日本内科学会雑誌
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69 巻, 5 号
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  • 吉井 昭夫, 後藤 哲也, 近藤 啓文, 柏崎 禎夫
    1980 年 69 巻 5 号 p. 535-540
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    多発性筋炎ならびに皮膚筋炎(PM-DM)における心病変の系統的研究はほとんどない.そこで本症にみられる心病変をcontrol studyによつて解析するとともに, CPKアイソエンザイムの臨床上の有用性を検討した. PM-DM23例について,心電図所見を細菌性感染症患者と正常人とを対照としたcontrol studyによつて検討した.本症の活動期に, 1)ST-T異常は52%, 2)その他の心電図異常のうち期外収縮は13%で対照群と比べ高頻度に認められ,それらは非活動期に軽快する傾向がみられた. 3)心拡大は10例(43%)に, 4)発熱を伴わない頻脈は3例にみられ,活動性の消退とほぼ並行した.これら4項目のうち2項目以上をもつ症例を心病変あり群とすると, 10例(43%)に心病変が認められた. overlap症候群を除いたPM14例の分析で,心病変あり群では骨格筋病変も重篤であつた.筋原性酵素のうちMB CPKアイソエソザイムの異常高値が12例中7例みられ,その4例に心病変が認められた.多源性心室性期外収縮が多発し,生検で心筋炎を確認した症例で,期外収縮の増減と平行して%MB CPKが変動した.以上よりPMの43%に心病変が出現し,その多くは本症に基づくものと考えられた.各種の筋原性酵素のうち, MB CPKアイソエンザイム値が心病変とよく平行し,その診断,治療の指針に有用であつた.
  • 圓山 アンナ, 荻原 俊男, 中 透, 三上 洋, 波多 丈, 中丸 光昭, 桧垣 実男, 神田 敬夫, 熊原 雄一, 岩永 圭市
    1980 年 69 巻 5 号 p. 541-547
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    変換酵素抑制薬カプトプリルを各種高血圧患者32例に1~4カ月長期投与し,降圧薬としての有用性を検討すると共に,降圧度とレニン依存度との関連を検索するため,本薬投与前血中,尿中各種検査データならびにアンジオテンシンIIアナログ(AIIA)テストの反応とを比較した.本薬の有効率(平均血圧-13mmHgを有効)は1, 2, 4カ月においてそれぞれ60, 80, 76%であつた.利尿薬と併用することにより有効率は増大した.投与2カ月までの降圧度は投与前血漿レニン活性(PRA)と有意な相関を示したが, 4カ月後には相関が認められなくなつた.なお,降圧度と投与前A II Aテストの反応との間にも同様な関係がみられた.投与前血中および尿中電解質,クレアチニン,尿中カリクレイン,尿中アルドステロン,尿中カテコラミンは降圧度と何ら相関を認めなかつた.カプトプリルは高レニン性高血圧に特に有効であり,長期投与においては低レニン性にも有用である.本薬投与2カ月後までの降圧度は投与前PRAおよび投与前A II Aテストによる反応により予知でき,レニン依存性である. 2カ月以後では有効性とレニン依存度との相関が薄れ,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系抑制以外の降圧機作が関与していると思われる.本薬の長期投与により可逆性な発疹を数例認めた以外,特に重篤な副作用はみられなかつた.
  • 治療上の問題点と血液透析の有用性
    桑原 隆, 吉田 章, 金津 和郎, 永井 博之, 伊東 信
    1980 年 69 巻 5 号 p. 548-553
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本邦で最初のmalignant lymphoma (reticulumcell sarcoma)に伴うlactic acidosisの1例を報告し,治療上の問題点につき考察する. 45才,女性で昭和51年8月頚部リンパ節腫大に気付き,その後全身のリンパ節腫大し,某医にて右鼡径部リンパ節生検にてreticulumcell sarcomaと診断された. 5日後,急な息苦しさから過呼吸となり,県立尼崎病院転院.胸部X線像上では両肺門部のリンパ節腫大以外著変なし.動脈血ガス分析でPo2 108mmHg, Pco2 11mmHg, pH 7.119,〔HCo3-〕P 3.4mEq/lと著明なmetabolic acidosisを示し, S-Na 137mEq/l, S-K 4.8mEq/l, S-Cl 110mEq/l, U-pH 5.60であつた.血中乳酸値は22.7μmol/mlと異常高値で,血糖73mg/dl, BUN 10mg/dlと糖尿なく腎機能も正常.飲酒歴,酸性薬服用,飢餓等はなかつた.以上の事よりlactic acidosisと診断し, acidosis補正のため7% NaHCO3を40時間で総量1,600ml点滴静注するもacidosisの改善を得ず,心不全にて死亡した.悪性腫瘍に伴う1actic acidosisは,アルカリ療法,癌化学療法にて軽快するとされているが,本例のように(抗腫瘍薬末投与のためか),アルカリ薬に抵抗する例もある.この時, Na塩過剰投与によるcirculatory overlodaから心不全をきたしやすく,血液透析の併用が必要と思われた.
