エリテマトーデス(Cutaneous LE 22検体,Systemic LE 20検体計42検体)の皮疹部の表皮真皮接合部を電顕的に観察し,次の結果を得た. (1)基底細胞に接する基底膜の幅は,最小平均37nm,最大平均82nmであった. Cutaneous LE (以下CLE)と Systemic LE (以下SLE)に有意な差はなかった. (2)基底細胞質の小陥凹,透明層の開大 anchoringfilament と基底膜の接着の消失,基底膜と基底細胞との離開,基底膜の欠損・分岐と真皮への垂れ下がりがみられた.これらの変化は全て基底膜の多層化の前段階と考えられる. (3)基底膜は多層化を示し,I型:1層と分岐,II型:2~4層の多層化,Ⅲ型:5層以上の多層化,に分けた.Ⅲ型はLEに特異的な反応と考えた. (4)基底膜の多層化の程度を,基底細胞膜から多層化した基底膜の真皮側最下端までの距離に対応するものとみなすと CLE が SLE に比べ有意の差で変化が著るしかった. Discoid LE, Chilblain LE の皮疹でも顕著で,後者では有意の差であり, CLE が SLE に比べ有意に局所の皮膚障害が強いことがわかった. (5)皮疹別に検討すると, CLE では Discoid LE > LE profundus > Chilblaia LEの順に変化の顕著なものがみられた. SLEでは滲出性紅斑 Discoid LE, 滲出性 LE, Chilblain LE の順に変化の顕著なものがみられたが,これらは有意の差ではなかった. (6)基底膜は基底細胞から形成される事が知られており,表皮細胞の変化に対応して基底膜に二次的に変化がおき,反復しておこる傷害に付随して多層化が生じると考えた.
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