日本皮膚科学会雑誌
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99 巻, 7 号
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  • 兼松 秀一, 森嶋 隆文
    1989 年 99 巻 7 号 p. 783-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
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    病巣割面からのスタンプ螢光法と病巣中5-S-CD測定が,診断に苦慮することが多い悪性黒色腫早期病変の確定診断に有用であるか否かを検討し,以下の興味ある結果を得た.1)黒色丘疹・結節でnodular melanoma(NM)が臨床的に疑われた11例中3例がスタンプ螢光法と病巣中5-S-CD値とから黒色腫を思わせ,病理組織学的にはNM2例,superficial spreading melanoma(SSM)1例であった.上記方法で黒色腫が否定的であった8例は病理組織学的にpigmented spindle cell nevusとacquired melanocytic nevusがそれぞれ3例,melanoepithelioma Bloch Ⅱとpigmented basal cell epitheliomaがそれぞれ1例であった.2)色素斑の性状からmalignant melanoma(MM)in situが疑われたのは10例で,スタンプ螢光法上,螢光性腫瘍細胞がみられた例はなく,病巣中5-S-CD値からSSMの早期病変が疑われたのは5例で,病理組織学的にはSSM in situ 2例,SSM pT1 1例,atypical melanocytic hyperplasia(AMH)2例であった.残りの5例は病巣中5-S-CD値からMM in situは否定的であったが,病理組織学的にはlentigo maligna(LM)2例,dysplastic nevus 3例であった.3)以上の結果から,NMの早期病変はスタンプ螢光法と病巣中5-S-CD値から,手術中~手術当日に確定診断が可能と思われた.また,SSMの早期病変の確定診断にスタンプ螢光法は役にたたないが,病巣中5-S-CDの測定が極めて有用であった.上述の診断法でLMを診断することは不可能であった.
  • 渡辺 富美子, 児島 孝行, 守田 英治, 小林 まさ子, 藤田 優
    1989 年 99 巻 7 号 p. 793-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
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    組織培養法を用いて皮膚有棘細胞癌の細胞株(SCC-1CB)を樹立した.62歳,男性,腹部に生じた皮膚有棘細胞癌の外科的切除により得た腫瘤の一部をヌードマウスに移植し,さらにヌードマウスに継代し,継代4代目に形成された腫瘤組織を材料とし,10%牛胎児血清を加えたEagle's MEM培地を用い細胞株を樹立した.光顕で扁平な上皮様細胞で,電顕ではデスモソームとトノフィラメントを認めた.PAP法にて抗ケラチンポリクローナル抗体,抗ケラチンモノクローナル抗体,抗ビメンチンモノクローナル抗体陽性所見を得た.染色体分析ではヒト型,染色体数は46から79で,モードは56であった.ヌードマウスへの培養細胞の移植では腫瘤が形成され,光顕および電顕的検索にても有棘細胞癌の所見を得た.凍結保存は可能であり,樹立後二年半経過した現在もなお旺盛な増殖を続けている.
  • 井上 成史, 古谷 達孝
    1989 年 99 巻 7 号 p. 801-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    血中CEA値の上昇を認め,同時に病変部表皮内にもCEAの局在を証明し得,しかも皮疹軽快に伴い血中CEA値が低下した乾癬性紅皮症の2例を経験したことからCEAと乾癬との関連をみる目的で,無作為に選んだ尋常性乾癬患者20例,対照として健常人6例,紅皮症4例(原疾患:湿疹2例,扁平苔癬1例,薬疹1例),慢性湿疹6例について,未治療病変部表皮内におけるCEAの局在を免疫組織学的に検索した.乾癬7例については生検時に血中CEA値をも測定した.病変部表皮内におけるCEAは乾癬20例中10例で陽性,対照の健常人,紅皮症及び慢性湿疹では全例陰性であった.乾癬病変部におけるCEA陽性部位は,acanthosisとparakeratosisの両者がともに顕著な部位のparakeratosis直下の棘細胞間,細胞膜部及び棘細胞の細胞質の一部にのみ限局していた.以上より乾癬表皮内におけるCEAは,乾癬特有の表皮細胞の増殖亢進状態において,特に表皮細胞の分化異常すなわち角化障害が顕著な部位のみに一致して出現した免疫組織学的一表現と考えられた.乾癬患者7例の血中CEA値は,病変部内CEA局在の有無に拘らず全例正常範囲内で,既報の血中CEA上昇がみられた乾癬性紅皮症2例とは結果が異なった.この点については個々の症例ごとに病変の広狭,病勢の程度など勘案し,再検討する必要があると思われた.乾癬表皮内のCEA濃度の上昇により血中CEAが表皮内へ波及,沈着したものとは考え難く,表皮内CEAは乾癬において高度の角化障害に伴い,parakeratosis直下の棘細胞により産生されたもの,あるいは発汗異常によりエクリン汗中のCEAが表皮内に浸透し,前記部位に沈着したものと考えられた.著者らは前者によると考えているが,今後この点について検索したい.
