49歳女性.既往歴にアトピー性皮膚炎.平成21年3月に口腔内びらんが出現し,他院にて尋常性天疱瘡と診断された.ステロイドとIVIGにて加療されたが,同年12月に体幹に水疱とびらんが出現した.平成22年2月,前医にてDFPPとIVIGで加療するも,びらんは全身に拡大したため,2月下旬に当院に転院した.転院時の抗Dsg1,3抗体価は2,660,2,700であり,口腔口唇と体表面積70%以上のびらんを呈していた.複数回のステロイドパルス療法,血漿交換,IVIGを施行したのちも,水疱新生と抗体価の再上昇が見られたが,リツキシマブを投与したところ,1カ月後には完全寛解を得ることができた.その後18カ月以上完全寛解を維持し,早期のステロイドの漸減が可能であった.重症感染症などの副作用は認められていない.リツキシマブはヒトマウスキメラ型抗CD20抗体で,B cellを傷害する分子標的治療薬である.アメリカのFDAではCD20陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫と,関節リウマチに適応となっているが,近年海外ではSLEや天疱瘡などの自己免疫疾患においての効果が報告されている.本邦での天疱瘡に対する保険適応はないが,各種治療の併用を行っても急速な自己抗体価上昇の見られる重篤な尋常性天疱瘡や,長期の大量ステロイド投与および免疫抑制剤が必要な再発性の患者に対し,免疫抑制による感染症などの副作用に十分注意しながら試みるべき治療と考えた.
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