2018年6月2日,広島で開催された第117回日本皮膚科学会総会において,本学会キャリア支援委員会企画の教育講演が開催された.テーマを「時空を超えてつなぐバトン」とし,大学で主任教授を務めてこられた先生から就任されたばかりの若手教授,育児しながら専門医を取得された中堅皮膚科医と幅広い世代からキャリア形成の経緯と人材育成を聴いた.講演後の総合討議では,これから皮膚科の未来を担う若い皮膚科医をどのように導いていくべきなのか,パネルディスカッションを行った.
毛包系腫瘍の病理の最近の話題として,下記の3点に絞って解説した.
1 毛芽腫(TB)と基底細胞癌(BCC)の組織学的鑑別点は,ムチン産生の有無が重要.
BCCはムチンを産生するが,TBは産生しない.
2 パンチバイオプシーで取り切れてしまう小さなBCCが見つかるようになった.
ダーモスコピー所見により,BCCの早期発見が可能になった.
3 外毛根鞘癌(TC)は存在するのか?
厳密な定義を満たすTCは非常に少なく,多くは有棘細胞癌と考えられる.
皮膚の汗管・汗腺系の悪性腫瘍は,いまだに概念や分類が統一されていないため,理解を困難にしている.本稿では,組織学的な正常の構成細胞との類似性という点に着目し,1)汗管上皮細胞の癌,2)エクリン腺およびアポクリン腺上皮(汗腺)細胞の癌,3)アポクリン腺上皮細胞と筋上皮細胞との二相性から構成される癌および,4)良性のカウンターパートを有する癌に分け,可能な限りシンプルに理解できるよう試みた.なお,乳房外Paget病は汗管・汗腺とは異なるすでに確立した概念であるため,本稿では取り上げない.
日本乾癬学会による,3年間の乾癬性関節炎疫学調査の結果をまとめた.本邦患者の臨床的特徴は,1)男性が女性の2倍弱多い,2)乾癬発症の平均年齢は30歳代後半,関節炎は40歳代後半,3)乾癬のタイプは尋常性(局面型)が9割以上,4)関節炎のタイプは,多関節炎型かDIP型が多い,5)乾癬の家族歴は5~7%程度,6)付着部炎は2割強,7)指趾炎は6割前後に認められる,などであった.生物学的製剤による治療は,約半数に導入されていたが,中止または他剤へのスイッチ例も15~20%強に認められた.爪病変,併存症,職業についても合わせて調査した.
アトピー性皮膚炎(AD)の疾病負荷と治療満足度に関して患者と医師の認識の相違を明らかにするために,患者300名と医師200名にオンラインアンケート調査を実施した.患者の多くは多岐にわたる疾病負荷を医師に伝えられておらず,治療により改善が得られていなかった.患者・医師ともに現状のAD治療に対する満足度は高くない一方で,両者間には疾病負荷に対する理解やコミュニケーションにおけるギャップが存在し,患者の治療満足度は患者が評価した「医師の患者理解度」と相関した.AD治療においては,患者の疾病負荷を医師が正しく理解し,その解決に向けてともに取り組む必要性が示唆された.