各種皮膚疾患の診断および治療効果の判定に病理組織学的な変化を客観的に把握することは,必要不可欠と考えられる.そこで,モルフォメトリー法を用いて角化性病理所見の定量化を試みた.角化性病変の組織標本として,尋常性乾癬,日光角化症および老人性疣贅を選び,健常皮膚と比較検討した.方法については,一辺が10mmの正方形を10×10個に区切ったグリッドガラス板を顕微鏡の接眼レンズ下に挿入し,グリッドの4番目の線が表皮突起先端に当たる様にセットし,目的とする組織成分(①角質層,②角質層以外の表皮,③間質④膠原線維,⑤皮膚附属器,⑥その他の6項目と,グリッド内の組織成分が含まれない角質層上部の空間部分上のグリッドの交点を数えて定量化した.その結果,健常部皮膚では角質層,角質層以外の表皮,間質,膠原綿維,皮膚附属器,その他および空間の占める体積は,計測体積あたり各々3.2±5.4%,3.7±2.4%,16.0±5.4%,35.4±12.9%,4.1±5.3%および29.7±18.0%であった.角質層以外の表皮について健常皮膚上肢と疾患を比較したところ,健常皮膚の角質層以外の表皮が3.7±2.4%に対し,尋常性乾癬上肢は9.2±3.0%,日光角化症は10.4±9.8%および老人性疣贅は角化型で17.9±5.8%,表皮肥厚型で23.5±14.0%であった.これらの結果は,我々が病理組織所見から主観的に得ている情報と矛盾することなく,かつより正確に表現していると考えられる.以上の結果から,モルフォメトリー法は,主観的観察による病理所見すなわち表皮の肥厚所見を数量的に示し,かつ本方法によって病理組織所見も定量化できることが示唆された.
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