81歳,女性.Anti-neutrophil cytoplasmic autoantibody(ANCA)関連血管炎にて2001年よりプレドニゾロン(15 mg/日),間質性肺炎にて2005年よりシクロホスファミド(50 mg/日)が投与されている.2004年,左下腿前面に痂皮を付す暗紅褐色局面に気付いた.スポロトリコーシスの疑いで精査されるも菌の発育がみられず診断確定には至らなかった.その後受診がなかったが,2007年に同皮疹のため再度受診となった.痂皮のKOH直接顕微鏡所見にて多数の褐色の菌体を認めたため,診断と治療を兼ね全切除を行った.病理組織所見では,真皮に褐色の胞子連鎖や菌糸を含む類上皮細胞性肉芽腫がみられた.組織培養で,黒色コロニーの発育を認め,形態学的性状から,
Exophiala jeanselmei(
E. jeanselmei)と同定された.後日分離株は,internal transcribed spacer領域の塩基配列より,
E. xenobioticaと同定された.術後8カ月現在,再発はない.免疫低下患者においては,黒色糸状菌症といった稀な皮膚感染症も鑑別疾患として考慮する必要が再認識された.
E. xenobioticaは,2006年に提唱された
E. jeanselmei complex中の1菌種であり,自験例が同菌によるフェオヒフォミコーシスの本邦1例目の報告例である.
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