日本皮膚科学会雑誌
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97 巻, 13 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 土田 哲也, 玉置 邦彦, 安藤 巌夫, 島田 真路, 下妻 道郎, 染谷 通, 日野 治子, 西脇 宗一, 山口 和克, 石橋 康正
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1521-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    特異な組織病変を伴った脂肪織炎を経過中生じた皮膚筋炎の3例を経験した.この特異な組織病変は,那須により発見された膜嚢胞性病変(membrano-cystic lesion)に類似する病変と考えられた.その3例ともこの皮下脂肪織炎出現後に間質性肺炎の増悪をみていることから,皮膚筋炎において皮下脂肪織炎の出現と間質性肺炎の発生,進展の間には相関があることが推察された.
  • 平野 眞也, 奥田 良治, 玉置 公一, 岸本 三郎, 安野 洋一
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1531-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    モルモットに実験的Ⅲ度熱傷を作成し,免疫組織化学的にデスミン陽性細胞の動態を観察した.デスミン陽性細胞は管腔を形成する細胞としない細胞に大別された.管腔を形成する細胞は創傷治癒が進むにつれてpericyte,血管平滑筋細胞としての形態的特徴を示すようになり,また管腔は次第に蛇行を減じていった.このことはデスミンが細胞骨格として管腔壁細胞の形態の変化に関与するとともに,管腔自体の収縮の方向を調節することにより新生血管全体の再構成に関与することを示唆するものと考えた.一方,管腔を形成しない細胞には,管腔形成に関与しつつある細胞とそうでないものがあり,いずれの場合にもmyofibrorblast様細胞とpericyte様細胞,およびその中間形あるいは移行形と思われる細胞がみられた.いずれの細胞が内皮細胞に接着するかは不明であるが,これらの細胞のうち血管内皮細胞と接着したものは血管周囲細胞となり,そうでないものはmyofibrorblastとして創の収縮に関与した後に消失していくものと考えた.このことは血管周囲細胞とmyofibrorblastが共通のprecursor cellに由来することを示唆するものと思われた.
  • 野中 薫雄, 大神 太郎, 村山 史男, 長戸 紀, 山下 和徳, 入船 弘子, 渡辺 雅久, 吉田 彦太郎
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1539-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    皮膚のヘマトキシリン・エオジン(HE)染色標本を蛍光顕微鏡で観察することにより,躯幹,四肢の正常角層は3層から構成されていることが明らかとなった.この3層構造はトルイジンブルー・ベーシックフクシン染色や電顕によって観察される3層構造とは,最上層が薄い点でやや異なっていた.一方,尋常性乾癬病巣の角層では3層構造は認められず,1層の輝黄色蛍光が観察された.この結果,HE染色標本を蛍光顕微鏡で観察することは,病的な角化機転によって形成された異常な角層をきわめて容易に認識しうることが明らかとなった.さらに,dyskeratosis,parakeratosis以外の角層の変化もこの方法により,光顕的に観察し得る可能性があると考えられた.
  • 森岡 眞治, 小川 秀興, 松本 孝夫, 廣瀬 俊一, 木村 太紀
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1545-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    51歳,男性,カナダ国籍,本邦においてKaposi肉腫(KS)を発症した後天性免疫不全症候群(AIDS)の一例を報告した.約10年間の同性愛歴およびアフリカ中央部にて約12年間の生活歴があった.本例では臨床的に右下腿に限局した古典的KS様の臨床像および典型的なKSの組織像を呈していた.血清ウイルスおよび免疫学的検査にて,HTLV-Ⅲ抗体陽性,Tリンパ球の異常(Leu3a/Leu2a比の0.46への低下)の他,サイトメガロウイルス抗体陽性を認めた.本邦および全世界におけるAIDS患者の発生状況・実態を文献的に検討し自験例と比較検討した.
  • 額田 純子, 皆川 陽美, 茂野 淑, 安田 和正, 平野 京子
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1551-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    そば粉の摂食により蕁麻疹および喘息発作を生じ,接触塗布にても接触部位に蕁麻疹をつくることができる.そばアレルギー症の14歳男性例を経験した.本症例では,そば粉以外の殻類種子,花粉などに対する特異的IgE抗体も陰性であった.そば粉を,Sephadex column chromatographyとHigh performance liquid chromatography(HPLC)にて分離,推定分子量14,000~20,000付近の主要抗原の存在を証明した.次にその主要抗原と,本症例において特異的IgE抗体陽性を示した殻類種子および花粉との共通抗原性を,IgE-RAST inhibition testにより検討した.その結果,そば粉major allergenは,そば粉以外の殻類種子抗原中にも少量存在するが,殻類花粉抗原中には存在しないことが示唆された.
  • 渡辺 雅久, 赤星 吉徳, 大神 太郎, 村山 史男, 山下 和徳, 入船 弘子, 野中 薫雄, 吉田 彦太郎, 穐山 富雄
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1555-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    47歳,男性の抑制波長を伴う日光蕁麻疹の症例を報告した.作用波長は400~500nm,抑制波長は560~610nmに存在した.作用波長と抑制波長を共に含むslide projector(SP)光を照射すると,照射終了後に膨疹が出現した.SP光に引き続いて抑制波長を照射すると,照射中のみ膨疹形成を抑制しうることが明らかとなった.またin vitroで患者血清にSP光を充分量照射し患者皮内に注射したところ,僅かな紅斑を認めたのみであった.これらの所見より,自験例の抑制波長による膨疹抑制の機序として,複数のメカニズムの存在が推定された.
