皮膚組織,中でも皮脂腺は加齢変化を含むその生理的機能の変化や皮脂腺腫瘍などの病態に性ステロイド,特にアンドロゲンやプロゲステロンが局所で活発に合成され作用する事に示されるように密接に関与している.この事により病態も含め皮脂腺では血中濃度に関係なく性ステロイドホルモンの局所濃度を高く維持させている.そこで本稿では生物学的活性が低い血中の前駆体ステロイドホルモンから活性が高いホルモンを標的/作用組織で合成,代謝させて作用させている“Intracrine”機構を中心にヒト皮脂腺における性ステロイド作用を考えてみる.
世界中で薬剤耐性(AMR)対策として抗菌薬の適正使用が求められている.痤瘡においては,アクネ菌の異常増殖が増悪因子となるため,抗菌薬治療が行われる.そのため,薬剤耐性アクネ菌が出現・増加し,抗菌薬治療の有効性を低下させている.アクネ菌の薬剤耐性は遺伝子変異が主因であったが,耐性遺伝子の伝播による多剤耐性株が増加しており,薬剤耐性のさらなる拡散が危惧される.薬剤耐性菌の出現と拡大を防止するためには,薬剤耐性アクネ菌の特徴と耐性メカニズムを知り,適切な抗菌薬治療を行う必要がある.
毛包虫(毛囊虫)と皮膚科で呼称されるニキビダニ類は,終生ヒトを固有宿主として寄生する節足動物であり分類上はクモの仲間である.健常者顔面から高率にニキビダニ類の寄生が確認できるので,ニキビダニの病原性について以前から議論があったが,近年酒皶や睫毛炎の病態への関与が報告されている.また,その過剰寄生による皮膚障害であるニキビダニ症は臨床で留意すべき疾患である.ニキビダニ症の臨床像は多彩だが,ステロイド外用薬で改善しない鱗屑を伴う顔面の紅斑丘疹膿疱には,直接鏡検やダーモスコピー検査によりニキビダニ症を鑑別し,ステロイド外用の漸減や中止を考慮する必要がある.ニキビダニ症の治療は酒皶や痤瘡に準じるが,スキンケアの修整が重要であり,時に抗ダニ療法が奏功する場合がある.
本稿では,いまだ不明な点が多いニキビダニ類とその関連するニキビダニ症について概略する.
掌蹠膿疱症(PPP)の病因には病巣感染が深く関与し,特に扁桃と歯性病巣が主要な原病巣となる.病巣感染治療は耳鼻咽喉科や歯科との連携が欠かせない.道北・道東地域におけるPPPに対する歯性病巣治療を促進する目的で歯科医を対象にアンケート調査を行った.PPPの原因について皮膚科と歯科の考えに違いがあり,後者の大部分が金属アレルギーと考えていた.また,皮膚科から歯科への情報提供と連携体制に課題があった.歯科と皮膚科が交流する機会を設け,情報共有の改善を図ることで,診療科連携を強化することが必要である.
19歳,女性.2カ月前より頭部に境界不明瞭な脱毛が出現し,円形脱毛症として加療された.しかし,脱毛出現と同時期からの体重減少が判明し,汎血球減少,抗核抗体・抗dsDNA-IgG抗体・抗Sm抗体陽性,低補体価を認めた.皮膚生検で瘢痕性脱毛の所見なく,真皮深層以深のムチン沈着と,蛍光抗体直接法にて表皮基底膜と毛包上皮にIgGとIgMの沈着を確認した.全身性エリテマトーデス(SLE)に伴う非瘢痕性脱毛と診断し,ヒドロキシクロロキン内服で脱毛は改善した.非瘢痕性脱毛はSLEの主要な皮膚症状の1つであり,脱毛症の鑑別疾患として重要である.
82歳男性.頭部血管肉腫に対し放射線療法とパクリタキセル投与8カ月後に局所再発が出現した.エリブリン無効,ドセタキセルで11カ月部分奏効を維持したが再燃し,パゾパニブ投与では肝機能障害をきたし2カ月で中止した.再発病変は頭部顔面にびまん性に紫斑性局面として拡大し開眼不能となったため,ドキソルビシン単剤療法を施行し部分消退を認めた.計7コース投与により局所病変の進行は緩徐となりQOLを維持することができた.血管肉腫に対するドキソルビシン単独療法について国内外の報告をまとめ,自験例を踏まえてその有用性につき考察した.
コロナワクチン接種後皮膚副反応と診断した22例を臨床的に検討した.患者は20~60歳代,モデルナ社製12例,ファイザー社製10例で,凍瘡型6例はモデルナ社製ワクチン被接種者のみに認められ,接種6~10日後発症していた.麻疹型はモデルナ社製では2~4日後,ファイザー社製では7~22日後,接触皮膚炎型は両社製とも2~8日後であった.10例は副腎皮質ステロイド薬を内服し,22例とも治療開始後1~2週間で軽快した.皮膚副反応に関する正しい情報の発信が求められている.