シアル酸特異レクチンであるLimax flavus agglutinin(LFA)を用い正常ヒト皮膚,特に表皮,エックリンおよびアポクリン汗腺,脂腺,メラノサイト,また皮膚腫瘍のうち外陰・腋窩・乳房Paget病,悪性黒色腫,Bowen病,有棘細胞癌,基底細胞上皮腫,脂漏性角化症,母斑細胞性母斑におけるシアル酸の分布,局在を組織化学的に検索した.方法はHRP標識LFAを用いる直接法によった.表皮では角質層を除くすべての細胞層が一様に陽性反応を示した.エックリン汗腺分泌部では表層細胞,基底細胞とも陽性反応を示し,特に基底細胞の細胞膜が強陽性を示した.アポクリン汗腺分泌部腺細胞も陽性反応を示し,特に細胞質が顆粒状の強陽性反応を示した.脂腺,メラノサイトも陽性反応を示した.皮膚腫瘍では外陰・腋窩・乳房Paget病,悪性黒色腫,Bowen病,有棘細胞癌,基底細胞上皮腫,脂漏性角化症,母斑細胞性母斑とも腫瘍細胞がいずれも陽性反応を示した.そのうち外陰・腋窩・乳房Paget細胞および悪性黒色腫細胞の約半数が強陽性を示した.以上の結果よりヒト表皮ではシアル酸が均等に分布していること,汗腺ではエックリン汗腺分泌部基底細胞およびアポクリン汗腺分泌部腺細胞に多量に存在することが示唆された.皮膚腫瘍では外陰・腋窩・乳房Paget細胞,悪性黒色腫細胞にシアル酸が多量に存在していた.特に悪性黒色腫細胞では正常メラノサイトや母斑細胞性母斑細胞に比較して,より豊富に存在していた.このことより,これら細胞が悪性化するに従いシアル酸量が増加することが示唆された.
抄録全体を表示