ポルフィリン症における光線過敏性皮疹の発症機序を解明するために以下の実験を行なった. 1,肝からラインブームを分画し,これに単色光発生装置を用いて hematoporphyrin (HP) 添加下に長波長紫外線を照射した.① 照射する400nm紫外線のエネルギーを増すにつれて,ライソゾーム膜の破壊とそれによるライソゾーム酵素 (acid-phosphatase,β-glucuronidase) の漏出が認められた.しかし,HP を添加しない系てはライソゾーム酵素の漏出はほとんどなかった.② 照射波長を380~420nm の範囲で 10nm 間隔で照射した場合は, 380~410nm の間ではライソゾーム酵素の漏出に差はなかった.③ 活性酸素の scavenger として vitaminE, diazabicyclo-octane, mannitol, bovine serum albumine,superoxide dismutase を照射系に前投与すると,ライソゾーム酵素の漏出抑制か観察された. 2. HP に400nm紫外線照射してもnitroblue-tetrazolium の還元は認められず,したがって,一次的には superoxide radical (O2-)は発生しないと考えられる. 以上より,ポルフィリン体に長波長紫外線を照射すると基底状態の酸素分子(3O2)を励起して singlet oxygen(1O2) を生成し,この 1O2 がライソゾーム膜の脂質を過酸化し膜の物理性を変える.これによりライソゾーム酵素が細胞質内あるいは細胞間に逸脱し,皮膚における種々の病理学的反応が惹起されると思われる,
抄録全体を表示