日本内科学会雑誌
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102 巻, 8 号
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内科学会NEWS
目次
特集 神経疾患の新しい治療―現場で必須の知識と今後の展望―
Editorial
トピックス
  • 北川 泰久, 大熊 壮尚, 徳岡 健太郎
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1907-1915
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    頭痛は日常診療の中で,最も多い神経症状である.近年,病態生理の解明と共に,片頭痛に対するトリプタンをはじめ,新しい治療法もいくつか出てきている.日本の頭痛医療は欧米に比べて,慢性頭痛に対する疾患としての重要性,専門的な治療の必要性がまだ十分に理解されていない.ここでは頭痛治療トピックスについて概説した.最近,日本神経学会・日本頭痛学会から発刊された慢性頭痛の診療ガイドライン2013を参照されたい.
  • 森豊 隆志
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1916-1922
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    認知症疾患は,少子高齢化社会を迎えたわが国においては,社会経済学的な観点からも極めて深刻かつ緊急に取り組むべき疾患となっている.しかしながら,認知症の薬物治療に関しては,有用な治療薬は極めて限られているというのが現状である.認知症の中でも最も積極的に治療薬の開発が進んでいるAlzheimer病の治療薬を通して,その現状と,新規薬剤を開発する際の課題,最近の取り組み,今後の展望について概説する.
  • 西山 和利, 富永 奈保美
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1923-1929
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    脳血管障害急性期の治療は大きな変革期を迎えている.本邦では2005年に発症後3時間以内の脳梗塞超急性期に対するrt-PA静注療法が認可されたが,これは単なる一つの治療法の域を越え,脳卒中急性期診療体制全体に大きな影響をもたらした.が,rt-PA静注療法の解禁からの月日の積み重ねはその治療限界をも明らかにしつつある.本項では脳血管障害急性期治療,特に脳梗塞急性期治療の最新動向について概説する.
  • 冨本 秀和, 伊井 裕一郎
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1930-1937
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    脳卒中の再発予防は危険因子の管理と抗血栓療法が二本柱となる.脳卒中は再発傾向のきわめて高い疾患であり,リスクの層別化を行って患者の病態に最適の再発予防策を選択する.特に,新規経口抗凝固薬の登場は,近年増加の著しい心原性脳塞栓症に対する再発予防の選択枝の幅を広げつつある.一方,脳卒中後遺症を診療する機会は,無症候性脳病変や脳卒中後遺症の増加に伴って増えている.本稿では,脳卒中の再発予防と後遺症への対応について,最新の知見を含めて概説を試みる.
  • 井澤 眞沙江, 伊東 秀文
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1938-1945
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    Parkinson病(Parkinson's disease:PD)の治療の中心はL-dopa療法であるが,治療開始後数年でwearing off現象やジスキネジアといった運動合併症を生じることが問題となってきた.そのためParkinson病治療の開発においては,運動合併症をいかに抑制するかに焦点があてられてきた.その中でドパミン受容体が持続的に刺激されること(continuous dopaminergic stimulation:CDS)が望ましいと考えられるようになり,CDS実現を目指した新しい治療薬が次々と開発されている.
  • 赤松 直樹
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1946-1951
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    最近のてんかん治療は,新規抗てんかん薬の導入とてんかん外科治療の進歩が注目される.抗てんかん薬は最近7年間で数種類の新規薬剤が本邦で承認され,新規薬剤の利点が理解され臨床現場で急速に普及している.てんかん外科は本邦でも1990年代以降普及が進んでいるが,まだ米国等と比較すると手術例数は少ない状況である.埋め込み型刺激デバイスを用いた迷走神経刺激治療は難治てんかん治療に本邦でも承認され,普及が進んでいる.
  • 中村 英夫, 倉津 純一
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1952-1957
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    いろいろな臓器で悪性腫瘍に対する治療の進歩が認められ,予後が改善している中,悪性脳腫瘍の代表的な神経膠芽腫に関しては,20年前と比較して若干予後は改善しているものの,生命予後に関しては1~2年である.各臓器の悪性腫瘍に対する分子標的薬剤が様々臨床応用されているが,神経膠芽腫にたいしての分子標的薬剤は未だ開発されていない.テモゾロマイドというアルキル化薬が,現在世界のスタンダードの薬剤であるが,血管内皮成長因子の抗体であるbevacizumab,細胞表面の分子であるインテグリンをブロックするcilengitideなどの有効性の臨床試験が行われている.
