日本皮膚科学会雑誌
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123 巻, 8 号
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新・皮膚科セミナリウム 研究を目指す若手皮膚科医のために
  • 大山 学
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 研究を目指す若手皮膚科医のために
    2013 年 123 巻 8 号 p. 1485-1487
    発行日: 2013/08/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    初期研修の必修化,臨床現場における業務の多忙化などにより若手皮膚科医を取りまく環境は年々厳しさを増しているように見える.臨床に忙殺される日々のなかで研究に関わることの意味を見いだすのは難しいようにも思える.しかし,研究と臨床は別のものではない.臨床医が研究することの学術的な意義は大きく,また,研究に携わることで見えてくる,身につくサブスペシャリティやスキルはある.私は毛包幹細胞の研究から脱毛症の病態に興味をもち自分のサブスペシャリティとした.また研究で直面した問題を,脱毛症の病理診断で用いられるテクニックを活用することで解決し,今ではそれを診療に活かしている.基礎医学的な実験だけが研究なのではない.臨床の中に新しいことを見出そうとする行為そのものも研究である.研究マインドをもつことは,自分の臨床能力をさらに高めるための有用な手立てといえるのではないだろうか.
  • 加藤 則人
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 研究を目指す若手皮膚科医のために
    2013 年 123 巻 8 号 p. 1489-1492
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    普段診療している患者のカルテをもう一度調べなおすことで,日々の診療で疑問に思うことや患者からの質問に答えられなかったことに対する答えがみつかることがある.私たちがアトピー性皮膚炎患者のカルテを調べて分かったことを紹介するとともに,いつでも検討できるカルテの記載のポイントを概説した.
  • 椛島 健治
    原稿種別: 新・皮膚科セミナリウム 研究を目指す若手皮膚科医のために
    2013 年 123 巻 8 号 p. 1493-1496
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    近年,Th17や制御性T細胞などの新たなT細胞サブセット・皮膚樹状細胞サブセット・好塩基球・形質細胞様樹状細胞などの免疫細胞の新規役割が解明された.これらの皮膚免疫学の発展は,各皮膚疾患の理解に繋がるのみならず,生物学的製剤をはじめとする臨床応用に展開している.皮膚免疫学は皮膚科の臨床と密接な関係があり,この学問領域抜きに皮膚疾患を語ることは困難である.
原著
  • 安河内 由美, 江崎 由佳, 千葉 貴人, 古江 増隆, 三宅 大我
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 8 号 p. 1497-1503
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    飯塚病院皮膚科にて2010年5月から2011年5月の間にstreptococcal toxic shock-like syndrome(TSLS)3例を含む溶連菌性壊死性筋膜炎の4例を経験した.全例で免疫力低下を引き起こすような基礎疾患はなかった.先行する感冒症状や足白癬,外傷を認め,菌の侵入門戸の可能性が示唆された.皮膚所見としては全例で水疱や壊死を伴う紫斑・紅斑を認めたが,感染の主座は脂肪織,筋膜,筋肉と深部であった.試験切開部の浸出液によるA群溶連菌迅速検査は簡便で感度・特異度も高く,治療方針の決定に有用であった.我々の症例では,全例で患部の切断を行わずに治癒したことから,疑わしい症例では試験切開を積極的に行い軟部組織の状態を観察し,外科的処置の際に,肉眼で血栓や壊死を認めない部位やfinger testで陰性となる部位まで十分にデブリドマンを行えば,ショック状態の患者や高齢者・重篤な基礎疾患のある一部の患者を除けば,ほとんどの患者で断肢に至ることなくその後の回復は期待できると考えた.
