遺伝性非ポリポーシス大腸直腸癌(hereditary non-polyposis colorecatal cancer, HNPCC)は,家系内における若年発症性の右側に好発する大腸癌とともに,子宮体部,胃など大腸以外にも癌が多発する常染色体優性遺伝疾患である. Amsterdam minimal criteriaにより集積された本症の腸瘍は,分子生物学的にゲノム内のマイクロサテライトと呼ばれる単純繰り返し配列において,しばしば複製異常を示すという特徴的な表現形質を有する.近年,その原因として
hMSH2,
hMLH1などのDNAミスマッチ修復系遺伝子の生殖細胞変異が確認され,本症の遺伝子診断ならびに保因者の発症前診断への道が開けた.さらに,ミスマッチ修復系遺伝子異常の標的として,マイクロサテライト配列を有したTGF-βII型受体遺伝子等の遺伝子群が明らかになりつつあり,大腸発癌メカニズムの解明に新たな展開をもたらしている.
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