日本皮膚科学会雑誌
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112 巻, 7 号
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原著
  • 高平 佳恵, 安齋 眞一, 井上 多恵, 米田 耕造, 杉山 俊博, 出光 俊郎, 真鍋 求
    原稿種別: 原著
    2002 年 112 巻 7 号 p. 943-952
    発行日: 2002/06/20
    公開日: 2014/12/27
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    抗CD8抗体はケラチン15と交叉反応を示し,毛囊幹細胞が局在する外毛根鞘の毛隆起を特異的に認識することが報告されている.今回我々は,この抗CD8抗体を用いて,毛囊に分化していると思われる皮膚腫瘍におけるK15の免疫学的反応性を組織化学的に検索した.その結果,基底細胞癌や毛包上皮腫,毛芽腫,多発性毛包囊腫症などの毛囊系腫瘍では陽性細胞を認めたことより,これらの毛囊系腫瘍の発症機序には外毛根鞘毛隆起部に存在する幹細胞が関与しているものと思われる.
  • 横山 洋子, 石川 治, 宮地 良樹
    原稿種別: 原著
    2002 年 112 巻 7 号 p. 953-959
    発行日: 2002/06/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    アスコルビン酸2リン酸を添加した三次元培養系ヒト真皮由来線維芽細胞に,長波長紫外線(UVA; 320~400 nm)を10 J/cm2を1回,または2 J/cm2を5回照射した.UVA照射後,高齢者真皮由来線維芽細胞では非照射群と比較して培養上清中のI型プロコラーゲンC末端プロペプチド量と細胞層中ハイドロキシプロリン量が有意に低下し,I型コラゲナーゼ活性は有意に増加していた.一方,若年者真皮由来線維芽細胞では一定の変化は認めなかった.細胞層中グリコサミノグリカン二糖量は若年者,高齢者由来線維芽細胞ともにUVA照射による変化は見られなかった.今回の実験結果から,コラーゲン代謝に関しては高齢者真皮由来線維芽細胞は若年者真皮由来線維芽細胞に比べてUVAの影響を受けやすいことが示唆された.
  • 伊藤 康裕, 和田 隆, 浅野 一弘, 高橋 英俊, 山本 明美, 橋本 善夫, 飯塚 一
    原稿種別: 原著
    2002 年 112 巻 7 号 p. 961-967
    発行日: 2002/06/20
    公開日: 2014/12/27
    ジャーナル 認証あり
    1976年から2000年までの25年間に旭川医科大学皮膚科を受診した有棘細胞癌111例について集計した.男性65例,女性46例,男女比は1:0.7で若干男性に多く,年齢層は60歳から急増し,70~80歳代にピークを形成していた.部位別頻度では顔面が最も多く53例(47.7%)で,次いで下肢14例,足11例であった.前駆病変の明らかな症例は57例51.4%で老人性角化症が27例と最も多く,熱傷瘢痕の12例がこれに次いだ.老人性角化症由来は男性13例,女性14例とほぼ同数で,瘢痕由来は男性14例,女性4例と男性に多かった.治療法は手術単独が77例(69.4%)と多く,次いで手術と化学療法の併用が21例(18.9%)あった.再発,転移は22例で,うち13例が腫瘍死した.TNM分類によるstage別の5年生存率はstage Iは100%,IIは79.3%,IIIは34.4%,IVは0%であった.予後と相関する因子としてTNM分類,原発巣の深さによるlevel分類のほか,前駆病変としての瘢痕があげられ,さらに性別では男性が5年生存率71%であるのに対し,女性は92.2%と有意に男性で悪かった.