  • 古賀 道明, 神田 隆
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1958-1964
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    脳炎の代表格であるヘルペス脳炎は,脳炎の一般的な特徴(発熱や髄膜刺激徴候,脳脊髄液異常)に加え,辺縁系脳炎としての臨床像(記憶障害や精神症状,大脳辺縁系にみられるCT・MRI病変分布)が特徴的である.本症を疑った時点でアシクロビル投与を開始するが,同時に他の辺縁系脳炎(HHV-6脳炎や自己抗体介在性脳炎)の可能性を想定しておくべきである.プリオン病はいまだに有効な治療法はなく感染予防が重要で,厚生労働省研究班の感染予防ガイドラインに基づき診療することが推奨される.
  • 楠 進
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1965-1970
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    Guillain-Barré症候群(GBS)と慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)は,末梢神経を標的とする自己免疫疾患であり,GBSは急性単相性の,CIDPは慢性の経過をとる.どちらにも各種の亜型が存在する.治療として,経静脈的免疫グロブリン療法と血漿浄化療法はどちらにも有効であるが,副腎皮質ステロイド薬はCIDPには有効であるがGBSには単独での有効性は否定されている.またこれらの治療で十分な効果の得られない症例に対する新規治療の試みも報告されている.
  • 田中 正美, 田中 惠子
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1971-1977
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    多発性硬化症は視神経を含む中枢神経系の諸々に脱髄を主体とした炎症病巣を生じ,再発・寛解を繰り返す.視神経脊髄炎は,多発性硬化症とは病態が異なると考えられ,アストロサイトを標的として抗アクアポリン4抗体が関与する自己免疫疾患であると考えられている.両者は,特に再発予防の治療戦略が異なり,病態を考慮した新たな治療薬が相次いで開発されている.治療薬の選択に両者の鑑別が極めて重要になっている.
  • 青木 正志
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1978-1985
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    筋萎縮性側索硬化症(ALS)は選択的な運動ニューロン死をきたし,神経・筋疾患のなかでも治療法が乏しく神経難病の象徴的疾患とされている.病態の解明が待たれるが,最近,家族性ALSの原因遺伝子として報告されたTDP-43およびFUS/TLS遺伝子変異に伴うALSの病態が注目されている.一方で,現在までに病態モデルとして確立しているのはSOD1変異に伴うALSであり,このモデルを利用した治療法の開発が進められている.我が国で開発されている治療薬として肝細胞増殖因子は,フェーズ1試験が開始となった.
  • 廣谷 真, 佐々木 秀直
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1986-1993
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    ミオパチーは非常に多くの疾患を含んだ筋疾患の総称である.炎症性筋疾患では多発筋炎と皮膚筋炎が大半を占めるが,封入体筋炎との鑑別も重要である.多くが日常生活に支障を来すため,日常生活動作を意識した病歴聴取を行い,身体診察と併せて迅速に診断・治療を行う必要がある.治療の中心はステロイドであるが免疫抑制薬や免疫グロブリン大量静注療法も有効とされており,早期に正確な診断と適切な治療を行うことが重要である.
  • 松本 英之, 宇川 義一
    2013 年 102 巻 8 号 p. 1994-2000
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症では抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体の他に,筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体が発見され,その抗体の種類により臨床像が異なることが判明した.また胸腺摘出術のメタ解析で有効性が証明されず,また治療の選択肢が増加しており,治療方針が大きく変化している.Lambert-Eaton筋無力症候群は,肺小細胞癌などの悪性腫瘍の治療の進歩により,症状の改善が期待されるようになっている.
  • 西川 典子
    2013 年 102 巻 8 号 p. 2001-2008
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    神経障害性疼痛は神経系の損傷により発症する難治性疼痛であるが,近年相次いで治療薬が承認,適応拡大されており,治療内容が向上することが期待されている.本稿では,疼痛の伝導路と薬理作用の概略を示し,神経障害性疼痛に対する薬物治療について本邦のガイドラインに準じて使用上のポイントを述べた.完治は困難であるかもしれないが,疼痛の軽減を図り患者の生活の質を改善することができる.
