日本内科学会雑誌
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93 巻, 1 号
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  • 大槻 眞
    2004 年 93 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 広田 昌彦, 小川 道雄
    2004 年 93 巻 1 号 p. 4-9
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性膵炎の年間受療者数は19,500人(95%信頼区間17,000~22,000人),その内,重症急性膵炎は4,900人と推計されている. 10万人当たりの発生頻度は15.4人,男女比は1.9:1である.成因は,男性ではアルコール性が約4割を占め,女性では胆石性が約3割を占める.急性膵炎,及び重症急性膵炎の死亡率は,それぞれ7%, 22%である.
  • 下瀬川 徹, 正宗 淳, 木村 憲治
    2004 年 93 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性膵炎は良性疾患とはいえ,国内では現在なお7%前後の死亡率を伴い,特に重症急性膵炎の死亡率は20%を超える.急性膵炎では初期治療開始のタイミングや,その内容が患者の予後に大きな影響を与える.従って,迅速かつ正確に診断し,重症度判定を行って速やかに治療方針をたてることが求められる.本年,多くのエビデンスに基づいて「急性膵炎の診療ガイドライン」が提唱された.ここでは,急性膵炎の診断と重症度判定をガイドラインに従って解説した.
  • 成瀬 達
    2004 年 93 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性膵炎では,トリプシノーゲンの活性化により膵の自己消化が起き,激しい上腹部痛をきたす.大多数は軽症例で,絶飲食により自然軽快する.しかし,約10%で重症化し, 20~30%の高い致命率となる.重症化の分岐点は発症早期にあり,初期治療が重要である.初期治療は,急性循環不全に対する充分な補液療法と抗酵素療法および疼痛治療である.重症度の判定を早期に行い,重症例は高次医療施設へ搬送して治療することが望ましい.
  • 武田 和憲
    2004 年 93 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近刊行された「エビデンスに基づいた急性膵炎の診療ガイドライン」により,診断・治療のアウトラインと現時点でのエビデンスレベル,推奨度が示された.重症急性膵炎の基本的治療は大量輸液と集中治療であるが,特殊治療=オプション(現時点で明らかな有効性を示すrandomized controlled trial (RCT)が少なく,まだ,評価が定まっていない治療法)として,蛋白分解酵素阻害薬・抗菌薬の動注療法,血液浄化法,選択的消化管除菌があげられている(いずれも推奨度C).また,欧米のガイドラインでは有効性が否定されている蛋白分解酵素阻害薬の大量静注が,わが国のガイドラインでは,確立された治療として推奨されていることが,欧米との最大の相違点である.いずれもRCTによるエビデンスが十分でないことに加えて保険適応の問題などを含んでいる.十分なインフォームドコンセントのもとに実施すべきである.また,エビデンスを確立する努力も必要である.
  • 片岡 慶正, 金光 大石, 阪上 順一, 光藤 章二, 岡上 武
    2004 年 93 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎は膵の内部に進行性,非可逆性の慢性炎症性変化が生じ,腹痛,背部痛などの臨床症状に加え,膵内外分泌機能障害を来たす疾患であり,その成因,病期,重症度,合併症の有無あるいはその程度により多彩な臨床症状を示す.本稿では,慢性膵炎の臨床病期と各病期に出現する臨床症状,また2001年に新しく提唱された慢性膵炎臨床診断基準に沿って慢性膵炎の診断における画像検査,機能検査について述べる.
  • 木原 康之, 大槻 眞
    2004 年 93 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    我が国の慢性膵炎推計患者数(受療患者数)は42,000人(1999年)で,成因としてアルコール性が54%,特発性が30%,胆石性が4%を占める. 1日100g以上のエタノール飲酒者の慢性膵炎発症のリスクは非飲酒者の11.2倍に上昇する.慢性膵炎は発症早期には腹痛発作を繰り返すが,膵腺房細胞の脱落と線維化の進行に伴い,膵外内分泌機能が次第に低下し,消化吸収障害,糖尿病を発症する.
