尋常性乾癬の病態をリポ蛋白代謝の面から検討するため,HDL および LDL それぞれの主要アポ蛋白である apo A および apo B の局在を蛍光抗体間接法によって観察し,以下の結果を得た. apo A に関しては,尋常性乾癬の典型的皮疹および早期疹において真皮・表皮境界部,乳頭層内血管周囲および錯角化部にその沈着を高率に認めた.尋常性乾癬の無疹部および掌蹠膿疱症でも真皮・表皮境界部および乳頭層内血管周囲にその沈着を低率ながら認めた.しかし,慢性湿疹,アトピー性皮膚炎,脂漏性皮膚炎の各皮疹,黄色腫および慢性膿皮症の各無疹部,さらに正常人皮膚ではこのような沈着は認められず,したがって.この所見は掌蹠膿疱症を除いては尋常性乾癬に特異性が高いと考えられた. apo B に関しては,尋常性乾癬の早期疹において乳頭層内血管周囲にその沈着を比較的低率に,また尋常性乾癬の典型的皮疹および早期疹において錯角化部にその沈着を低率ながら認めた.しかし,尋常性乾癬無疹部,ならびに掌蹠膿疱症,慢性湿疹,アトピー性皮膚炎および脂漏性皮膚炎の各皮疹,黄色腫および慢性膿皮症の各無疹部,さらに正常人皮膚ではこのような沈着は認められなかった. 以上から, apo A および apo B, とくに apo A ないし HDL は尋常性乾癖の病因ないし病態に密接な関連を有することが示唆された.
抄録全体を表示