アレルギー性肉芽腫性血管炎と側頭動脈炎が合併したと思われる1例を報告し,両者の異同,他の血管炎との関連性につき考察を加えた.症例は55才,男性,化学薬品工場勤務.主訴は咳嗽,呼吸困難,視力障害,四肢遠位部の筋力低下,知覚異常である.現病歴は昭和54年2月下旬, 39°C台の発熱とともに咳嗽,呼吸困難が出現,近医で気管支喘息の診断を受け,入退院をくり返していた.同年8月下旬に左眼, 9月上旬に右眼と,あいついで視力低下をきたし,網膜中心動脈閉塞の診断で当院眼科へ入院したが, 9月下旬より四肢のしびれ感が出現,歩行困難となり,胸部X線写真上の異常陰影,高度の好酸球増加(11,000/mm
3)を指摘され,当科転科となつた.入院後,臨床症状,検査所見,および生検などから,アレルギー性肉芽腫性血管炎と診断した.ステロイドを中心とする治療を開始したところ,検査所見,呼吸器症状の改善は認められたが,神経学的所見の改善は認められなかつた.以後経過を観察していたが, 55年9月18日,脳硬塞にて死亡した,剖検では,心,肝,腎などの臓器の小~中血管に肉芽腫性の変化を強く認めた.本症例は,アレルギー性肉芽腫性血管炎,多発性動脈炎,側頭動脈炎などの疾患独立性に関して,あるいは血管炎の病態を考える上で,示唆に富むものと考えられた.
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