ヒト角層に in vitro と invivo で実験的に DRYSKIN を作成してその発症機序を検討した. in vitro ではヒト死体皮膚より角層を分離して,N2 ガス法,水浸漬法,凍結乾燥法及びヘキサン法の4種類で DRY SKIN 作成を試みた.観察は,肉眼,光顕及び走査型電顕で行った,分離した角層試料を水又は 1% ラウリル硫酸塩(以下 SLS と略)溶液に1乃至7日間浸漬後,各々の試料中に含まれるコレステロール(以下 CL と略),フォスフォリピド(以下 PL と略)値を測定し,対照としてフォルチ氏液24時間浸漬後可溶化される脂質値を 100% として比較検討した.又7日間浸漬後可溶化されてくるアミノ酸値を分析した. in vivo では,小プラスチックカップを作成し被験者に装着後水を注入して数日間浸軟させたのち乾燥したところ被験部に DRY SKIN が生じた.乾燥度と溶出蛋白量,アミノ酸量,および剥離細胞数との相関を検討して,以下の結果を得た. 1)分離ヒト角層に DRY SKIN を作成するには水浸潰前処置と乾燥の組み合わせが効果的であった.とくに角層表面に落屑が生じる為には水浸漬による角層の前処理が必要であった. 2)走査型電顕による DRY SKIN 表面の観察から,Nz ガス法による DRY SKIN では,皮溝の消失と角層間の軽度の剥離がみられた.水浸漬によるDRY SKIN では皮野,皮溝の完全な消失と,角層が塊状に大きく剥離しているのが観察された.いずれも個々の角層細胞には形態的変化はみられなかった. 3)角層を水または SLS に浸漬すると浸漬時間に比例して,コレステロールとホスフォリピドの比が上昇し,共に2成分の著しい減少がみられた.またアミノ酸も同時に溶出して SLSでは水に比較して著しく高値であった. 4) in vivo では,被験部の乾燥度と溶出蛋白量,1% Tritonx 液可遊離性角層細胞数との相関をみたところ,乾燥度に比例して,溶出蛋白量,剥離細胞数ともに増加がみられた.
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