  • 安齋 眞一, 阿南 隆, 福本 隆也, 木村 鉄宣, 川名 誠司
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 8 号 p. 1505-1513
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    札幌皮膚病理診断科で病理診断したらせん腺腫211例について,臨床病理学的検討を行った.病変はすべて単発例で,男104例,女107例,切除時平均年齢は不明の3例を除いて平均52.8±15.9歳であった.発生部位は,躯幹が最多で,次いで顔面の順であった.腫瘍の大きさは,記載のあった186例で,平均14.1±9.0 mmであった.疼痛に関しては40例(19.0%)で記載されていた.合併病変としては,円柱腫が4例(1.9%),Poroid細胞新生物が2例(0.9%),などが確認された.らせん腺腫癌は,3例(1.4%)で併発していた.標本を再検討できた58例について詳細な病理組織学的検討を行った.囊腫状構築は28例(48.3%),腫瘍間質の血管増生は34例(58.6%),出血は29例(50.0%)で観察された.病理組織学的に,症例を,病変の間質に浮腫があり,血管増生やときに種々の炎症細胞浸潤のある血管増生型(25例:43.1%)と,そのような変化の無い通常型(33例)に分類し,比較した.血管増生型では,切除時年齢が有意に高く,病変は有意に大きかった.病理組織学的所見については,血管増生型の症例で,出血ありが通常型より有意に多かった.
  • 木下 綾子, 木村 有太子, 今 泰子, 大日方 薫, 須賀 康
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 8 号 p. 1515-1525
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    2008年4月から2012年12月までの期間に,順天堂大学浦安病院皮膚科を受診した患者のうちで,児童虐待(身体的虐待)と診断を受けた7症例について検討をおこなった.7症例はいずれも熱傷を主訴として来院した生後8カ月から3歳10カ月までの男児であり,来院時に皮疹の形状が不自然であったことや両親から聴取した受傷機転が臨床所見と一致しなかった為,児童虐待を疑われて入院となった.入院中は当院の子ども安全対策チームとの医療連携をおこない,十分な協議の結果,児童虐待による熱傷と判断されたため,当該地区の児童相談所へ通告をおこなった.本論文では自験7症例についての臨床経過の詳細を報告するとともに,障壁が多いとされる児童虐待患者への対応についても合わせて言及した.
  • 川島 眞
    原稿種別: 原著
    2013 年 123 巻 8 号 p. 1527-1536
    発行日: 2013/07/20
    公開日: 2014/10/30
    ジャーナル 認証あり
    近年,癌治療における分子標的薬の使用頻度の増加に伴い,その副作用としての皮膚障害への対応が課題となってきている.そこで,分子標的薬による癌治療に随伴する皮膚障害に対する皮膚科医の診療実態や意識についての現状を把握し,今後の課題について考察することを目的として,全国の皮膚科医を対象とした調査を行った.対象と方法:2011年12月~2012年1月に医療従事者向けポータルサイト「CareNet」会員である皮膚科医を対象とし,二度にわたるインターネット調査を行った.結果:分子標的薬に起因する皮膚障害の診療経験の確認を目的とした一次調査で,その診療経験は,勤務医で88.5%(154/174名),開業医で61.0%(61/100名)であった.より広く診療経験者を対象とし,改めて診療の実態や意識を確認することを目的とした二次調査において,診療頻度は開業医では年間5例以下が85%を占めたが,病院勤務医では年間10例前後が多かった.また,病院勤務医では患者の9割近くが他科からの紹介で受診していたが,開業医では自発的受診が7割近くを占めた.治療においては,ステロイド外用剤,テトラサイクリン系抗生物質内服,保湿外用剤を主に使用する医師が大半である一方,抗菌外用剤を主に使用する医師も一定数いることが明らかとなった.皮膚科医のほとんどが,癌診療科・施設との早期からの連携が必要であると認識し,分子標的薬による皮膚障害に対し,主体的に取り組むべきと考えていることが示された.考察:分子標的薬による皮膚障害に対し,多くの皮膚科医が既に取り組んでいる実態が明らかとなった.一方その診療において,癌薬物治療専門科・施設との連携は手探りともいえる.癌患者の治療を支援する観点から,分子標的薬による癌治療に随伴する皮膚障害の有効な治療方法の確立,また,それを実施するため,皮膚科医はその重要な役割を認識し,研鑽を重ねるとともに,癌薬物治療専門科・施設との密な連携に取り組む必要があると考えた.
学会抄録
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