血管腫の名称に関しては,近年,血管奇形研究国際学会International Society for the Study of Vascular Anomalies(ISSVA)の提唱した分類法が各領域で採用されるようになってきている.しかし,皮膚科領域では,長年の伝統に基づいた名称が馴染んでおり,いまだ過渡期的段階といえる.本稿では両者の相関・異同に触れつつ,主な病型の臨床所見を提示する.紙数の関係で記述は簡略にとどめ,臨床写真による理解を目指す.
乳児血管腫は血管内皮細胞由来の良性腫瘍で,血管内皮細胞の腫瘍性増殖とアポトーシスによる消褪を特徴とする.プロプラノロールは乳児血管腫に極めて有用かつ副作用も少ないため,機能障害や生命の危険が懸念される症例,巨大な場合や潰瘍を伴う症例では積極的に使用されている.現在はシロップ製剤として広く使用され始めているが,正しい診断,プロプラノロールの適応症例や投与期間などが今後の課題といえよう.
血管腫血管奇形に対する色素レーザー治療は,治療原理に基づく治療の限界があるため,個々の症例について,疾患,部位,年齢などを考慮しつつ適切な治療パラメーター(パルス幅,エネルギー密度など)と治療間隔を検討する必要がある.特に毛細血管奇形においては加齢性の変化があり,治療しても限界や再発もあるため,治療期間だけでなく長期経過観察が重要である.
71歳男.3年程前から両腰と膝周囲に痒みを伴う線状皮疹が出没し,湿疹としてステロイド外用加療も軽快せず半年前からは水疱も伴った.臨床像は線状皮膚炎様,病理像は好酸球とリンパ球浸潤を伴う表皮下水疱.血中抗BP180NC16a抗体陰性.蛍光抗体直接法では基底膜にC3の顆粒状・線状沈着を認めたが,IgG,IgAは陰性.蛍光抗体間接法では正常ヒト皮膚はIgG,IgAともに陰性.1M食塩水剝離皮膚では患者血中IgA抗体が表皮側に弱く反応も,水疱内容液を用いた検討は陰性.各種免疫ブロット法やELISA法で陽性所見認めず.以上より,顆粒状C3皮膚症と診断した.本症は未解明な点も多く,今後の慎重な症例検討が必要である.
53歳女性.関節リウマチの診断で経口金製剤1回服用後,皮疹と発熱が出現し,2日後に救急搬送された.全身に間擦部で融合傾向の強い紅斑があり,一部で小水疱がみられた.金の指輪でかぶれた既往があり,金製剤による全身性接触皮膚炎と診断した.金製剤による薬疹はかつて金疹と称され,注射金製剤によるものが多かった.しかし,すでに経皮感作されている人への金製剤投与による全身性接触皮膚炎の報告は少ない.金製剤による全身性接触皮膚炎は稀であるが,水銀と同様に激しい症状を呈し,皮膚科医として知っておくべき病態である.