メラノソームを介した色素産生の分子機構の理解は,エンドソーム機能の解明と共に変遷している.尋常性白斑 vitiligoは,遺伝的背景と環境要因が関与して形成される色素細胞もしくは色素関連分子にたいする自己免疫疾患である.①遺伝的背景,②自己炎症反応,③酸化ストレス応答の感受性,④自己免疫応答,⑤獲得免疫応答,⑥ケラチノサイトによる獲得免疫応答の維持,の6つの過程に分けて尋常性白斑病態を解説する.
尋常性白斑の治療は国内外のガイドラインに記載されており,日本では2012年尋常性白斑診療ガイドラインとして日本皮膚科学会雑誌に刊行された.外用療法,紫外線療法,カムフラージュ,さらに外科治療について詳述され,治療アルゴリズムも提唱されている.本稿では,このガイドラインに沿って各治療法のメリット・デメリットをわかりやすく解説すると同時に,近年の分子生物学的な病態解明に基づいた分子標的治療の開発など,今後の新しい治療の可能性についても解説する.
45歳男性.外傷後に再生した右示指の爪甲に痛みがあり,当科を受診した.初診時,右示指爪甲は黄色調に肥厚,混濁し,その中に黒褐色の幅の狭い色素線条が2カ所みられた.爪甲遊離縁直下は乳嘴状に角化していた.生検でBowen病と診断したが,術前には爪甲下角質増殖を来した爪白癬に酷似した臨床像を呈した.爪器官を全摘後,植皮した.PAS染色で真菌要素は検出されず,ウイルス学的検索ではHPV16型を検出した.国内外での報告例の集計では,爪白癬様の臨床像は比較的稀であるが,爪白癬の鑑別診断として重要である.