  • 岡崎 和一
    2004 年 93 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎は慢性に進行する膵の炎症であるが,原因の多様性とともに初期病変の病態や発症機序,形態と機能の相関,急性膵炎との関連性なども不明な点が多いために,病期に応じた治療の選択が求められる.日本膵臓学会の慢性膵炎臨床診断基準2001に必ずしも合致しない膵炎として慢性閉塞性膵炎,藤管狭細型膵炎,慢性膵炎の疑診例,腫瘤形成性膵炎がある.診断基準を満たす典型的な慢性膵炎および特殊型膵炎についてその病態と治療に関する最近の知見を述べる.
  • 小泉 勝
    2004 年 93 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎では合併症を早期に発見治療し良好なQOL(quality of life)を維持する.主な合併症には膵石灰化,仮性膵嚢胞,胆管狭窄などの器質的異常と糖尿病,消化吸収障害の機能的異常がある.膵石灰化は膵管内の結石(膵石)であり,膵液の流出阻害が明らかで腹痛,急性増悪を生じているときは体外式衝撃波結石治療法,内視鏡治療で破石,摘出する.糖尿病は膵B細胞減少によるものでインスリン治療を中心とする.仮性膵嚢胞は絶食絶飲などで保存的に治療を6~8週間行うが急な増大に対しては針穿刺吸引により減圧を図る.
  • 窪川 良廣, 須山 正文, 崔 仁煥
    2004 年 93 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    切除して予後の良い膵癌は上皮内癌か微少浸潤例で,これらはすべて腫瘍径がlcm以下であった.臨床所見では腹背部痛,糖尿病,膵酵素の上昇が小膵癌の拾い上げに重要であった. USで腫瘍が描出されなくても主膵管径2mm前後で拾い上げ, MRCPを行い,異常例にはERCP,さらに膵液細胞診等を行うのが膵癌の早期診断に重要と考えた. CT, EUS,血管造影, FDG-PET等は各検査の特性を考慮して総合診断することが重要である.
  • 伊藤 鉄英, 有田 好之, 河辺 顕, 久野 晃聖, 名和田 新
    2004 年 93 巻 1 号 p. 64-69
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    膵癌は消化器癌の中でもっとも予後不良であり,治療の中心は外科手術である.画像診断の進歩により膵癌診断は飛躍的に進歩したが, 80%以上は診断時にstage IVの切除不能症例であり,平均生存期間は4.3カ月と悲惨である.近年, gemcitabine (GEM)の登場により切除不能膵癌に対する治療は向上している.局所進行例では放射線併用化学療法が,遠隔転移例ではGEMによる全身化学療法が標準的治療であり,また,現時点では有効性は確立していないが,ミニ移植などの腫瘍免疫細胞療法にも期待は大きい.
  • 伊佐地 秀司, 上本 伸二
    2004 年 93 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    膵癌の外科治療成績について,全国膵癌登録による集計成績ならびに, evidence-based medicineの立場から膵癌外科治療に関する無作為化比較対照試験(RCT)の文献報告につき検討した.拡大手術は標準手術に比べて根治度を増加させるものの,予後の改善効果は極めて少ないといえる.治癒切除後補助療法に関してはいまだ一定の結論が得られていないが,化学放射線療法に比べて化学療法に有効性が期待できそうである.なお術前補助療法に関しては治療法の確立とRCTによる検証が待たれる.
  • 河本 泉, 嶋田 裕, 藤本 康二, 伊丹 淳, 川村 純一郎, 土井 隆一郎, 今村 正之
    2004 年 93 巻 1 号 p. 77-83
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    膵・消化管内分泌腫瘍は稀な疾患である.根治的治療法は外科的切除のみである.この外科的切除を成功させるには術前および術中に腫瘍の局在を十分検討し,腫瘍を遺残させないことが重要となる.われわれは術前に選択的動脈内刺激物注入法(SASI test)を中心としてCT,内視鏡などの検査を行い総合的に診断を行っている.根治的切除が困難な症例に対しては化学療法やラジオ波焼灼療法を併用している.
