日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
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111 巻, 2 号
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内科学会NEWS
目次
特集 慢性心不全の薬物治療
Editorial
トピックス
MCQ
シリーズ:診療ガイドラインat a glance
今月の症例
  • 岩永 光巨, 亀崎 秀宏, 黒杉 茜, 妹尾 純一, 坂本 大
    2022 年 111 巻 2 号 p. 277-282
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    16歳,男性.4カ月前より間欠的に激しい嘔吐を繰り返す一方で,発作間欠期には全くの無症状であった.その特徴的な臨床経過より周期性嘔吐症候群を鑑別疾患に考えた.発作時に血清ACTH(adrenocorticotropic hormone),ADH(antidiuretic hormone)値が高値を示すことから,周期性嘔吐症候群と診断し治療した.本疾患で成人診療科を受診することは比較的稀であると考えられていたが,認知度は上昇してきている.激しい嘔吐を繰り返す患者の鑑別疾患として,周期性嘔吐症候群を念頭に置くことは重要である.

  • 土居 寿之, 近藤 しおり, 八島 千恵, 鈴木 将史, 吉田 沙希子, 山本 晋, 福岡 富和, 岡田 貴典
    2022 年 111 巻 2 号 p. 283-289
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    50歳代の女性,抗GAD(glutamic acid decarboxylase)抗体陽性インスリン依存状態の1型糖尿病に対し,持続皮下インスリン注入療法を行っていた.糖尿病発症前からの肥満が問題であり,1年前よりSGLT2(sodium/glucose cotransporter 2)阻害薬の内服を開始した.数日前より感冒症状があり,食事は摂取できなかったが,少しずつ経口摂取していたためSGLT2阻害薬内服は継続していた.嘔気と倦怠感が増悪し受診,血糖269 mg/dlであったが,ケトアシドーシスを認め入院,ブドウ糖とインスリンを同時に持続静注開始.速やかに症状が改善し翌日退院した.SGLT2阻害薬内服中,インスリン依存状態では,経口摂取量減少時に正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic diabetic ketoacidosis:euDKA)を起こす可能性があることを念頭に置く必要がある.

  • 千葉 智貴, 山本 多恵, 今田 悠介, 古田 恭平, 宮内 健一郎, 佐藤 浩司, 古川 暁子, 菊地 達也
    2022 年 111 巻 2 号 p. 290-295
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    78歳,女性.横行結腸癌術前の注腸造影検査前処置でMg製剤を摂取後,意識障害,血圧低下を認めた.血液検査にて血清Mg高値,血清Ca高値を指摘され,大量補液及びエルカトニン投与を行い,意識障害と電解質異常の改善が得られた.背景として,慢性便秘,腸管病変,腎機能障害に伴う,薬剤の吸収率増加と排泄障害を来たしたことに加え,最大量の酸化MgやVit. D製剤の定期内服等薬剤ポリファーマシーの影響が考えられた.

  • 住友 賢哉, 森住 俊, 高橋 清英, 西山 美保, 髙橋 佳伸, 岩村 伸一, 前田 健一, 篠原 勉
    2022 年 111 巻 2 号 p. 296-302
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    溶接工肺はヒュームの吸入により発症するじん肺症の一つであり,粉じん曝露の低減や回避により改善が期待されるじん肺症である.症例は44歳男性.慢性咳嗽を主訴に来院した.職業歴,血清フェリチンの上昇ならびに胸部CT(computed tomography)所見から溶接工肺を疑い気管支鏡検査を実施した.気管支肺胞洗浄液中に鉄染色陽性のマクロファージを認め,溶接工肺と診断した.溶接マスクの徹底により改善を認め粉じん曝露の低減の重要性が示された.

医学と医療の最前線
  • 千酌 浩樹
    2022 年 111 巻 2 号 p. 303-314
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    抗菌薬使用においては耐性菌選択を避けることができないため,最大の治療効果を得ながら,使用量や使用期間を最適化すること,すなわち抗菌薬適正使用が求められている.抗菌薬適正使用を推進するためには,抗菌薬処方医の努力に加えて,医師,薬剤師を中心としたチームを作り,これを支援することが有用であることが明らかとなり,antimicrobial stewardship(AS,抗菌薬適正使用支援)の概念が生まれた.ASのさまざまな戦略の中で,「早期モニタリングとフィードバック」と「抗菌薬使用の事前承認」の有効性に関するデータが多い.ことに前者はその受け入れられやすさから,本邦で採用する施設が多く,infectious disease(ID)consultation等他の手法と組み合わせることでさらに効果的であると考えられる.今後は,外来におけるASや,ASのためのチームを持つ病院が,持たない病院を支援する地域連携の推進が期待される.

  • 武田 伸一
    2022 年 111 巻 2 号 p. 315-322
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    Duchenne型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy:DMD)は,小児期発症の最も頻度の高い遺伝性筋疾患であり,進行性で重症の筋萎縮と筋力低下を特徴とし,致死性の心不全,呼吸不全を呈する希少性疾患である.その治療法として我々はモルフォリノ核酸(phosphorodiamidate morpholino oligomer:PMO)を用いてフレームシフト変異をmRNA(messenger ribonucleic acid)レベルで修正して,疾患を治療する核酸医薬品,ビルトラルセンを国内企業と協力して開発した.医師主導治験として早期探索相試験を行い,その後,国内企業による後期相臨床試験が行われた結果,国内開発の核酸医薬品として初めて,条件付き薬事承認され,米国でも迅速承認されている.公知申請された合成副腎皮質ホルモン剤を除き,国内初めての筋ジストロフィー治療薬である.新たな治療薬の開発により,希少性疾患に対する医薬品開発の基盤が築かれただけでなく,医療体制にも影響を及ぼす可能性がでてきた.

  • 鳥生 直哉, 好川 貴久, 柳田 素子
    2022 年 111 巻 2 号 p. 323-330
    発行日: 2022/02/10
    公開日: 2023/02/10
    ジャーナル フリー

    慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)では,その病因に関わらず腎間質領域に線維化の進行が認められる.腎線維化は筋線維芽細胞が過剰に細胞外基質を分泌することで惹起されるが,そのメカニズムには不明点も多い.近年,腎臓の筋線維芽細胞の大部分は健常な腎臓に存在する腎線維芽細胞と周皮細胞が形質転換して生じること,また,この形質転換の過程で腎性貧血や傍尿細管毛細血管の喪失等,CKDに特徴的な病態が惹起されることが明らかとなった.一方で,筋線維芽細胞の腎保護的な側面についても報告されている.さらに,腎線維化の一因として,障害近位尿細管上皮細胞やマクロファージと腎線維芽細胞のクロストークが注目されている.また,腎臓内で慢性炎症を引き起こす三次リンパ組織の形成にも,特殊に分化した腎線維芽細胞が寄与している.本稿では,腎線維芽細胞の多彩な形質獲得からみた腎線維化のメカニズムに加え,現在開発中の腎線維化の画像診断・治療薬についても概説する.

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シリーズ:一目瞭然!目で診る症例
医療事故の再発防止に向けた提言より
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