  • そのmacroamylaseの解析
    栗原 義夫, 中山 秀隆, 尾崎 史郎, 中川 昌一
    1980 年 69 巻 5 号 p. 561-566
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    IgA(λ)と結合したmacroamylasemiaの1例を報告する.症例は胆石と糖尿病を有する52才の女性で,腹痛のため血清amylaseを測定したところ663 Somogyi単位と高値を示した,しかし尿中amylase排泄は正常から低値を示し,腎,肝機能は正常で,唾液腺疾患も認めず, Cam/Ccr ratioが0.40~0.52と低値を示したのでmacroamylasemiaを疑い, amylaseの検索を行なつた. Hendersonらの測定温度によるamylase活性値比(45°C/25°C)にて正常者血清が4.9,急性膵炎患者血清が5.7,耳下腺炎患者血清が6.3であつたのに比し,本例では8.6と高値を示した. Sephadex G-100による血清ゲル〓過で大分子部分にamylaseの溶出を認め, Sephadex G-200で19S~7Sの間にpeakを認めた.寒天電気泳動法による血清amylase isozymでは正常amylaseよりやや陽極よりに幅広い活性を認め,免疫学的検索にてIgA (light chain λ型)との結合を認めた,最後に本邦で報告された33例のmacroamy-lasemiaについて考案を加えた.
  • 飯村 攻, 湯浅 壽幸, 深山 明義, 久田 憲雄, 野原 邦彦, 宮原 光夫
    1980 年 69 巻 5 号 p. 567-573
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    右頚(顎下)部に発生した異所性褐色細胞腫の1例を報告した.症例は18才,男子高校生で,発作性の動悸,頭痛,発汗を主訴とし入院.発作性の高血圧,頻脈を認め,尿中noradrenaline 554.7~700.3μg/d,発作時血中10.56ng/ml,直後の1時間尿中617.7μg/hと著増し, 1日尿中normetanephrineも高値を示したが, adrenaline, metanephrineは正常域にあつた.当初,後腹膜気体撮影+経静脈腎盂撮影,血管造影,コンピュ一ター断層撮影(CTスキャン)でいずれも左副腎部に腫瘍様陰影が認められ,開腹,右側も含あ精査したが該当する腫瘍は見出しえなかつた.そこでより広範な静脈内部位別血中catecholamines濃度測定の結果,右頚部の異所性褐色細胞腫が疑われ, CTスキャンにより右顎下部に,次いで撰択的血管造影により右外頚動脈領域に腫瘍を見出し,摘出術を施行.腫瘍は右頚動脈分岐部の内側に,動脈とは遊離して存在, 6×3.6×3.6cm, 38g.組織学的には,クロム親和性で褐色細胞腫の像を呈し,腫瘍組織のcatecholamines含量はnoradrenaline 3,323.5μg/g, adrenaline 37.2μg/g, dopamine 20.6μg/gであつた.本症例はまた心房中隔欠損症,僧帽弁逸脱も示唆され,術前糖負荷試験で境界域を示し,発作時の心電図には心室補捉を伴う房室解離とWenckebach型房室ブロックをみた.術後経過は順調で,血・尿中のcatecholaminesも正常化した.頚部発生の異所性褐色細胞腫は極めて希で,現在まで他に欧米で1例,本邦で1例の報告をみるのみである.