  • 西森 功, 大西 三朗
    2004 年 93 巻 1 号 p. 84-89
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    遺伝性膵炎は常染色体優性の遺伝疾患であり,わが国ではこれまで56家系が報告されている.比較的若年に発症し,急性膵炎発作を繰り返しながら慢性膵炎像へと移行する.カチオニックトリプシノーゲンの遺伝子変異が原因で,膵腺房細胞内における活性化トリプシンと防御機構のバランスが崩れ膵炎が惹起される.膵炎発症との関連を示す2つの変異型(R122HとN29I)が診断基準に採用された.一方,膵分泌性トリプシンインヒビター(PSTI)およびクロールイオンチャンネル(CFTR)の遺伝子変異が特発性慢性膵炎で報告されている.これらの遺伝子変異は単独では膵炎を発症せず,他の遺伝的素因あるいは環境因子の付加により膵炎発症のリスクを高める膵炎誘発因子と考えられる.遺伝性膵炎の臨床像ならびに治療は通常の膵炎と同じであるが,高い膵癌の合併率が報告されており注意を要する.
  • 神澤 輝実
    2004 年 93 巻 1 号 p. 90-95
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎は,発症に自己免疫の機序が関与する膵炎で近年注目されている.膵の腫大と膵管狭細像があり,血液検査で高ガンマグロブリン血症,高IgG血症,自己抗体のいずれかを認めるか,病理組織学的に膵にリンパ球と形質細胞を主とする細胞浸潤と線維化を認めた場合,本症と診断される.高齢の男性に好発し,膵癌との鑑別が肝要である.閉塞性黄痙で発症する例が多く,膵炎発作を呈することは稀である.ステロイド治療が奏功し,予後は比較的良好である.
  • 乾 和郎, 芳野 純治, 奥嶋 一武, 三好 広尚, 中村 雄太
    2004 年 93 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近注目されているMCTとIPMTについて解説した. MCTは比較的厚い共通の被膜をもつ多房性嚢胞で,卵巣様間質を認めることが多く,中年女性で膵体尾部に多い.一方, IPMTは高齢男性で膵頭部に多く,多量の粘液と膵管上皮を広く進展する特徴がある. IPMTは膵管との交通を認めるがMCTでは認めないことが多い.以上のような臨床病理学的特徴を画像で捉え,卵巣様問質を確認することで両者の鑑別診断が行える.
  • 山口 武人
    2004 年 93 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    膵疾患に対する内視鏡治療として,膵石,膵管狭窄,膵仮性嚢胞をとりあげた.膵石治療では体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)の有用性が認識され,治療法の中心となっている.しかし,内視鏡併用が必要となる症例は多く,併用による治療効果の向上も期待できる.膵管狭窄に対するステント治療は適応の選択が重要である.また,ステントの材形,留置期間,長期予後など,今後検討が必要な問題も少なくない.膵仮性嚢胞に対しては,超音波内視鏡を応用した消化管との内瘻化が新しい治療法である.
  • 井上 紘輔, 熊谷 千鶴, 西岡 達矢, 谷口 義典, 大崎 史淳, 公文 義雄, 末廣 正, 橋本 浩三, 有沢 豊武
    2004 年 93 巻 1 号 p. 134-136
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は18歳,女性.多関節痛,高熱を主訴に受診し,関節所見,臨床症状から,関節リウマチ(RA)と診断.また,発症時より多発神経炎による左下肢の限局性のしびれと知覚低下および血管炎による下腿紅斑を認め悪性関節リウマチ(MRA)と最終的に診断した.ステロイド,免疫抑制剤の投与にて症状・所見は改善した.若年で発症した悪性関節リウマチは稀であり,また多発神経炎,血管炎に基づく症状が発症時よりみられた点も特徴的と考えられた.
  • 皆内 康一郎, 藤江 禎二, 松原 詞子, 笠原 英樹, 小椋 庸隆, 田村 元男, 山根 康昭, 田中 昌博, 種市 幸二
    2004 年 93 巻 1 号 p. 139-141
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.右側頭部・眼窩部腫瘤摘出術の術前検査において白血球増加を認め精査目的に入院となった.骨髄穿刺にて異型性のある形質細胞の増加, IgD-λ型M蛋白を認めたことより形質細胞性白血病(以下PCL)IgD-λ型と診断した.入院時, NH3 239umol/lと高アンモニア血症を認めた.入院時肝酵素の上昇を認めたが各種ウイルスマーカー,自己抗体は陰性であった. PCLに対しVAD療法を施行し血清NH3値も病勢に相関して低下しその後VAD不応性となった時点で再び上昇した.文献的考察と併せて多発性骨髄腫における高アンモニア血症が予後不良因子である可能性が考えられた.
