汎発性膠原病(Klemperer,Pollack & Baether.,1942)なる名称が,病理組織学的に結合織,殊にその結合基質のフイプリノイド変性を主徴とする急性乃至慢性の系統的疾患群に與えられて以来,その代表的疾患である急性エリテマトーデスの本群に関する研究は,單にエリテマトーデス1疾患のみでなく,他の膠原病の本態に関連するものとして活発な追求がなされている.特にHargraves(1948)の所謂LE現象の発見が,エリテマトーデスの診断に重大なる意義を有することが確認され,LE現象陽性なる爲に皮疹の発現を欠如していても,エリテマトーデス無疹型として取り扱われる傾向が強くなり,エリテマトーデスへの関心は單に皮膚科学のみならず,内科学領域に於ても急速に昻まつて来たと言えよう.エリテマトーデスの病因に関しては,Besnierの結核説提唱以来,梅毒説・中毒説・細菌感染説,感染・非感染性アレルギー説,腦下垂体・副腎皮質ホルモン障害説等を経て膠原病説への発展を示したことは周知の如くである.最近西村(昭32)に依りフエニールアラニン・チロジン代謝が膠原病に共通な特異所見であることが立証され,膠原病の病因解明へ,惹いてはエリテマトーデスの本態の解明に新分野を拓いたとは言え,此の中間代謝障害が病因に対して1次的な意義を有するものか,或は2次的な変化であるかについては,疑義の介在を否定し得ない.更に又,各種膠原病に共通の病因々子的事象を確認し得たとしても,個々の疾患に於ける臨床像の著しい相違を如何に解釋するかは,今後に残された課題であろう.著者は最近千葉大学皮泌科及び第1内科・第2内科に於て死亡せる急性エリテマトーデスの4剖見例の病理組織学的所見を詳細に観察する機当を得たので,・にその大要を記載し併せて卑見を加えたい.
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