2019年10月5日,金沢市で開催された第70回日本皮膚科学会中部支部学術大会において,本学会キャリア支援委員会企画のワークショップが開催された.ワーキンググループ峠岡委員長のもとテーマを「未来設計図」として,講師を広島大学蓮沼ワーキンググループ委員が担当,ファリシリテータを各ワーキンググループ委員が担当し,従来のメンター&メンティーの相談会とは趣を変え,皮膚科医がどのような目標をもってキャリアを積んでいくのがよいか漠然とした将来像を具体化し,明日からの行動につながるセミナーを企画したのでここに報告する.
皮膚は,表皮・真皮・皮下組織の3層構造よりなる.また,毛包・汗腺などの付属器が真皮から皮下組織に存在し,皮表に開口している.表皮に存在する細胞の95%は角化細胞(keratinocyte:ケラチノサイト)であり,その他にメラノサイト,ランゲルハンス細胞,メルケル細胞が存在している.ケラチノサイトより生じる腫瘍の中では,表皮囊腫,疣贅,脂漏性角化症,日光角化症,ボーエン病,有棘細胞癌を取り上げ,稀ではあるが近年注目されているメルケル細胞癌についても,病理組織像の基礎的事項について解説する.
皮膚科を勉強している先生方は,汗管系腫瘍の病理はなかなか手強い分野のように感じていると思う.どれも同じように見えたり,出逢う頻度が少なかったりがその理由ではないかと考える.今回は少しでもとっつきにくさがなくなるように,基本的な汗腺系腫瘍,汗孔腫,汗腺腫,単純性汗腺棘細胞腫,アポクリン汗孔腫,汗管腫,らせん腺腫,アポクリン型皮膚混合腫瘍,乳房外パジェット病を取り上げる.
皮膚付属器腫瘍は,正常や胎生期の細胞や組織構築との類似性をもって分化方向を決定し,毛包系,脂腺系,アポクリン汗器官系,エクリン汗器官系と分類するのが一般的である.その上で,良悪性の判断を,非対称性,周囲間質への浸潤性増殖,細胞異型,核分裂像,壊死などで行う.この総説では,日常臨床のなかで比較的遭遇頻度の高いものを中心に,毛包脂腺系腫瘍の病理診断,鑑別のポイントについて,正常の毛包,脂腺の解説とともに紹介したい.