日本皮膚科学会雑誌
Online ISSN : 1346-8146
Print ISSN : 0021-499X
ISSN-L : 0021-499X
94 巻, 14 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 増田 智栄子, 林 正幸, 亀田 洋, 中嶋 弘, 永井 隆吉
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1577-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    60歳,女性.外陰部から大腿部にかけて4個の柔らかい結節を呈したamyloidosis cutis nodularis atrophicans(Gottron)の1例を報告した.この病変部からの生検,ホルマリン固定,パラフィン包埋組織切片を用い,抗免疫グロブリンL鎖(以下L鎖と略す)抗体,抗Bence-Jones蛋白(以下B-J蛋白と略す)抗体,抗IgG,A,M,E各抗体,抗AL抗体,抗AA抗体,抗プレアルブミン抗体,抗ケラチン抗体を一次抗体としたPAP法を施行し,沈着アミロイドの性状を検討した.その結果,沈着アミロイドは,抗AL抗体のλ型のみ陽性を示した.沈着アミロイド周辺の浸潤形質細胞は,抗AL(λ)抗体,抗L鎖(κ,λ)抗体,抗B-J蛋白(κ,λ)抗体,抗IgG抗体,抗IgA抗体に陽性を示したが,特に抗L鎖抗体,抗B-J蛋白抗体および抗AL抗体の各λ型において強陽性を示した.以上より本症は,局所に浸潤した形質細胞がL鎖ないしB-J蛋白を産生,分泌し,ALないしALと共通の抗原性を有するアミロイド線維に変化して結節を生じたものと推察した.amyloidosis cutis nodularis atrophicansは,大部分の症例では,血清にB-J蛋白ないしM蛋白を認めず,病変も限局性であるので,AL型アミロイドーシスの限局型と考えたい.
  • 山口 茂光
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1583-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    乾癬における末梢血T細胞機能の解析のため,T細胞のhelper活性,suppressor活性を検索し,以下の結果を得た.1)PWM剌激によるin vitro Ig産生ではT細胞過剰(T細胞/non-T細胞比が2~3以上)によるin vitro Ig産生の抑制が乾癬患者群で減弱していた.特にIgA産生はT細胞の増加にしたがって直線的に増加した.急性群と慢性群を比較すると,急性群でT細胞過剰によるin vitro Ig産生の抑制がより著明に減弱していた.汎発群と限局群の間に差はなかった.2)ConA誘導suppressor活性は乾癬群に軽度の減弱がみられたが有意な差ではなかった.急性群と慢性群,汎発群と限局群の間に差はなかった.3)AMLR(3日培養)によって誘導されたT細胞helper活性は乾癬群に有意な亢進がみられた.急性群と慢性群,汎発群と限局群の間に差はなかった.IgG系とIgA系の間に差はなかった.4)AMLR(7日培養)によって誘導されたT細胞suppressor活性は乾癬群全体では対照群と有意差はなかったが,急性群は有意な減弱を示した.汎発群と限局群の間に差はなかった.IgG系とIgA系の間に差はなかった.以上の結果より乾癬においてはAMLRによって活性化されるhelper細胞の機能亢進があり,特に急性群ではT細胞過剰やAMLRによって誘導されるsuppressor活性の障害されていることが示唆された.すなわち乾癬の発症初期や急性増悪期にはT細胞のhelper活性亢進とsuppressor活性低下が出現し.Ig産生の亢進等がひきおこされるが,病巣の拡大のない時期にはsuppressor活性が正常になり,全体としてhelper活性も正常になると考えられる.
  • 滝尻 珍重, 政田 佳子, 佐野 榮紀, 橋本 公二, 谷垣 武彦, 喜多野 征夫, 西岡 清
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1591-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    上肢に有棘細胞癌を併発した劣性栄養障害型先天性表皮水疱症の成人例2例を報告した.症例1,26歳,女性.左手背部の糜爛面に約3ヵ月の経過にて手挙大腫瘤を生じ,組織学的に角化傾向の少ない比較的未分化な有棘細胞癌であった.ブレオマイシン静注および腫瘤への局注を行ない,リニアックを照射するも効果を認めず,左前腕部より切断術を施行し,左腋窩および左鎖骨上リンパ節廓清を行なった.しかし,間もなく局所再発,肺転移をきたし術後4ヵ月で死亡した.症例2,33歳,男性.右前腕部に約1年の経過で扁平台状の手拳夫腫瘤を生じ,組織学的に角化傾向の強い比較的分化した有棘細胞癌であった.ペプロマイシン60mg静注後,右上腕より切断術を行ない加えて右腋窩リンパ節廓清を施行した.術後10ヵ月を経た現在も再発をみない.以上2症例は本症に有棘細胞癌を併発した本邦第2例および第3例目の報告例に相当する.また,本例の経験より本症の成人例に対しては有棘細胞癌をはじめとする皮膚悪性腫瘍の発生を常に念頭に置き,発生した腫瘤に対しては,速かに組織診断を下すとともに化学療法および手術療法を早期に行なうことが肝要であると考えられた.
