薬剤内服および外用後,光線照射が加わつて露出部に湿疹様変化を来たす,いわゆる薬剤に基因する日光皮膚炎についての研究は,最近,盛んに行なわれるようになり,その発生機構についても次第に解明されつつある.このうち降圧剤によるものに関しては,Harber,Laskin-skyおよびBaerらは,chlorothiazide,hydrochloro-thiazideについて,photoallergic sensitizationのme-chanismを考え,その抗原となる物質は,生体内において,sulfonamideの場合と同様の酸化過程をうけて生じた酸化物であろうとした.その後,Baer and Harberらは,これらの酸化物によるpatch test,photopatch testおよび皮内注射後光線照射試験を試みたが,いずれも陰性であつた.このことから,sulfonamideの場合と異なる発生機序が考えられたのであるが,その詳細はなお不明であるとした.Chlorothiazideによる日光皮膚炎は,臨床的には日光照射部位の発赤,腫脹を主とするものであるが,著者らはたまたまbenzothiadiazine系降圧剤による日光皮膚炎において,炎症消褪後,特異な白斑黒皮症を発生するものがあることを発見し,これをphotoleucomelanodermatitis(Kobori)と仮に命名し,その第1例を日本皮膚科学会東京地方会第413例会において患者供覧した.その際,同様の症例が,西脇,肥田野両氏から追加された.ついで,昭和39年札幌において開催せられた第63回日本皮膚科学会総会におけるシンポジウムにおいて,著者らは同様の症例をあつめて,本症発生の頻度,原因薬剤等との関連性,白斑黒皮症発生機序等について報告したが,その後同様の症例がかなり報告されている.著者らも,その後約2年間に8症例を経験し得たので,この機会に各症例について検討し,またその発生機序について,現在までに得られた所見を報告し,御批判を得たい.
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