日本内科学会雑誌
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87 巻, 6 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
  • 井村 裕夫
    1998 年 87 巻 6 号 p. 983-985
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 石橋 みゆき
    1998 年 87 巻 6 号 p. 986-994
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    内分泌疾患の診断は,患者の臨床症状からその疾患を疑い,検査を進めることによってはじめて可能になる.合併症の発生を防ぎ,予後を改善させる唯一の方法は,早期に診断し治療することである.そのためには,ホルモンの過剰や欠乏によっておこる臨床症状をよく知り,わずかな異常も見逃さないことが大切である.注意深い患者の診察が早期に内分泌疾患を診断するための最もよい手掛かりとなる.内分泌検査の数と種類は多いので,診断にあたっては,その意味を十分理解して,必要な検査計画をたてなければならない.
  • 田中 敏章
    1998 年 87 巻 6 号 p. 995-1001
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    成長障害の診断を進めて行くためには, 1. auxological data(身長,成長率,骨年齢)の評価2.臨床評価(病歴も含む)3.検査の3つの手順が必要である.臨床的には,成長ホルモン分泌不全の有無の診断が重要であるが,成長ホルモン分泌能は連続性があるため,軽症型の診断は難しい.成長障害の中で一番頻度の多いのは,成長ホルモン分泌能の正常な非内分泌性低身長(特発性低身長,家族性低身長,胎内発育不全性低身長)で,成長ホルモン分泌不全性低身長症は,低身長小児の約5%以下である.
  • 大磯 ユタカ
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1002-1007
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    多飲・多尿は臨床的に容易に観察できる症候であるが,病像の成因は多岐にわたる.診断を進めるためには,尿浸透圧の測定により尿崩症に代表される水利尿と糖尿病に代表される浸透圧利尿を大別する.尿浸透圧が等張以上となる浸透圧利尿では何らかの溶質が尿中に含まれるため,尿の性状分析により鑑別が可能である.低張尿を示す水利尿では尿の性状に基づいて鑑別することはできず,各種の負荷試験を行い診断を進める必要がある.
  • 宮森 勇, 林 多喜王
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1008-1014
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    内分泌性高血圧症は種々の特徴的な臨床症状と検査値の異常を伴っている.日常診療においても注意深い観察により本態性高血圧症と鑑別が可能である.腹部の画像診断で,偶然副腎に腫瘍が発見され,内分泌検査でホルモン産生が証明される例もあり注目されている.不整脈が診断の契機となる内分泌疾患も少なくない.低血糖値は進行の違いにより交感神経症状と中枢神経症状が種々の程度に出現する.
  • 電解質異常とvasopressinおよび心房性Na利尿ホルモン
    木村 時久
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1015-1022
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ACTH分泌不全症(AI),原発性甲状腺機能低下症(HT),原発性アルドステロン症(PA)のvaso-pressin(AVP)とatrial natriuretic hormone(ANH)の血中動態と賢水電解質代謝を水負荷下にて検討した. AIではAVP分泌は増加するが, ANH分泌は低下し,水利尿不全が認められた. HTでは, AVPとANH分泌と代謝が共に低下し,水排泄が低下した. PAでは, AVPとANH分泌は共に亢進するが,水利尿不全は認められなかった.
  • 木下 芳一, 足立 経一
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1023-1027
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    内分泌疾患は,ホルモンの異常高値,低値に伴って種々の全身諸臓器の機能障害をおこしてくる.消化管を中心とする消化器の機能障害がおこれば,食欲不振,下痢,便秘,腹痛等がおこり,消化器疾患と同様の症状が出現する.したがって,消化器症状を有する患者の診療にあたっては,内分泌疾患の可能性を念頭に置いた診療が必要となる.
  • 山中 学, 久保木 富房
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1028-1033
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肥満・るいそうについては臨床的には身長および体重によって算出される標準体重との比較により決定されるが,体重増加・減少の経過を検討する必要がある.肥満者の大部分は原発性肥満であるが,二次性肥満の原因疾患として内分泌疾患が見られる.るいそうについては,悪性腫瘍や消化器疾患との鑑別診断が重要である.近年,増加傾向にあり一般内科外来を受診することも多い神経性食欲不振症についても概説する.