  • 瀬在 由美子, 永島 敬士
    1989 年 99 巻 7 号 p. 811-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    昭和62年1月から3月までの間に旧国鉄寮にて集団発症した20歳代,男136例の風疹症例について血液,生化学的検査を経時的に施行した.その結果,LDH isozyme検査で風疹の際には特徴のある2つのパターンを呈することがわかった.すなわち,LDH3が最大分画を示すLDH3 dominant patternとLDH3の上昇に加えてLDH5がLDH4より多いLDH3 dominant+LDH5>LDH4 patternであり,ピーク時には前者は90.4%(5~6病日),後者は17.6%(9~13病日)の症例に認められた.その他の検査成績では,ピーク時に白血球数減少26.4%(1~2病日),血小板数減少38.7%(1~2病日),LDH上昇94.3%(5~6病日),GOT上昇32.4%(5~6病日)とGPT上昇48.5%(9~13病日)が認められた.このLDH3上昇は,自験例において血小板数とLDH3に負の相関関係が認められること,自験例のLDH isozyme patternと血小板破壊浮遊液のそれとはよく一致していることから,風疹ウイルス感染による血小板破壊に由来するものと考えた.また,LDH5上昇は,自験例においてGPTとLDH5に正の相関関係を認めることから,風疹ウイルス感染による肝細胞障害に由来すると考えた.以上のことから,LDH isozyme検査は風疹時における従来の血液,生化学,免疫学的検査に加え,風疹の早期診断および肝障害の診断にきわめて有用であると結論した.
  • 狩野 俊幸, 山根 康弘, 鈴木 正之, 矢尾板 英夫
    1989 年 99 巻 7 号 p. 819-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    39歳男.慢性腎不全のため血液透析を開始,約3年後より,日光露出部に小水疱,びらんが生じるようになった.家族歴,飲酒癖なく,血清鉄は正常で,明らかな肝障害もなかった.ポルフィリンは,尿は完全無尿のため検索できず,糞便,赤血球では正常域であったが,血漿で著増し,そのパターン分析を行うと,uroporphyrinが72%,7-carboxyl porphyrinが24%と2者で大部分を占めていた.血液透析中にPCTを発症した報告例を集計すると,最も普遍的に認められた所見はuroporphyrinを主体とする血漿ポルフィリンの著増であり,発症機序として,単に排泄低下による蓄積だけでなく,uroporphyrinogen decarboxylase活性に影響を与える因子の関与が考えられた.
  • 森脇 真一, 岡田 潤子, 八木 晴夫, 荻野 篤彦, 福山 拓夫, 藤田 真由美, 堀口 裕治
    1989 年 99 巻 7 号 p. 827-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    症例,81歳,男性.約20年前,下腹部に結節が生じているのに気づいたが放置していたところ徐々に増大してきた.初診時には6cm×6.5cm,高さ3cmの不正形円盤状に隆起した腫瘤となり,下床とは癒着していなかった.割面は黒ずんだ黄色,半透明,ゼリー状であった.病理組織学的には粘液様物質の中に小腫瘍塊が浮遊するかのような特異な像を示し,腫瘍細胞には異型性はみられず,一部管腔構造をなしていた.粘液様物質は組織化学的にsialomucinと推測された.自験例は1971年,Mendozaらにより提唱されたmucinous carcinoma of the skinに一致するもので,本腫瘍は免疫組織学的,電顕的検索によりエックリン汗腺分泌部由来と考えられた.
  • 川名 誠司, 塚本 宏太郎, 西山 茂夫
    1989 年 99 巻 7 号 p. 833-
    発行日: 1989年
    公開日: 2014/08/11
    ジャーナル 認証あり
    尋常性天疱瘡患者1例の皮膚における補体,とくにmembrane attack complex(MAC)の沈着を経時的に観察した.その結果,IgGと,C3までの補体のearly componentsの沈着は皮疹部,健常部ともに表皮細胞間(ICS)に陽性で,単にこれらの沈着だけでは水疱の形成につながらないことが示唆された.一方,MACの沈着は経過中つねに皮疹部に認められ,同時に採取した健常部にはなく,棘融解はMACのICSにおける存在に一致して認められた.また血中の補体結合性抗体は水疱形成の著明な時期に一致して上昇し,さらにこの抗体による補体の活性化は最終的にMACの形成に到ることが明らかとなった.以上の所見から,この症例の場合ICSに沈着した補体結合性天疱瘡抗体によって補体が活性化され,その結果生じたMACが病変の形成に関与したことが示唆される.
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