日本皮膚科学会雑誌
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104 巻, 12 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 宮沢 めぐみ
    1994 年 104 巻 12 号 p. 1413-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の患者10名から得た皮膚生検組織19検体につき,p53蛋白の発現およびp53遺伝子変異の有無を検討した.免疫組織化学染色にて3名,7検体でp53(DO-7)陽性細胞を認めた.生検組織より抽出したDNAを用いてp53遺伝子変異のhot spotであるエクソン5~9につきPCR-SSCP(polymerase chain reaction-single strand conformation polymorphism)法を行ったが,いずれも変異は検出されなかった.変異型p53蛋白は熱ショック蛋白(HSP)70と結合するため抗HSP72/73抗体を用いて免疫組織化学染色にてHSP72/73の発現を検討した.しかし,p53とHSP72/73発現の間には相関が認められなかった.従って免疫組織化学染色でのp53陽性例は変異型p53の発現ではなく,正常型p53蛋白の過剰発現によると考えた.以上よりCTCLの一部では正常型p53が過剰に発現されており,腫瘍の増殖をむしろ抑性する方向に働き,経過を遷延させている可能性が示唆された.
  • 橋本 明彦, 藤村 響男, 増澤 幹男, 西山 茂夫
    1994 年 104 巻 12 号 p. 1421-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    アナフィラクトイド紫斑病と溶連菌(Stretococcus pyogenes)の関連性につき検討した.患者30例のS. pyogenes菌体成分に対する血清IgA抗体価は健常人と比べて有意に高かった.とくに扁桃S. pyogenes陽性患者では抗体価が高い傾向があり,より多数の菌体成分と反応するIgA抗体が認められた.そこで菌陽性患者血清よりポリエチレングリコール沈澱法で免疫複合体を分離し,ゲル電気泳動,イムノブロット法を用いて分析した結果,沈澱物中にIgAとともに抗S. pyogenes抗体と反応する成分が検出された.さらに菌陽性患者の紫斑部の真皮上層に抗S. pyogenes抗体で染色される物質が認められた.これらの結果から,S. pyogenesの菌体成分がアナフィラクトイド紫斑病の発症抗原として働く可能性が示唆された.
  • 下江 敬生
    1994 年 104 巻 12 号 p. 1427-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    原因菌を皮膚病変から直接に検出することが困難とされている蜂窩織炎の感染モデルを作成し,菌の検出方法について検討した.従来から報告されている,皮膚生検法,needle aspiration法と切開圧迫法の3法で感染モデル病巣内のA群β溶血性連鎖球菌(A群溶連菌)の培養による検出限界を比較した.皮膚生検法は他の2法に比べ,有意に菌の検出率が高かった.さらに少量の菌を検出するため,A群溶連菌のM蛋白を支配する染色体遺伝子の塩基配列からプライマーを作成し,PCR法で蜂窩織炎モデル病巣内の菌を確認する方法を検討した.血液寒天培地のA群溶連菌では10CFU以下の菌の存在で目的の遺伝子が検出できたが,病変部組織からは50CFUの菌量が必要であり,その感度は皮膚生検法に比べ劣っていた.しかし抗菌薬を投与したマウスでは生検法で検出される菌量は減少したが,PCR法での感度は上昇した.
  • 小宅 慎一, 楠原 紀子, 大久保 ゆかり, 徳田 安章, 金井 貴子, 内藤 琇一
    1994 年 104 巻 12 号 p. 1435-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    1989年から1992年の間に外来を受診した患者のうちA群β溶連菌(S. pyogenes)が分離された皮膚細菌感染症患者について臨床統計的に検討した.病変部からS. pyogenesが分離されたものは64人(男51人,女13人)だった.年齢は,15歳から35歳までの若干層に多く高齢者では少なかった.受診者数は夏,秋に多い傾向がみられた.培養は手,足から行った例が約6割だった.単独感染(21%)に比べ混合感染(79%)が多く同時分離菌は黄色ブドウ球菌,コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が大半を占めていた.臨床的に湿疹,足白癬などの二次感染病巣から分離されることが多く手指,手掌,足底,足趾の病変部では膿疱,水疱が多発する例が多くみられた.薬剤感受性ではメチシリンを除いたペニシリン系,セフェム系抗生剤,ホスホマイシンでは耐性株はみられず,エリスロマイシン,ミノマイシンでも感受性は良好だった.
  • 豊福 一朋, 中山 樹一郎, 太田 浩平, 国場 尚志, 竹内 実, 永江 祥之介, 井上 裕章, 冨田 吉信, 河田 賢治, 小宮山 荘太 ...
    1994 年 104 巻 12 号 p. 1441-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
    ジャーナル 認証あり
    73歳の女性の頭部に原発した悪性血管内皮細胞腫(結節型)の1例に対し,rIL-2の持続動注と放射線療法の併用療法を施行した.動注経路を上甲状腺動脈より外頚動脈としてカテーテルを挿入し,rIL-2を35~70万JRU/日持続動注した.6週後に自然抜去したので,浅側頭動脈の分枝である頬骨眼窩動脈から逆行性に浅側頭動脈本幹にカテーテルを挿入し動注を施行し,自然閉塞などのトラブル無く左側は13週,右側は19週にわたる長期間の持続動注を可能にした.同時に,放射線照射を併用し一回2Gyを40回合計80Gy照射,治療開始10週後には完全緩解を得た.その後はrIL-2の持続動注とマイクロウェーブによる局所温熱療法を施行していたが,5ヵ月間,局所再発,遠隔転移をみず経過良好である.一般に結節型あるいは潰瘍形成型の悪性血管内皮細胞腫には,rIL-2は必ずしも効果はよくない1)~3).しかし選択的動注と放射線療法の併用はこの様な難治性の症例に対しても有効であると考える.また,緩解後の維持療法として,rIL-2と局所温熱療法の併用療法が有用であると考えられる.
  • 松村 和子, 小泉 洋子, 松村 哲理, 大河原 章, 根本 治, 森川 玲子, 小池 明美, 松浦 信夫
    1994 年 104 巻 12 号 p. 1447-
    発行日: 1994年
    公開日: 2014/08/12
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    Leprechaunismに伴う黒色表皮腫の1例を報告した.症例は,6ヵ月の女児,生後4ヵ月頃から,耳介後部,後頸部,腋窩,鼡径部の黒色表皮腫がみられた.著しい子宮内発育不全を伴った低出生体重があり,低位で大きな耳介,鞍鼻,横に張った鼻翼,厚い唇の特異な顔貌を呈し,多毛,皮下脂肪減少,血糖値の異常変動血中インスリンの異常高値があった.インスリン受容体の遺伝子解析でα-subunitをコードする遺伝子の異常が明らかにされた.リコンビナントヒトinsulin-like growth factor Ⅰ(IGF-I,somatomedin C)の皮下投与で,ブドウ糖負荷後の異常高血糖は改善され,血中インスリン濃度は低下した.しかし黒色表皮腫の病変に目立った変化はなかった.leprechaunismは,インスリン受容体異常によるインスリン抵抗性を示すまれな先天性代謝異常疾患であり,本邦皮膚科領域での報告は少ない.本症例は,高インスリン血症とIGF-Iおよび黒色表皮腫との関連を考える上で興味深い.
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