  • 宮川 勇生
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1034-1039
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    月経不順は婦人科の主訴として頻度の高い症候で,諸疾患の原因あるいは合併症としてみられることから,内科診療においても月経歴の問診が大切である.月経不順は続発無月経となる過渡期であり,早期の原因検索と適切な治療による卵巣機能の回復が望まれる.
    本稿では月経不順の病態と原因,検査と治療,内科領域に関連のある投与薬剤による月経不順,自己免疫疾患と関係のある早発卵巣不全について述べた.
  • 宮地 幸隆, 尾込 智峰子, 松本 聖子, 広井 直樹, 薬師寺 史厚
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1040-1046
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ヒトの性決定は精巣により決定され, Y染色体上のSRYに依存する.未分化性腺は, SRYが存在するときには精巣に,存在しない時には卵巣に分化する. SRYが性腺決定のswitchをonにすることによりX染色体や常染色体の性腺決定遺伝子が発現し,性の分化発達が起こる.これらの過程のいずれかに異常が生じた場合,性分化異常或いは性発達異常が起こる.
  • 舟橋 啓臣
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1047-1052
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    女性化乳房(gynecomastia)は外来診療において比較的よく遭遇する疾患である.生理的なものと病的なものがあり,病的女性化乳房には薬剤性・ホルモン異常性などがある.また,男性乳癌とは慎重な鑑別を要する.超音波検査,マンモグラフィー,穿刺吸引細胞診は乳癌との鑑別診断に非常に有用である.女性化乳房の多くが生理的なものと,薬剤性であるが,良性でも外科的治療の対象となる.
  • 上條 桂一
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1053-1058
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    内分泌障害による精神症状を1.感情・情動・気分の障害, 2.意欲・行動の障害, 3.知能の障害および4.その他に,神経症状を1.不随運動, 2.末梢神経障害, 3.脳梗塞および4.頭痛に,ミオパチーを1.近位筋の筋力低下, 2.周期性四肢麻痺, 3.筋痛, 4.痙攣・筋硬直および外眼筋障害にそれぞれ分類し,各内分泌疾患の示す特徴を概括した.内分泌疾患自体の変化と外的要因の関係を示す例として喫煙のBasedow病眼症への有意の影響を報告した.
  • 福本 博文
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1059-1067
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    昏睡患者においては,器質的脳疾患の鑑別診断の一つとして内分泌・代謝疾患による脳症が挙げられる.これらはそれぞれ特徴的な病態を有し,早期の診断と特異的治療法が極めて有効である点で,見逃してはならないものである.内分泌疾患によるものでは,ホルモンの測定結果を得る前に診断・治療を要する場合があり,病歴・症状を詳細に検討して,緊急検査の結果も参考にして総合的に判定することが重要である.
  • 井上 大輔, 松本 俊夫
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1068-1074
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    生体の機能を維持する上でNa, K, Caなどの血中電解質の恒常性を保つことは非常に重要である.これらの電解質の血中濃度の異常は様々な原因により起こるが,高度な異常は致死的ともなり得るため,迅速かつ適切な処置が必要となる.本稿ではこのような電解質異常の診断および治療について概説する.
  • 高須 信行
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1075-1079
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    甲状腺クリーゼは甲状腺機能亢進症が極端に増悪し,生命の危機に直面した状態である.甲状腺機能亢進症の患者に,急激に,高熱,頻脈,流れるような汗,下痢,精神不安がでてきたものを甲状腺クリーゼという.やがて意識がなくなる.手術,感染,糖尿病性昏睡などが誘因となる.早期に診断し,治療することが大切である.適切な治療が行なわれないと死に至る.治療は循環系を中心にした全身管理と急速に甲状腺ホルモン産生・分泌を抑制することである.甲状腺ホルモンを下げるためにヨードを投与する.