  • 佐々木 誠, 本多 聖子, 金澤 英明, 寺本 洋之, 木村 謙介, 佐藤 吉弘, 野間 重孝, 内田 浩, 高橋 隆一, 木曽 一誠
    2004 年 93 巻 1 号 p. 142-144
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は52歳女性.尿路感染症で他院に入院中に心不全を発症し,心エコーにて下大静脈から繋がる可動性の右房内腫瘍を確認, CT, MRI,静脈造影にて子宮筋腫への連続性を確認しintravenous leiomyomatosis(以下IVL)が疑われた.一期的に開胸開腹行い腫瘍の摘出を行った.本疾患は子宮周囲静脈に留まるものも含めても本邦では21例と非常に稀であり報告した.
  • 牧野 英記, 多田 浩也, 竹内 栄治
    2004 年 93 巻 1 号 p. 145-146
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.以前より高度の肥満と日中の傾眠傾向を認めていた.突然の呼吸停止を契機に肥満低換気症候群(obesity hypoventilation syndrome, OHS)と診断され,人工呼吸器の離脱時にnon-invasive positive pressure ventilation (NIPPV)が著効し,軽快した. OHSはわが国での報告は少なく,若干の文献的考察を踏まえて報告する.
  • 内田 博起, 浜島 英司, 井本 正巳, 中江 康之, 今田 数実, 廣瀬 善道, 白井 修, 許 聖服, 小川 裕, 鈴木 敏行, 後藤 ...
    2004 年 93 巻 1 号 p. 147-149
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,男性.主訴は易疲労感.小球性低色素性貧血を認め,消化管出血を疑った.上部下部消化管検査では特に異常なく,有管法の小腸X線検査でTreitz靱帯より約30cm肛門側に長径約4cmのoverhanging edgeを伴う不整な全周性狭窄を認め,進行空腸癌と診断した.空腸部分切除術を施行し,標本上大腸癌取り扱い規約に準じ,長径65mmの2型(se)とその口側約6cmに術前に指摘できなかった長径22mmのIIa型(m)を認めた.多発空腸癌の報告例は稀であり, IIa型を術前診断できなかったが, 2型の空腸癌の診断に有管法の小腸X線検査は有用であった.
  • 久多良 徳彦, 小穴 修平, 小野寺 佳奈, 石田 弥, 照井 虎彦, 遠藤 昌樹, 千葉 俊美, 猪股 正秋, 折居 正之, 鈴木 一幸
    2004 年 93 巻 1 号 p. 150-152
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.主訴は発熱.腹部CT検査にて,肝右葉のほぼ全体を占める膿瘍を認めたため経皮経肝膿瘍ドレナージ(PTAD)を施行した.膿瘍液よりアメーバ原虫が検出されたためメトロニダゾールの内服(2,250mg/日)にて治療を開始したが効果がなく,メトロニダゾールの静脈内投与(1,500mg/日)に変更したところ発熱や腹膜炎の改善を認めた.メトロニダゾールの内服にて改善が得られないアメーバ性肝膿瘍重症例や下痢などによる吸収不良例に対しては,メトロニダゾールの静脈内投与が有効である.
  • 光と影
    近藤 啓文
    2004 年 93 巻 1 号 p. 153-160
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    RAの治療に使用される現時点で最も重要な生物学的製剤は炎症にかかわるサイトカインの働きを抑制するものである.まずTNFαに対するキメラ型抗体(インフリキシマブ)が開発され,速効性と高い有効性が明らかになった.次に可溶性TNFレセプターによりTNFαの活性を抑制する生物学的製剤(エタネルセプト)が開発され,最初のRAの治療薬として欧米で承認された.その後, IL-1を標的とした治療薬,完全ヒト抗TNFα抗体が欧米の市場に登場した.そしてわが国で開発されたIL-6に対する受容体抗体の治験がすすめられている.これらの生物学的製剤は速効性で著しい効果をもち,関節破壊の進展をを抑制するなどRAの薬物治療に大きな進歩をもたらした.しかし, RAに寛解をもたらすことはできないようである.しかも,高価な製剤であることと安全性に問題を抱えている.安全に使用することが医師の責務である.
