断は未だ研究的側面を脱しているとはいいがたい. しかし, Brugada症候群では, Na+チャネル遺伝子のSCN5A の変異が報告されており, これによるNa+チャネル異常が, 表現型である特徴的な心電図異常や心室細動にどのように関連するかが, 動物実験で明らかとなっている. また最近, SCN5A 上の転写領域に日本人 (アジア人) に特異的に認める遺伝子多型 (ハプロタイプ) が同定され, Brugada症候群の人種差に関連することも報告されている.
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