毛球部において毛球を構成する各層の角化細胞に分化する前の段階の角化細胞(未熟角化細胞)を電顕にて観察し,これらの角化細胞間には,Farquhar et al. のいういわゆるjunctional complexでは説明のできない新しい形の細胞間結合があるのを発見した.これらの未熟角化細胞間には,desmosomeやtight junctionも認められる.しかし,この他にdesmosome様構造は示しているが,完全なdesmosomeの構造は認められない結合があり,観察の結果これは各段階をもって発達していくdesmosomeの完成途上の構造と考えられた.著者はこれをかりにundeveloped desmosomeと名づけ,この結合を4段階に分類した.第1段階は細胞間にintercellular contact layerができ,tonofilamentがその部にあつまってくるまで,第2段階はあつまってくるtonofilamentの量が次第にましてくるところまでで,第3段階でattachment plaqueが形成され次第にあつくなってきて,第4段階でdesmosomeが完成する.このようなundeveloped desmosomeがみられるのはこれらの未熟角化細胞内にtonofilamentの産生が少ないので,desmosomeの生成がゆっくり行われるためではないかと考えられる.
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