  • 屋嘉比 康治
    2004 年 93 巻 1 号 p. 161-169
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,神経消化器病学(Neurogastroenterology)なる分野が注目されている.元々,胃や腸など消化管においては自律神経や脳との密接な関連牲が知られていたが,ここ数年この分野の研究活動は,新たに学会まで立ち上げて研究発表の場を準備するまでに盛んになってきた.
    この10年間, Helicobacter pylori (HP)に関する関心が高く,消化器病学会においてもその分野に関する研究が溢れる程であった.しかし,最近の臨床的な課題としては消化管運動機能異常,すなわち, non-ulcer dyspepsia (NUD)あるいはfunctional dyspepsia(機能性胃腸症)と呼ばれている症候群とirritable bowel syndrome (IBS,過敏性腸症候群)が残されており,患者数が多い割にはその病態の解明は不十分と云わざるを得ない状況である.神経消化器病学はまさにこれらの消化管運動機能異常を中心としながら消化管機能の調節機序について研究し解明して行く分野である.特に最近では消化管の調節は自律神経だけでなく,その中枢である脳との関連,あるいは内分泌細胞や免疫細胞の関与など全身におよぶ大きなシステムが関与しているが明らかになってきており,それらを通じて消化器以外の臓器との連関も示唆されている.本稿では神経消化器病学における最近の進歩から,いくつかの話題を取り上げて概説する.
  • 平松 直樹, 林 紀夫
    2004 年 93 巻 1 号 p. 170-177
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    C型慢性肝炎に対する抗ウイルス療法, IFN/リバビリン併用療法の出現により新たな展開を迎えている.難治性であるGenotypel型高ウイルス量症例に対する併用24週投与では,著効率は約20%と従来のIFN単独投与の2倍以上の治療効果が認められている.著効率のさらなる上昇のためには,高率な治療後の再燃率(70~80%)を低下させることが重要である.治療後の再燃はHCV RNA陰性化時期と密接な関係があり,併用24週投与では, 12週以降にHCV RNAが陰性化した症例では,ほぼ全例に再燃がみられる.この対策としては,併用長期投与が最も有効であるが,本邦では保険適応が認められていないため,現時点で併用24週投与後IFN単独24週投与を行うことにより,再燃が抑制され,著効へと導ける可能性がある.また,現在,臨床治験中のIFN徐放剤Pegylated IFN (Peg-IFN)とリバビリンの併用療法は,利便性や治療法は,利便性や治療効果に優れ,近い将来, C型肝炎の治療の中心になることは疑いない.
  • 小山 弘, 福井 次矢
    2004 年 93 巻 1 号 p. 178-185
    発行日: 2004/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    臨床医学の目的は患者アウトカムの改善である.したがって,患者アウトカムを指標とする臨床試験を重視するEvidence-based Medicineが,臨床医学の原理とみなされるのは当然である. 20世紀後半以降,臨床試験をはじめとする臨床研究が多数行われ,情報科学技術の発展とあいまって,一般的な診療の場での決定を,個人的な経験や権威者の意見に基づくのではなく,より妥当性の高い根拠(エビデンス)に基づいて行うことが可能となってきた.特に内科領域で行われる治療やマネジメントの50~60%がランダム化比較試験に基づくことや,診療ガイドラインなどのEBMの実践を支援するツールが,患者アウトカムを改善しうることが示されている.これらのことは,内科医は患者の得る健康上の利益を最大にするために,集積されたエビデンスを有効に使う責務を負うことを意味する.二次情報源や支援ツールはますます整備され,エビデンスを手軽に利用できるようになってきており,内科医はより質の高いエビデンスに則った診療を常に心掛け,その結果としての患者アウトカムが最善のものとなっているかどうかについて注意を払うべきである.
  • 2004 年 93 巻 1 号 p. 202
    発行日: 2004年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
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