  • 西川 哲男
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1080-1084
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    副腎クリーゼは副腎ステロイドが枯渇した結果生じる病態であり,倦怠感,食欲低下,腹痛等の非特異的症状で始まりショックに陥り初めて本症に気付くことが多い.主症状は低血圧,低ナトリウム血症,低血糖である.慢性副腎不全や長期ステロイド療法後に感染,出血等のストレスを契機に副腎クリーゼをおこす.しかし,基礎に副腎疾患がなくても重症感染(敗血症等)では副腎梗塞や出血で副腎クリーゼが生じる.早期からのステロイド薬の補充にて救命可能である.
  • 野村 馨
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1085-1090
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    褐色細胞腫は二次性高血圧をおこす代表的疾患であり,しばしば著しい血圧の変動を呈することで有名である.高血圧は腫瘍からのカテコールアミン過剰分泌が第一の原因である.しかし腫瘍から放出されたカテコールアミンは交感神経終末に取り込まれ,神経インパルスによりそこから放出される機序がある.これが血圧変動の一因となつている.さらに腫瘍からは機械的圧迫,薬物などの誘因によりカテコールアミンが放出され血圧の変動を来たす.またカテコールアミン過剰により受容体数が減少し感受性の低下がおき起立時の低血圧がおきやすい.高血圧クリーゼは致命的なこともあり,速やかな診断と治療が必要である. α1受容体遮断薬であるレギチーンの静脈投与が基本となる.
    高血圧発作/高血圧クリーゼの病態,診断および治療について紹介する.
  • 正田 純子, 水越 哲也, 田中 弘二, 櫛谷 麻理子, 佐藤 真理, 西 裕一, 朱 宰弘, 小林 良樹, 芝崎 正順, 井上 憲一, 田 ...
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1124-1126
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は37歳の女性.発熱を主訴に当科入院.入院時の画像所見から珪肺症が強く疑われた.職業的粉塵曝露歴を認めず原因不明であったが,患者とのパートナーシップが確立した後,重ねて病歴を聴取をしたところ,思春期に精神的な要因から,家庭用クレンザーの吸入及び摂取をしていたことが明らかとなり,クレンザー吸入が珪肺症発症の原因となったと結論した.
  • 高森 幹雄, 中野 邦夫, 生方 博子, 鈴木 秀治, 船木 直也, 大山 邦雄, 島田 馨
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1127-1129
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.歯科にて歯肉炎の治療後肺炎にて入院.入院後急速に増悪し気管内挿管となったが,エリスロマイシン・リファンピシン・ステロイドセミパルス療法を行い改善を見た.血清抗体価よりLegionella pneumophila serogroup 6による劇症肺炎と診断した.現在レジオネラ肺炎は一般的にはserogroup 1に対する血清抗体価の測定しか行われていないが,今回serogroup 6による劇症肺炎を経験したので報告した.
  • 佐藤 高栄, 山本 〓, 遠藤 一靖, 小川 達次
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1130-1132
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は20歳の女性.精神分裂病加療中,突然嘔吐,痙攣,意識障害をきたした. CK上昇もみられ悪性症候群との鑑別が困難であったが,低Na血症と大量の低張尿排泄を認めたため,水中毒の回復期および横紋筋融解症の併発と考えた.低張液大量輸液で対処したが, Naの上昇抑制は不十分で,第6病日のMRIで中脳の脱髄変化が認められた.水中毒の病態の十分な把握と,治療法の確立が必要と考えられた.
  • 古荘 浩司, 中積 泰人, 辻 宏和, 三崎 嗣穂, 早川 哲雄, 竹内 正勇, 広野 正明, 杉山 有, 米島 學, 杉本 尚樹, 安部 ...
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1133-1135
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性.発熱・発疹・喀痰・咳嗽を認め水痘と診断.翌日肺炎を指摘され入院.成人水痘及び水痘性肺炎と考え, acyclovir,免疫グロブリン等を投与したが,急速に呼吸不全が進行したためm-PSL 250mg/日の投与開始.同日夜半より,発熱・呼吸不全は急速に改善傾向を示した.当初よりの肝障害,血小板減少も経過とともに正常化した.重症呼吸不全に陥った成人水痘でステロイド大量投与が有効であったことより,今後も考慮すべき治療法であると考え報告した.
