免疫チェックポイント阻害剤は作用機序,効果,副作用において従来の治療とは全く異なる新しいがん治療薬である.最大の特徴は奏効例における効果の長さと,特異な治療関連有害事象(自己免疫現象)である.メラノーマ以外のがん種でも適応が拡大し続けており,画期的がん治療薬として注目を集めているが,解決すべき課題も多い.本稿では免疫チェックポイント阻害剤の特性,現状,今後の課題について解説する.
進行期メラノーマの治療方針を決める際には遺伝子情報を把握することが不可欠である.メラノーマは進展や治療の過程で新たな遺伝子異常が出現するため,薬剤耐性がおこりやすい.現在,様々な併用療法(分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬,殺細胞性薬)の臨床試験が進んでいる.メラノーマの遺伝子異常は臨床的特徴(部位,紫外線暴露の程度,年齢)と関連している.近年,遺伝子異常に基づいた新しい病型分類が提唱されている.
33歳男性.約10年前より頭部,下顎部,腋窩,臀部に排膿を繰り返し,化膿性汗腺炎と診断された.1年前より発熱,盗汗,10 kgの体重減少が出現し,炎症反応が高値で,多発リンパ節の腫脹があり,悪性リンパ腫などの鑑別のため右鼠径リンパ節の生検を行なった.リンパ節には形質細胞が多数浸潤しており,他の臨床所見や検査所見より多発性Castleman病と診断した.抗IL-6受容体抗体であるtocilizumabの投与を開始したところ速やかに臨床所見は改善した.化膿性汗腺炎とCastleman病の関連が示唆された一例であり,考察を踏まえて報告する.
平成28年4月に発生した熊本地震において,当院は震源地に最も近い基幹災害拠点病院として発災直後から救急患者の受け入れを行った.4月14日前震発災時から4月16日本震発災後までで当院を受診した全1,455名のうち,皮膚科関連患者393名について検討した.さらに4月14日発災時から,一定の避難所集約が行われた5月5日までの期間において熱傷群についてまとめ,当院における過去3年の熱傷患者の統計と比較した.今回の熊本地震を通して,災害医療の最前線で皮膚科医は活躍できると感じた.
48歳男性.左示指に側爪郭に接しない幅3 mmの淡褐色色素線条あり.線条遠位部では爪甲の部分欠損がみられた.全切除生検でBowen病と診断後,爪器官を全摘して植皮した.ウイルス学的検索でHPV56型を検出し,免疫染色,in situ hybridizationでHPVの組織内局在を確認した.爪甲色素線条を呈する爪部Bowen病の多くは爪甲側縁部に発生し,側爪郭に接しない例は稀である.国内外で報告された爪部Bowen病156例,爪甲色素線条を呈したBowen病43例の文献的考察を加えて報告した.