日本皮膚科学会雑誌
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120 巻, 4 号
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日本皮膚科学会ガイドライン
皮膚科セミナリウム 第59回 皮膚の幹細胞最近の知見
  • 大山 学
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第59回 皮膚の幹細胞最近の知見
    2010 年 120 巻 4 号 p. 841-847
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    皮膚幹細胞に関する新知見についてまとめた.特に,①今まで広く受け入れられてきたEpidermal Proliferative Unit(EPU)の仮説に反する所見,②皮膚の恒常性の維持に関する表皮基底層幹細胞と毛囊バルジ幹細胞の役割と相互関係についての新しい考え方,③幹細胞はこれまで考えられてきたようなゆっくり分裂する細胞ではない可能性を示唆する研究結果,④従来あまり注目されてこなかった脂腺幹細胞に関するデータなど,皮膚幹細胞の概念に大きなインパクトを与えた最近の新しい知見を紹介しつつ解説を試みた.
  • 西村 栄美
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第59回 皮膚の幹細胞最近の知見
    2010 年 120 巻 4 号 p. 849-853
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    色素細胞(メラノサイト)は,毛包内において幹細胞システムを形成していることが近年明らかにされてきた.毛包のバルジ領域に色素幹細胞は局在し,毛周期ごとに毛母に色素細胞を供給することで毛に色素が沈着する.色素幹細胞の維持に関わる遺伝子の欠損や変異によって,あるいは加齢に伴って色素幹細胞の維持が不完全となると,毛母に色素細胞が供給されなくなり白毛症(白髪)を発症することが明らかになってきた.
原著
  • 松尾 陽子, 芦田 美輪, 西村 香織, 竹中 基, 佐藤 伸一, 西本 勝太郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 4 号 p. 855-859
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    81歳,女性.Anti-neutrophil cytoplasmic autoantibody(ANCA)関連血管炎にて2001年よりプレドニゾロン(15 mg/日),間質性肺炎にて2005年よりシクロホスファミド(50 mg/日)が投与されている.2004年,左下腿前面に痂皮を付す暗紅褐色局面に気付いた.スポロトリコーシスの疑いで精査されるも菌の発育がみられず診断確定には至らなかった.その後受診がなかったが,2007年に同皮疹のため再度受診となった.痂皮のKOH直接顕微鏡所見にて多数の褐色の菌体を認めたため,診断と治療を兼ね全切除を行った.病理組織所見では,真皮に褐色の胞子連鎖や菌糸を含む類上皮細胞性肉芽腫がみられた.組織培養で,黒色コロニーの発育を認め,形態学的性状から,Exophiala jeanselmeiE. jeanselmei)と同定された.後日分離株は,internal transcribed spacer領域の塩基配列より,E. xenobioticaと同定された.術後8カ月現在,再発はない.免疫低下患者においては,黒色糸状菌症といった稀な皮膚感染症も鑑別疾患として考慮する必要が再認識された.E. xenobioticaは,2006年に提唱されたE. jeanselmei complex中の1菌種であり,自験例が同菌によるフェオヒフォミコーシスの本邦1例目の報告例である.
  • 久保田 由美子, 中山 樹一郎
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 4 号 p. 861-869
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    症例1:67歳男性.2年半前,透析導入.1年半前より肝癌にてTAEを2回施行.イオパミドールによるシャント造影の翌日,イオヘキソールによる造影CT後,指間,口唇に痛痒い水疱出現.症例2:63歳女性.6年半前,透析導入.4年前よりシャント造影のたびに口唇のピリピリ感,腫脹,水疱形成を繰り返していた.症例3:68歳女性.6年前,透析導入.1年前より,顔面,腰臀部,四肢遠位側の同じ部位に痛痒い紅斑が出没していた.数日前,色素沈着部に紅斑が出現.症例1と3は紅斑部の特徴的な病理所見で固定薬疹と診断.症例1は再投与により皮疹が再現され,また症例2は口唇での使用テストにていずれもイオパミドールが原因と判明.症例3は病歴よりイオメプロールが原因と判明した.造影剤による薬疹は多形紅斑型や播種状紅斑丘疹型が多く,重症化することは少ないといわれているが,自験例のように粘膜症状が主体の固定薬疹も少数ながら存在することを知っておくべきである.特に頻回にシャント造影を行う透析患者は注意が必要である.
  • 横山 眞爲子, 奥村 之啓, 江川 清文
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 4 号 p. 871-880
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    一地域におけるウイルス性疣贅と伝染性軟属腫の疫学的特徴を比較検討したデータは見あたらない.2003年1月から2007年12月までの5年間に,当院(熊本県天草市)を受診したウイルス性疣贅と伝染性軟属腫患者について統計的観察を行った.この間の全初診患者65,838名中,ウイルス性疣贅は1,701例(男女比1:1.09),伝染性軟属腫は1,328例(男女比1:0.95)であった.月別初診数は,ウイルス性疣贅では8月が,伝染性軟属腫では5月が最も多かった.罹患年齢については,ウイルス性疣贅は0歳から88歳にわたり8歳にピークがあるのに対し,伝染性軟属腫では0歳から77歳にわたり3歳にピークがあった.ウイルス性疣贅に比べ,伝染性軟属腫により低年齢で罹患する傾向は同一個体内でも見られ,ウイルス性疣贅と伝染性軟属腫両方に罹患した197例中,伝染性軟属腫に先に罹患した例は162例と圧倒的に多かった.ウイルス性疣贅ではまた,臨床型別にも年齢分布の違いがみられた.発症部位については,ウイルス性疣贅は四肢に,伝染性軟属腫は体幹に広範囲に生じていた.ウイルス性疣贅のうち尋常性疣贅とミルメシアは足,扁平疣贅は上肢に好発していた.また,アトピー性皮膚炎を含む湿疹性病変が,ウイルス性疣贅では6.9%に,伝染性軟属腫では15.7%にみられた.家族内発症は伝染性軟属腫に多く,ウイルス性疣贅の299名(19.1%)に対し,366名(33.2%)であった.今回の検討で,ウイルス性疣贅と伝染性軟属腫の疫学的事項の違いが明瞭になった.違いの理由として,原因ウイルスの標的年齢,標的部位,潜伏期間や感染力の違いなどウイルス側因子,湿疹性病変の有無など宿主側因子,ウイルス性疣贅と伝染性軟属腫治療における考え方の違いなど社会的因子の影響を考えた.
  • 須藤 麻梨子, 安田 正人, 関 姿惠, 永井 弥生, 石川 治
    原稿種別: 原著
    2010 年 120 巻 4 号 p. 881-886
    発行日: 2010/03/20
    公開日: 2014/11/28
    ジャーナル 認証あり
    48歳女性.1992年に全身性エリテマトーデス発症.2005年8月,全身の浮腫と皮膚の多発潰瘍のため紹介され入院した.ステロイドパルス療法にて潰瘍,浮腫ともに改善したが,ステロイド減量中に小腸穿孔を併発した.保存的に加療するも難治であり,再燃を繰り返した.さらに下大静脈血栓症も併発し,治療に難渋した.腹痛の出現以前に,ループス腸炎と合併しやすいといわれる膀胱炎を併発しており,小腸穿孔の原因はループス腸炎と考えた.一般にループス腸炎では,腹痛,悪心,嘔吐,下痢などの軽微な症状が主体であり,ステロイド全身投与に速やかに反応するといわれている.しかしながら,自験例のように重篤な症状をきたす例もあるため注意を要する.
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