25歳,女性.1994年頃より発熱,下肢の紫斑を呈するようになる.近医にてステロイド内服治療うけ,一旦軽快をみるものの症状の再燃をくりかえしていた.1998年10月26日長崎大学病院皮膚科を受診.精査にて高γグロブリン血症,抗核抗体陽性,口腔内乾燥,口唇生検にて口唇唾液腺へのリンパ球浸潤,唾液腺造影にて腺管の拡張をみとめた.以上よりシェーグレン症候群と診断した.経過観察中1999年5月右大腿に皮下硬結出現.次第に拡大し高熱を呈するようになった為,硬結部より生検行ったところ皮下組織から筋肉にかけ,組織球による血球貪食像を伴った,異型を有する密なリンパ球浸潤をみとめ,T細胞受容体再構成を確認した.In situ hybridizationにて腫瘍細胞はその大半にEB virusの産物EBER(EB virus encoded small nuclear RNA)を認めたため,同ウイルスの関与が考えられた.細胞表面マーカーはCD3,4が陽性で,CD8,20,30,56は陰性であった.以上より本例をT細胞リンパ腫と診断した.血液検査上,末梢血に異型細胞はみとめず,骨髄穿刺にても異常は確認されなかった.インターフェロンγの局注は効果をみとめず,放射線治療により一旦症状軽快したが,やがて全身の皮膚に多発性に腫瘤局面を形成してきたため,多剤併用化学療法を行ったものの次第に治療抵抗性となり,免疫機能低下によるアスペルギルス肺炎を発症し,悪性リンパ腫診断後2年目に死亡した.
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