膠原病は多彩な原因による多彩な症状を多臓器に生じる症候群であり,診断困難な疾患の代表である.皮膚科医は皮疹を診るという武器を持っているが,絵合わせにのみ頼ってしまうと落とし穴もある.まず膠原病症例に共通して見られ,レイノー現象など血管障害を主な原因とする非特異疹があり,膠原病か否かの選別に役立つ.そのうえで,例えば皮膚筋炎では,成人スチル病や組織球症を含めた血液疾患が鑑別疾患として挙げられる.さらに,一つの症例の中にもいくつもの疾患が混在していることもあり,たとえばシェーグレン症候群の血管障害では,クリオグロブリン血症性血管炎から深部静脈血栓症までが起こりうる.症例を例に挙げて解説する.
自己免疫性水疱症の診断には,臨床症状・病理組織学的所見・免疫学的所見の3つの観点からしっかりと検討する必要がある.特に,直接蛍光抗体法で患者皮膚への自己抗体あるいは補体の沈着を確認することは,診断においてきわめて重要である.皮膚科医としては,患者の背景・局所の状態・治療歴などによって多彩な臨床症状を呈することを念頭に置き,正確に自己免疫性水疱症を診断できるように常に準備しておきたい.
ネモリズマブのアトピー性皮膚炎患者を対象とした第III相臨床試験データを用い,ネモリズマブの皮疹改善効果に対するそう痒改善の寄与をmediation analysis法を用いて評価した.治療開始4週後では,ネモリズマブが直接皮疹を改善する効果の割合が大きかった.治療開始8週以降では,ネモリズマブがそう痒を改善することで皮疹を改善する間接的な効果の割合が増加した.そう痒を改善することで,itch-scratch cycleが遮断され,さらに皮疹が改善したと考える.
本調査では,アトピー性皮膚炎に対する抗炎症外用薬(ステロイド外用薬,タクロリムス軟膏,デルゴシチニブ軟膏)3剤の使用実態や医師の治療満足度を把握する目的で,皮膚科専門医を対象としたアンケート調査を実施した.ステロイド外用薬は,効果が良好との回答が多く,急性期治療における治療満足度が高かった.デルゴシチニブ軟膏は,副作用等の安全性に対する懸念が少ないとの回答が多かったが,他の薬剤との併用や変更などの使用実態についての情報は十分でなく,リアルワールドでのエビデンスを構築していく必要性が確認された.
国内での感染が確認されたサル痘の症例を報告する.サル痘は2022年に多数の非流行国での急激な感染拡大が確認され,同年7月に本邦でも初の感染が報告された.2022年12月現在本例含め8例の報告があるが,海外渡航歴のない例もみられるようになり,今後本邦でも感染拡大が懸念される.本例は発熱後3日より皮疹が出現し,漿液性紅色丘疹と,紅暈を伴う黄白色の小膿疱,中心臍窩や点状びらんを伴う紅色丘疹,痂皮を掌蹠含む略全身に新旧混在して認め,膿疱と痂皮からサル痘ウイルスが検出された.皮疹は3週間で自然消退した.