1983年11月~1986年12月までの3年2ヵ月間に,接触皮膚炎あるいは薬疹の疑いのある患者のうち,水銀系列抗原のパッチテストを施行した686例と,1974~1986年までの13年間に経験した水銀皮膚炎59例および消毒剤のパッチテストを施行した118例について観察し,以下の結論を得た.1)チメロサールは11.5%と今回調査した消毒剤のうちで最も高い陽性率であった.塩化第2水銀は9.0%,マーキュロクロム,アミノ塩化第2水銀,黄色酸化水銀は3%台であった.2)有機水銀であるマーキュロクロムとチメロサールに交叉感作と認めなかった.マーキュロクロムはアミノ塩化第2水銀と交叉感作がみられ水銀アレルギーであった.チメロサールは交叉感作がみられなかった.3)チメロサールの反応基としてチオサリチル酸が関与しているのは一部で,多くはチメロサール構造自体が抗原性を有すると考えられる.4)水銀皮膚炎59例のうち,全身型29例,局所型30例であった.全身型29例中26例は体温計の破損,局所型30例中23例がマーキュロクロムおよびチメロサール皮膚炎であった.したがって電子体温計に変換,両薬剤の使用禁止により水銀皮膚炎の発生を減少できる.5)蛍光造影剤フルオレスセインとマーキュロクロムの交叉感作は認めなかった.6)アトピー性皮膚炎の有無と有機水銀および無機水銀のパッチテスト反応に関連性はなく,増悪因子として考慮する必要はない.
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