糖尿病患者のコントロールの指標としてのHbAI値とpigmented pretibial patches(PPP)との関係を検討する目的で,以下の調査を行った.すなわち,155名の糖尿病患者の下腿を診察し,臨床症状の所見と程度に応じ,順次,PPP陰性群,単発型,散在型,多発型,線状配列型,局面型の6型に分類し,各例の糖尿病歴,過去3年以内のHbAI値,糖尿病合併症について調査した.その結果,①PPP陽性者は77名(49.7%)であった.②PPP陽性群では陰性群に比しHbAI値は高値を示したが,統計学的有意差を認めなかった.③PPP陽性群では陰性群に比し糖尿病歴は長く,統計学的有意差を認めた.④HbAI値の平均値9.45%,糖尿病歴の平均値9.9年を基準として,患者を4群に分類した.A群(HbAI値9.45%以上かつ糖尿病歴9.9年以上)におけるPPPの合併率は,66.7%,B群(HbAI値9.45%未満かつ糖尿病歴9.9年未満)におけるPPPの合併率は37.0%であった.臨床病型が進むほどA群に該当する割合は高くなり,B群に該当する割合は低くなる傾向が認められた.⑤PPP陽性群では陰性群に比し,他の糖尿病合併症を伴う率が高かった.以上の結果から①PPPは糖尿病歴が長く,コントロール不良の群に好発することが客観的に確認された.②PPPの臨床病型分類(私案)は,糖尿病歴の長さ,コントロールの状態を推定するある程度の指標となりうると考えられた.
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