  • 土橋 邦生, 中沢 次夫, 長沢 亨, 梅枝 愛郎, 稲沢 正士, 富岡 真一, 笛木 隆三, 小林 節雄
    1980 年 69 巻 5 号 p. 574-579
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    カンジダに起因すると考えられた過敏性肺炎の1症例を経験したので報告する.症例は25才,女性,教員で昭和47年より毎年5~9月に発熱,乾性咳嗽,食欲不振をくり返し来院した.血沈亢進,白血球増加, CRP(〓), γグロブリン上昇が認められた.肺機能では,拡散機能の低下(% DLco 59.0),胸部X線像では両側下肺野に細網状陰影がみられた.各種アレルゲンを用いた皮内反応では,カンジダと多価細菌ワクチン(ブロンカスマベルナ)にアルサス型,遅延型反応が陽性であつた.また, Ouchterlony法を用いたゲル内沈降反応ではカンジダのみに陽性で,他のM. faeniやT. vularisその他の真菌類では陰性であつた,以上より本例は典型的過敏性肺炎であり,かつその起因抗原としてカンジダが考えられたので,これを用いて吸入誘発試験を施行した.その結果,吸入終了数時間後に咳嗽,発熱,呼吸菌難等の症状が再現され,肺に湿性ラ音も聴取された.また白血球増加,血沈亢進CRPの陽性化(〓)→(〓), %VCの低下を認め,またA-aDO2の上昇も認められた.一方, FEV1.0%は前値に比し不変であつた.吸入3日後にtransbronchial法にて施行した肺生検の組織像では,間質の細胞性肥厚,肺胞内および間質に肉芽腫形成がみられた.アレルギー的発症機序については, III型アレルギーの可能性が示唆されたが,本例はいわゆる夏型過敏性肺炎のアレルゲンとして,カンジダをも考えるべき一つの示唆を与えていると思われる.
  • 重富 秀一, 小川 さつき, 工藤 信一, 高橋 重雄, 福地 総逸
    1980 年 69 巻 5 号 p. 580-586
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    患者は62才の男性.主訴は低ナトリウム血症の精査.胸部X線像上右肺に異常陰影を認めたため,本学放射線科入院.気管支造影,鎖骨上窩リンパ節および口蓋扁桃生検により燕麦細胞癌と診断,放射線療法を行なつた. 4,000R照射後,腫瘍陰影は消失したが,その頃から全身倦怠感,食欲不振が出現,血清ナトリウムが著しい低値を示したため当科転科した.血清ナトリウム120mEq/l,血清カリウム4.5mEq/l,血清クロール87mEq/l,血漿浸透圧249mOsm/l,尿浸透圧701mOsm/l,血漿レニン活性2.3ng/ml/h,腎および副腎皮質機能正常.血漿ADH含量は16.4pg/mlと高値であり,飲水1,000ml後も抑制されなかつた.以上よりSIADHと診断した.さらに本症例では血漿オキシトシン含量が20.8pg/mlと著しい高値を示した.血中ACTH, PTHおよびカルシトニンは正常範囲であつた. 600m1/日の水制限により血漿浸透圧は270~280mOsm/lに改善し,抗癌薬投与で一時全身状態は改善したが,癌性腹膜炎およびグラム陰性桿菌による肺炎を併発し死亡した.剖検により肝,腎などへの転移と広範な腹腔内リンパ節への転移および大網部の巨大な腫瘤を認めた.腫瘍組織よりADH,オキシトシンおよびカルシトニンが高濃度に検出された.本症例はADH産生肺癌によるSIADHであつて,オキシトシンおよびカルシトニンも同時に産生していたきわめてまれな症例である.特に,オキシトシン産生腫瘍は本邦では現在まで報告されておらず,本症例が本邦第1例である.
  • 藤山 重俊, 相良 勝郎, 尾上 公昭, 中川 昌壮, 平岡 武久, 田代 征記
    1980 年 69 巻 5 号 p. 587-592
    発行日: 1980/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胆道系アスペルギルス症により,閉塞性黄疸をきたした1例を経験した.かかる例は内外とも未だ報告をみず,極めて貴重な症例と思われるため報告する.症例は41才,女性で, 1974年2月,右扁桃腫瘍を疑われて本学耳鼻咽喉科に入院し,組織学的検査により扁桃アスペルギルス症と診断され, Amphotericin Bの投与を受け, 2ヵ月後に治癒,退院した.しかしながら,同年6月に至り,右季肋部の疝痛発作および黄疸が出現したため,当科に転じた.入院時,黄疸,肝腫大および右季肋部の限局性抵抗を認めたが,胸部X線像上異常は認められなかつた.総ビリルビンは19.6mg/dl (直接型17.0mg/dl)と上昇し,アルカリフォスファターゼ250mU/ml, γ-グロブリンの上昇,血沈高度促進,末梢血好酸球著増などがみられ,内視鏡的膵胆管造影で総胆管の狭窄像を,低緊張性十二指腸造影では下行脚の二重構造および辺縁鋸歯状の像を認めた.黄疸漸増のため,経皮経肝胆道造影を行なつたところ,肝外および肝内胆管の壁不整がみられた.胆管癌の術前診断の下に開腹し,三管合流部に超鶏卵大の腫瘤が認められた.組織学的には胆管肉芽腫で, PAS染色によリアスペルギルス症と診断された.なお,約5年後に死亡したが,剖検により胆道系,口蓋扁桃および脳底部などのアスペルギルス症が認められたが,肺病変は認められなかつた.
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