基底細胞上皮腫 (basal cell epithelioma, 以下 BCE と略) 156例について臨床病理学的,統計学的検討を行い次の成績を得た. 1.男性91例,女性65例で,男性に多く認められた (p<0.05). 2. 本邦における年齢別人口と BCE 発生頻度は正の相関がみられ,35歳以上では高齢になるにつれて発生数が増加した. 3. BCE の発生部位は胎生期顔面形成の解剖学的要因とやはり密接に関与していると思われる分布を示し,本腫瘍の病理発生の要因を強く示唆した. 4. BCE における色素沈着は約 85% に認められた. 5. BCE の大きさは,その推定発症時から初診時までの期間と緊密な相関を示し,本腫瘍の発育の性格を示唆した. 6.腫瘍の大きさは,臨床的な実測値から求めた次の回帰式で推定することができた. 腫瘍の大きさ(長径×短径)(mm2) =1.7363 (推定発症時より初診時までに要した年数)2 + 133.1192 7.この回帰式から算定してみると,腫瘍の直径の1年間の伸びは,10年以内では1.0mm以下,10年を超えると1,0~1.3mm 程度となり,また腫瘍面積が2倍に拡大するに要する期間は平均8.8年であった. 8. BCE はその発生部位,発生母地および誘因などから過誤腫的要素を多分に含む腫瘍と考えられた.
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