  • 中村 治雅
    2013 年 102 巻 8 号 p. 2009-2014
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    患者数が非常に少なく,診断法や治療法の確立していない希少疾患においては,治療法の開発は非常に困難である.希少疾患用医薬品(オーファンドラッグ)の開発に対して,世界中で開発促進のために,オーファンドラッグ制度の策定,臨床研究の基盤整備が行われている.今後は,患者,研究者,製薬企業,規制当局含めた連携が重要である.
  • 近藤 孝之, 井上 治久, 高橋 良輔
    2013 年 102 巻 8 号 p. 2015-2022
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    ヒト人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS cells)は2006年にその樹立が報告されて以来,患者由来のiPS細胞をもちいた疾患モデル研究が進み,一方で再生治療の細胞リソースとしてのiPS細胞利用も始まりつつある.今後も,iPS細胞技術に基づいた創薬研究や安全な臨床治験の実施へ向け,ますますの医学・生物学分野への幅広い貢献が期待されている.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 米田 誠
    2013 年 102 巻 8 号 p. 2060-2064
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    自己免疫学的機序により,様々な精神・神経症状を呈する病態があり,自己免疫性脳炎と呼ばれている.近年,各種病型に特異的な自己抗体が明らかとなり,診断や治療効果判定に用いられている.腫瘍を随伴する場合も多く,傍腫瘍性神経症候群の側面も有する.特に,せん妄や認知症を主徴とする非ヘルペス性辺縁系脳炎において,新しい自己抗体が次々と見いだされ注目されている.
  • 小野 稔
    2013 年 102 巻 8 号 p. 2065-2073
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    1990年代以降,欧米では小型の連続流ポンプ型補助人工心臓(VAD)が臨床に登場し,安定した長期補助が可能となった.デバイスの改良は急速に進み,長期成績は改善の一歩をたどっている.当初,心臓移植への橋渡しが主目的であったが,欧米ではここ1~2年でdestination therapy(DT)が適応の40%を超えるようになってきた.わが国では2005年以降4種の植込み型VADの臨床治験が行われた.2011年にEVAHEARTとDuraHeartが,2013年4月にHM-IIが保険適用となり,重症心不全の治療体系は大きく変わりつつある.Jarvik 2000は2013年秋までには承認される見込みである.しかしながらVAD治療においてすべてが植込み型の適応になるわけではなく,植込み型,体外式のそれぞれの目的や適応を良く理解して有効に使い分けることは重要である.VAD治療成績は装着前の重症度に依存しているために,心原性ショックや末梢臓器障害をきたす前に装着を考慮することが成功のカギである.またわが国においてDTをどのように導入していくのか議論が必要である.
  • 久米 真司, 古家 大祐, 前川 聡
    2013 年 102 巻 8 号 p. 2074-2081
    発行日: 2013/08/10
    公開日: 2014/08/10
    ジャーナル フリー
    加齢と共に多くの臓器で機能障害が出現する.腎臓も例外ではなく,多くの人で加齢と共に腎機能低下が生じる.加齢の要素単独で末期腎不全へ進行することは稀であるが,加齢に伴う腎機能障害は,生活の質の低下や医療介入の制約を生み出す.現在わが国では,栄養状態の改善ならびに医療技術の発展により寿命が大幅に延長しているが,一方で,このような健康寿命を如何に保証するかという新たな課題に直面している.この課題に対する数多くの研究成果として,加齢に伴う腎機能障害に関わる分子機構が徐々に明らかにされつつある.高血圧や糖尿病などの臨床的要素に加え,近年,angiotensin IIや酸化ストレス,Klotho,Sirt1,オートファジーといった腎局所の分子機構が腎老化と関連するという興味深い知見が得られている.本稿では,これら老化関連分子と腎老化との関わり,その治療標的としての可能性や問題点を概説させていただく.
専門医部会
シリーズ:指導医のために:医学・医療の多様性を追求する
シリーズ:日本発臨床研究の紹介と反省点を語る
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