1)Catecholamine研究の歴史的考察 Adrenaline(以下Aと略す),noradrenaline(以下NAと略す),dopamineによつて代表されるcatecholamine(以下CAと略す)は,3,4-ジハイドロオキシフェニール核(カテコール核)を有するエチルアミン誘導体の総称である.その発見及び研究の歴史はかなり古く,1901年高峰,AldrichによるAの分離,1904年StoltzによるNAの合成に始まり,Embdenら(1903年),Elliot(1905年),Faltaら(1909年)と相次いで,交感神経作用因子としてのAの定性的分析が行なわれ,1910年Bargerらは,生体内にはA以外にもA様物質が存在するはずと報告した.1933年Cannonらは,交感神経刺激によつて分泌される物質を,sympathin E(excitatory),sympathin I(inhibitory)と称えたが,翌年Bacqは,sympathin E即ちNAであるという考えを明らかにした.1947年Holtzらは,正常尿中にNAの存在を認め,更にEulerらは,いわゆるurosympathinなる交感神経作用因子が,A,NA,dopamineの混合物であることを,paperchromatographyにより明示した.このようにCAに関する知見が徐々に蓄積されて来たとはいうものの,その発展の経緯は決して飛躍的なものではなく,むしろ他のホルモンに比べて甚だ立遅れた状態にあつたといえよう.それはCAの生成,代謝等の機序が極めて複雑であることはもちろんであるが,該物質が比較的不安定で,生体内に微量しか存在せず,かつ構造上化学反応上の類似物質が共存する等から,その定量が甚だ困難であつたことに由来する.CAが臨床医学において注目されるようになつたのは比較的近年に至つてからで,ほぼ1950年以降のことである.これには蛍光測定法,アイソトープ技術,クロマトグラフィー等の導入があずかつて力があり,これによつてCAの生合成,貯臓,遊離,分解,代謝等の解明に著しい発展をもたらした.即ち1950年BlaschkkoはCAの生合成について,次のような主要経路を確立し(第1図),現在多くの支持を得ている.一方代謝に関しては,CAがmonoamine oxidase(以下MAOと略す)によつて酸化的脱アミノ化をうけることは,既に1937年頃より知られていたが,1957年主としてArmstrongらと,Axelrodらの実積になるcatechol-O-methyl transferase(以下COMTと略す),A,NAの3-メトキシ化合物及び尿中主要終末産
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