  • 竹松 英明, 加藤 泰三
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1599-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    組織学的色素失調状態におけるメラニン顆粒の真皮内での動態をとらえ,真皮内よりメラニン顆粒を除去するために,以下の2つの実験を試みた.まず,メラニン顆粒の真皮内動態は,放射性同位元素で標識したマウス・メラノーマ由来のメラノソームをモルモット真皮内に注入し,その部位の放射活性を測定し,真皮内での消失過程をみた.また,標識メラノソームの注入と同時に,マクロファージに対し毒性のあるカラゲナンをモルモット腹腔内に注入すると,真皮内からのメラノソームの除去が抑制された.一方,局所にマクロファージを集積させるため,標識メラノソーム注入後2週間目に,DNCBによる遅延型接触過敏反応をおこさせると,コントロールと比較し,メラニンの除去が促進されたが,7日目で約28%の減少をおこすのにとどまった.さらに,真皮メラノファージをより特異的に攻撃し,メラニン顆粒を細胞外に放出させ,リンパ管系にのせて運搬させるため,抗マクロファージ抗血清を作製し,メラノソーム注入2週間後の上記実験的組織学的色素失調部位に注入した.これにより強い炎症反応は誘導されたが,メラニン顆粒の真皮からの消失は.PBS注入部あるいは無処置部と比較しても有意な促進効果は認められなかった.
  • 上田 正登, 神保 徹也, 市橋 正光, 芋川 玄爾, 平田 まり, 藤原 美定
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1609-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    正常ヒト培養線維芽細胞を用い,細胞内外のplasminogen activator inhibitor(PAI)活性を測定した.活性は標準フィブリン平板におけるurokinase或いはvascular activatorによる溶解に対する抑制率で表わした.細胞外PAIは24時間培養にて出現し始め,5日間培養にてurokinase 8U/mlのplasminogen activator(PA)活性を100%抑制し,熱処理に不安定であった.Cycloheximide添加にてPAI活性は低下し,Cycloheximide除去にて活性は上昇した.PAIはde novo合成され細胞外へ分泌されていると考えられた.細胞内でもマイクロソーム分画に高い活性を認めた.PAは本来の血栓溶解作用に加え,分化,組織形成,或いは癌増殖等多様な生物反応に関与すると考えられている.線維芽細胞がPAIを有する事実は線維芽細胞がPAの動的な調節を通じ,様々な生理的,病理的現象に関与する可能性を示唆している.
  • 森下 美知子
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1615-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    モルモットの側腹部にcharcoal activated powder(CAPと略),polystyren latex spheres(LTXと略),酸化チタン(TiO2と略)をそれぞれ皮内注射し,その異物排除現象について組織学的に検討した.さらにCAP注射群とLTX注射群についてはindomethacinを前投与し,TiO2注射群については大腸菌培養濾過液(ECFと略)と共に皮内注射し,それぞれ対照群と比較した.CAPは好中球と共に経毛包性に排泄され,LTXは好中球,変性結合組織と共に直接経表皮性に排泄された.TiO2は少量ながら経表皮性ならびに経毛包性に排泄された.indomethacinの投与によりCAP注入部では好中球の浸潤が減少し,経毛包性排泄が遅延する傾向が示された.一方LTX注入部ではindomethacin投与後も好中球の浸潤は軽減せず,経表皮性排泄に明らかな差異を示さなかった.TiO2注入部では,ECFの投与により好中球の浸潤が増加し,その経表皮性ならびに経毛包性排泄が増強された.これらのことより,異物排除機構においては好中球が重要な役割を果していることが示唆された.
  • 谷田 泰男, 舛 真一, 加藤 泰三
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1625-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    69歳,男子.顔面・両腋窩・両肩甲部・四肢に米粒大から鶏卵大におよぶ弛緩性水疱が多発し,口腔内びらんが認められた.ニコルスキー現象も陽性で,初診時,尋常性天疱瘡が疑われた.しかし,組織学的には,主に好中球が浸潤する表皮下水疱が観察された.微少膿瘍は認められなかった.蛍光抗体直接法により,基底膜部に線状にIgG・IgA・C3の特異蛍光を認めた.免疫電顕により,IgAは主としてanchoring fibrilに沈着していた.
  • 渡辺 信, 飯塚 一, 岸山 和敬, 大河原 章
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1631-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    皮膚の生化学的実験に際して純粋の表皮をintactでとり出すことはしばしば困難を伴ない,とくに表皮adenylate cyclase系を充分保存する表皮真皮の分離法は現在のところ満足すべき方法がないのが現況である.われわれはDispaseを用いて表皮真皮を分離し,その分離部位を検討し,合わせて得られたepidermal sheetのkeratinocyteの膜に対する影響をみるため,adenylate cyclase系の反応性とpemphigusの抗原性の検討を施行した.免疫蛍光抗体法および電子顕微鏡による超微細構造の検索で,basal laminaの部位ないしその直下で分離すると考えられる所見を得ると共に,adenylate cyclase系の反応性およびpemphigusの抗原性の検討から,epidermal sheetを比較的intactの状態で採取することができた.
  • 小林 與市, 増澤 幹男, 西岡 清, 佐野 榮春
    1984 年 94 巻 14 号 p. 1639-
    発行日: 1984年
    公開日: 2014/08/20
    ジャーナル 認証あり
    強皮症(PSS)患者血清中に,人臍帯静脈由来内皮細胞に対する障害因子が存在すると既に報告されている.今回,モルモット大動脈由来内皮細胞を標的細胞として,PSS患者および汎発性限局性強皮症,ならびにMCTD,皮膚筋炎,SLE,w-DLE患者血清を作用した時の3H,チミジン取り込み量を健常者血清を作用した時のそれと比較した.その結果,20%,2.5%の各々の血清濃度において健常者の3H-チミジン取り込み量に比べ有意な差がみられなかった.
feedback
Top