成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)は,ヒトTリンパ指向性ウイルスI型(Human T-lymphotropic virus type I, HTLV-1)が原因で発症する最も悪性度の高い血液腫瘍の一つである.多剤併用化学療法の改良のほか,若年者では同種造血幹細胞移植も取り入れられ,化学療法単独と比較して良好な成績が報告されている.最近,ATL患者の90%以上で腫瘍細胞に発現しているCCケモカインレセプター4(CCR4)に対する分子標的治療薬であるモガムリズマブ(ポテリジオⓇ)が本邦で開発され,2012年5月に発売された.多発性骨髄腫の治療に用いられてきたレナリドミドが2017年3月から再発・難治性の症例に使用できるようになり,また現在臨床試験が進行中の薬剤もある.
皮膚リンパ腫は,進行速度や予後の異なる様々な臨床像を呈し,正確な病理組織診断と臨床病態の把握に基づく治療方針の決定が必要である.皮膚リンパ腫診療において血液内科医は,全身性に進展した患者あるいは局所治療のみでは制御困難となった患者に対する全身化学療法を担う.一方で皮膚局所療法の適応や皮膚病変の評価・管理など,皮膚科医との連携が必須である.診断早期からの血液内科医と皮膚科医の連携が,皮膚リンパ腫診療の質向上につながる.
64歳,女性.肺炎に対して塩酸バンコマイシンの点滴を施行.点滴開始後15日目に体幹四肢に水疱を伴う紅斑が多発.抗Dsg1,3抗体,抗BP180抗体はいずれも陰性.病理組織検査にて表皮下水疱と,水疱内,真皮浅層に好中球とわずかな好酸球浸潤を認めた.蛍光抗体直接法では真皮表皮境界部に線状のIgAの沈着を認めた.塩酸バンコマイシン誘発性線状IgA水疱性皮膚症と診断した.薬剤中止後,皮疹は軽快した.塩酸バンコマイシンの使用頻度は今後も増加すると考えられ,本症の可能性を念頭におくことが必要である.