本邦では,2016年に強皮症の診断基準・重症度分類・診療ガイドラインが改訂された.海外では2013年に,アメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会から,全身性強皮症の新しい分類基準が発表された.また2009年,2016年にEULARから全身性強皮症の治療に対する提言が示された.新しい診断基準と診療ガイドラインについて,変更点を中心に述べる.さらに,欧米の分類基準および治療に対する提言と本邦の診断基準・診療ガイドラインを比較する.
全身性強皮症は,皮膚や内臓臓器に線維化と血管病変をきたす自己免疫疾患である.その実践的な診療には,スキンスコア測定を含めた皮膚症状,爪かく部毛細血管異常,強皮症に関連した自己抗体,注意すべき内臓病変の理解が必要になる.治療方法は確立されていないが,線維化と血管病変に対する対症療法に加え,進行期の重症例ではステロイドや免疫抑制薬を使用した治療が必要になる.また,今後期待される治療法についても言及した.
68歳,女性.初診の3年前,左上腕の紅色皮疹に気づいた.近医皮膚科2軒で生検を受けたが,いずれも悪性像はなく当科に紹介された.左上腕に40×35 mmの境界明瞭な紅斑があり,生検でBowen病と診断し,切除した.切除標本では,異型ケラチノサイトの増殖部位は散在性に認めるのみで,紅斑部の表皮内には脂腺細胞塊が点在していた.Bowen病で自然消褪後の無疹部が混在することはしばしばあるが,紅斑部にも自然消褪領域は混在する.生検で悪性像がなくても,Bowen病が疑われる際には再生検を検討すべきである.
出生時より存在する赤色調のあざを主訴に2カ月時に初診した女児.下腹部右側に,やや陥凹する蒼白病変と暗赤色紅斑が不規則に混在する熱感のない局面を認めた.病理組織は,glucose transporter 1(GLUT 1)陰性の血管内皮細胞よりなる血管腫であった.1歳11カ月まで経過観察したところ,淡い紅斑はやや改善したが皮膚萎縮は不変であった.出生後に病変の増大がなかったことから,出生前に大部分が退縮し脂肪萎縮を呈したpartially involuting congenital hemangiomaが考えられた.