  • 久保 桂子, 朝田 真木, 滝 潤子, 伊庭 仁樹, 尾口 基
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1561-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    今回,我々はこれまで記載のない特異な臨床像および組織像を呈した8歳女児の自傷性皮膚症の1例を経験したので報告した.症例の皮疹は,左上肢のみに多発する黒色で半球状に隆起した粟粒大から小豆大の丘疹ないし結節であった.一部のものは痂皮ないし血痂を付着していた.組織像は,表皮下水疱であり,その天蓋は表皮構造と赤血球を含む無構造物質が数層に重なり,表皮の再生と水疱の再生がくり返されたことが示唆される所見である.かかる所見は既知の疾患には存在せず,外傷性のエピソードが同一部位にくり返された結果生じたものと考えられた.加えて,監視下で自然治癒がみられること,かつ,皮疹の新生がないこと等より自傷性皮膚症と診断された.
  • 宮下 光男, 安井 由美子, 馬場 俊一, 鈴木 啓之, 森岡 貞雄
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1565-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    汗管腺腫5例を材料に用い,抗CEA抗体,抗S-100蛋白抗体,抗アクチン抗体による免疫組織化学的観察,及び電顕的観察を行い,分化の方向性について論じた.1)CEA:管腔様構造の内腔縁が陽性.2)S-100蛋白及びアクチン:充実性腫瘍塊と管腔様構造の基底部の細胞が陽性.3)電顕所見:腫瘍の形態像は,ほぼ真皮内汗管に類似した構造をとっている.表皮内汗管への分化を示すと思われる所見も散見される.分泌部細胞や筋上皮細胞様の細胞はみとめられない.これらのことより,本腫瘍における充実性腫瘍塊の細胞及び,管腔様構造の基底部の細胞は,電顕による微細構造では観察しえない筋上皮細胞への分化の潜在能を有している可能性があると推察した.
  • 鈴木 裕介, 衛藤 光, 橋本 健
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1571-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    エクリン汗器官癌由来細胞株を免疫原としてマウス単クローン性抗体SKH1を作製した.SKH1は,正常皮膚組織においてエクリン汗腺分泌部および曲導部,またアポクリン汗腺分泌部のみを認識した.またSKH1はエクリン汗器官癌,Paget病の腫瘍細胞を認識し,乳腺,肺,卵巣からの皮膚への転移性腺癌における転移巣腫瘍細胞に反応した.エクリン汗孔腫では,増殖している腫瘍細胞はSKH1陰性であったが,汗管様管腔構造内腔面に配列する一層の細胞は陽性を示した.汗管腫では,開大した管腔壁に配列する細胞は陰性であったが,管腔内角質様物質は陽性を示した.免疫原である細胞株に対する間接蛍光抗体法では,核周囲に放射状,線維性の陽性パターンを示し,SKH1はcytokeratinを認識すると考えられた.
  • 高岡 和子, 川部 美智子, 安江 隆, 原 一夫
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1575-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    症例:60歳主婦,初発症状は全身倦怠感と両下腿の多発性皮内硬結.内科にて,膠原病を疑われて,ステロイド剤を投与されたが反応しなかった.硬結部の病理組織学的検査では,真皮上層から皮下脂肪織にかけての小血管内に,リンパ球様異型細胞が多数認められ,neoplastic angioendotheliosisと診断された.同部の免疫組織学的検索では,前述の異型細胞は第Ⅷ因子陰性,LCA強陽性,pan B抗原であるB-1,LN-1,LN-2は全て陽性,pan T抗原であるT-11,Leu 4は陰性であった.以上の結果より本症例における腫瘍細胞は悪性リンパ腫細胞であり,LSG分類ではビマン性大細胞型にあたるB-細胞リンパ腫と診断された.患者は発症より6ヵ月後死亡した.
  • 赤尾 明俊, 池澤 善郎
    1987 年 97 巻 13 号 p. 1579-
    発行日: 1987年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    B10A(4R)由来のfibrosarcoma(Schumidt-Ruppin strain,Rous sarcoma virus induced Sa 1229)をTNP化し,レ線照射後マウスTail endに皮下注.7日後,同様にTNP化したSa 1229を背部皮下に接種して,腫瘍の発育を見た.EK分子の発現を有するB10A(2R)マウスにおいては,EK分子を欠くB10A(4R)マウスとは異なり,TNP化Sa 1229の発育に対して,明らかな抗腫瘍効果は認められなかった.しかしながら,B10A(2R)マウスを,抗EKαモノクローナル抗体でin vivo処理することによって,B10A(2R)マウスもTNP化Sa 1229の発育に対して,B10A(4R)マウスと同様の抗腫瘍効果を発揮した.これは,ウレタン誘発肺腫瘍発生に対するMHC classⅡ支配の成績と基本的には同様の所見であり,腫瘍免疫のMHC支配におけるMHC classⅡE分子の果す役割について若干の考察を加えた.
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