  • 小見 亘, 加藤 珠代, 高桑 浩, 伊勢 拓之, 横山 仁, 小林 健一, 松井 修, 小松 和人, 打林 忠雄, 並木 幹夫
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1136-1137
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性. 23歳時に悪性高血圧を発症し,以後近医より降圧療法を受けていたが,高レニン血症の精査目的にて当科へ入院した.血管造影にて腎動脈に明らかな狭窄はなく,造影CTにて右腎皮質に径1cmの低吸収域が認められた.さらに,腎動脈造影下CTにて同領域内に腫瘍血管が描出された.腫瘍摘出により,血漿レニン活性ならびに血圧は正常化し,病理学的にレニン産生腫瘍が確認された.腎動脈造影下CTはレニン産生腫瘍の診断に有用と考えられた.
  • 癌と神経免疫の接点
    犬塚 貴, 田中 恵子
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1138-1143
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍に伴う神経障害には、腫瘍の直接的な浸潤・圧迫,転移,栄養・代謝障害,血管障害,感染,治療による副作用などの他に「遠隔効果」として知られる一群があり傍腫瘍性神経症候群とよばれている.その多くは免疫学的機序を介すると考えられている.患者の血清や髄液には臨床病型や合併腫瘍に対応した特徴的な自己抗体が検出され,これが神経細胞と腫瘍の共通抗原を認識することから,抗腫瘍免疫反応が神経組織に交差反応を起こして障害をもたらす可能性が示唆されている.本稿では代表的な臨床病型と合併腫瘍,抗神経抗体についてまとめ,最近の進歩として1)抗神経抗体の認識抗原の構造と機能, 2)神経細胞障害機序への抗神経抗体や細胞性免疫の関与について取り上げる.
  • 青笹 克之
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1144-1148
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性炎症を基盤として発症するリンパ腫として膿胸関連リンパ腫(PAL),甲状線リンパ腫,消化管リンパ腫をとりあげ,発症におけるサイトカイン, EBウイルスの関与などについて述べる.近年,注目されているMALT (mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫との関係についてもふれる.
  • 小澤 敬也
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1149-1154
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Parkinson病は黒質のドーパミンニューロンの選択的脱落と線条体のドーパミン減少を特徴とする神経変性疾患である. L-ドーパ療法が一般に行われているが,遺伝子治療法の応用に関する研究が活発となっている.治療用遺伝子としては,まずドーパミン生合成酵素遺伝子が検討されている.律速酵素のチロシン水酸化酵素(TH)はL-ドーパの合成を触媒し, L-ドーパからドーパミンへの変換には芳香族アミノ酸脱炭酸酵素(AADC)が必要である. Parkinson病モデルラットにおいてアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターで両方の酵素遺伝子を線条体に導入すると,併用効果が認められる.さらに最近,神経細胞保護作用のある神経栄養因子遺伝子が注目されている.特に,ドーパミンニューロンに対する作用の強いGDNFの遺伝子をParkinson病遺伝子治療に応用する基礎研究が試みられている.このようなアプローチは病態の進行を遅延させる効果を持つものと考えられ,今後の展開が期待される.
  • 杉下 靖郎, 宮内 卓
    1998 年 87 巻 6 号 p. 1155-1160
    発行日: 1998/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心不全は,古典的には,心機能の低下による血液駆出の低下した状態とされていた.しかし近年の研究により,それに加えて神経体液性困子による調節の異常も関与することが知られてきた.神経体液性因子には,交感神経系,レニン・アンジオテンシン系,ナトリウム利尿ペプチド系などが知られていたが,最近,その一つとしてエンドセリン(ET)が注目されている. ETはペプチドであり,当初強力な血管収縮物質とされたが,その後,心肥大,心不全にも関与することが知られた.心不全ラットモデルにおいて, ET拮抗薬を急性投与すると心筋収縮力は低下し, ETは急性期には心筋収縮力を維持する事が知られた.一方,慢性投与すると,心筋収縮力が改善して死亡率が著名に改善し, ETは慢性期には心筋傷害作用があることが示唆された. ET拮抗薬は心不全治療への新しい展望を示す.
  • 1998 年 87 巻 6 号 p. 1223
    発行日: 1998年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
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