  • 兼古 理恵, 嵯峨 賢次, 神保 孝一, 高橋 博之, 後藤田 祐子, 村岡 俊二, 佐藤 利宏, 安斎 真一
    原稿種別: 原著
    2002 年 112 巻 7 号 p. 969-977
    発行日: 2002/06/20
    公開日: 2014/12/27
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    apocrine cystadenoma(AC)は顔面に好発する腫瘍であり,足発生例は極めて稀である.足背および足趾に発症したACの2例を報告する.症例1は74歳,男性.左第4趾背の15×17×10 mmの青褐色の結節.症例2は54歳,男性.左足背の45×36×25 mmの茶褐色の結節.2例ともに真皮内の囊腫であり,囊腫壁は一層から数層の円柱状細胞から成り,内腔への乳頭状増殖所見を認めた.症例2では,明らかな断頭分泌の所見を伴っていた.抗ケラチンモノクローナル抗体を用いて検討したところ,2例ともに囊腫壁細胞は汗腺組織の分泌部への分化傾向を示した.また汗腺と反応する抗体を用いた検討では抗Lysozyme抗体,抗S-100抗体,human milk fat globule 1(HMFG 1)は2例とも円柱状細胞で発現を認めたが,gross cystic disease fluid protein(GCDFP)は,症例1では円柱状細胞で発現を認めたが,症例2では発現を認めなかった.これらの免疫組織化学的検討の結果を総合的に判断して,自験例は2例ともにアポクリン分泌部への分化傾向を示すApocrine cystadenomaと診断した.
  • 天羽 康之, 高須 博, 新井 達, 増澤 幹男, 勝岡 憲生
    原稿種別: 原著
    2002 年 112 巻 7 号 p. 979-984
    発行日: 2002/06/20
    公開日: 2014/12/27
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    下口唇粘膜粘液囊腫に対して行ったトリアムシノロンアセトニド(ケナコルト-A®)局注後に,粘液産生腫瘍を思わせる特異な病理組織像を呈した症例を報告した.切除組織像は,粘膜固有層から粘膜下組織にかけて,細胞質に好塩基性の細顆粒を有し,中心に類円形の核をもつ細胞が大小多数の胞巣を形成して浸潤する所見を示していた.浸潤細胞に異型性や核分裂像は認められず,組織化学的に細胞内顆粒はムチカルミン,アルシアン青(pH 2.5)染色に陽性,トルイジン青に異染性を示し,免疫組織化学的にはCD68,lysozymeに陽性であった.さらに我々は拇指末節背面に生じた指趾粘液囊腫の切除術後に再発をみた症例に対してトリアムシノロンアセトニド局注を行い,その再切除組織にも前例と同様の浸潤細胞を確認した.これらの所見から自験例で認められた浸潤細胞はムコ多糖類を貪食した組織球であり,トリアムシノロンアセトニド局中により誘導された組織反応と考えた.
  • 小尾 麗子, 林 さなえ, 赤城 久美子, 今村 顕史, 味澤 篤, 比島 恒和
    原稿種別: 原著
    2002 年 112 巻 7 号 p. 985-990
    発行日: 2002/06/20
    公開日: 2014/12/27
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    HIV感染者に合併し,急速に進行した2期環状丘疹性梅毒の2例を報告した.症例1は29歳,男,HIV抗体陽性.顔,四肢,躯幹に潰瘍を伴う肉芽腫樣の暗紅色環状局面が多発.左鼻翼部の欠損,陰囊に落屑性紅斑,陰茎に潰瘍の多発を認めた.RPR法:4.8倍,TPLA:4,453倍.症例2は34歳,男,HIV抗体陽性.四肢,躯幹に痂皮,膿疱,潰瘍を伴う暗紅色環状局面が多発.軟口蓋の壊死と口蓋垂の偏位を認めた.RPR法:1,024倍,TPHA:40,960倍.組織は症例1,2ともに真皮のリンパ球と形質細胞主体の稠密な細胞浸潤であった.ペニシリン系抗生物質にて症例1は鼻翼の欠損,症例2は軟口蓋の欠損は残ったが,症例1,2ともに環状局面は瘢痕を残さず治癒した.HIV感染者に合併した特異な2期晩発疹と診断した.さらに,過去10年間に当科を受診した顕症梅毒のHIV陽性群と陰性群を比較した.HIV陽性群は陰性群に比べ多彩な皮疹をとり,再感染及び再燃が多かった.
学会抄録
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