日本皮膚科学会雑誌
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98 巻, 1 号
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  • 市川 澄子, 志田 祐子, 長野 伊津子, 清水 正之
    1988 年 98 巻 1 号 p. 1-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    過去6年間に経験した8例のチオプロニンによる薬疹を検討した.結果は男性2例,女性6例,年齢は30歳代から60歳代まで分布しており,原疾患に膠原病を伴うものは1例のみであった.発疹の臨床形態は扁平苔癬型4例,多型紅斑型2例,中毒疹型,湿疹型各1例であった.扁平苔癬癬型はさらに,チオプロニン長期内服後(3ヵ月,1年)発症する群と,短期間内服後(12日,13日)発症し,発熱等の全身症状を伴う群に分かれた.臨床検査所見では全例で好酸球増加をみ,原因薬剤確認試験では,リンパ球幼若化試験では1例で陽性を示したのみであったが,貼布試験では発疹の臨床形態にかかわらず全例陽性であった.さらに,扁平苔癬型症例においては,貼布試験陽性部位は湿疹型反応を呈したが,2週間後には扁平苔癬型反応を呈した.
  • 前田 学, 市來 善郎, 森 俊二, 洞井 俊夫
    1988 年 98 巻 1 号 p. 9-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    我々はこれまでに,①振動,②寒冷,および,③精神的緊張を伴う手作業が,PSSの発症や悪化に密接に関連していることを報告してきたが,今回,振動及び寒冷負荷がPSS患者に及ぼす影響を調べる目的で,健常人を対照として,人体固有の微細振動,すなわちmicrovibrationを測定した.その結果,20例のPSS患者群では,波形の不規則な場合が多く,11例(55%)が左右両側性にみられた.2分間のバイブレーターを用いた両手の振動負荷や氷水(0~2℃)での1分~1分半の両手冷水負荷後,波形の振幅は10例の健常人を用いた対照群に比べ,目立って高く,かつ,より不規則となり,回復に要する時間も長い傾向にあったことより,振動及び寒冷はPSS患者に強い影響を与えていると考えられた.また,このmicrovibration testは両者の鑑別にも有用と考えられた.
  • 岡田 奈津子, 池田 紀和, 喜多野 征夫, 吉川 邦彦
    1988 年 98 巻 1 号 p. 15-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    E-5166の培養人表皮ケラチノサイトの分化におよぼす影響を形態および細胞の産生するケラチン蛋白組成についてレチノイン酸と比較の上で検索した.人表皮ケラチノサイトは20%牛胎児血清を添加した培養液中で増殖させると細胞は重層し正常人表皮に類似の構造を作るようになる.しかし十分に終末分化の過程を逞るわけではなく,in vivoの皮膚でみられるような角質層を作ったり高分子ケラチン蛋白を産生するわけではない.ビタミンA欠除培養液を作製し,ケラチノサイトを培養した.その結果大型の扁平な細胞が出現し,一部では角質層を作り,通常の培養条件下ではみられない67KDのケラチン蛋白を産生するようになった.この変化は培養液にレチノイン酸を10-7M添加し培養しつづけることによりみとめられなくなった.一方,E-5166を添加して3週間培養すると角質層の形成や高分子ケラチン蛋白合成はおさえられたが,ケラトヒアリン穎粒を多く含む扁平な細胞が多数みとめられた.E-5166が培養ケラチノサイトの分化に影響をおよぼすことは明らかであるが,同じ濃度で比較するとレチノイン酸に比べてその効果は弱いと考えられた.
  • 折原 俊夫, 杼窪 精, 土屋 恭子, 古谷 達孝
    1988 年 98 巻 1 号 p. 21-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    25歳女性.初診の2ヵ月前より感冒および口内炎のため食事摂取困難が続き,1ヵ月前より両手,足,口周囲に定型的ペラグラ皮疹出現.さらに数日前から精神々経症状と下痢が出現.ペラグラの診断にてニコチン酸アミド投与により上記症状は軽快した.本例のペラグラ発症の原因として食事的要因以外の素因の関与も考えられこれらにつき精査したところ,本例では尿中インジカン反応強陽性,尿中アミノ酸分析における一塩基一酸性アミノ酸の排泄増加,トリプトファン経口負荷テストにおける吸収不全が明らかにされ,本例はHartnup病と診断された.また尿所見からは母親もsubclinicalな本症患者と考えられた.
  • 田中 由比, 呉 貴郷, 斉藤 明, 阿部 稔彦, 溝口 昌子
    1988 年 98 巻 1 号 p. 27-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    症例は33歳,女性.初診5年前より右頚部リンパ節腫脹.1年前より左頚部リンパ節腫脹と共に皮疹出現.初診時両頚部に大豆大までのリンパ節多数触知,肘頭,膝蓋,下肢,臀部に,中央に痂皮ないし小潰瘍を伴った丘疹が散在.足関節周囲に暗紅色の皮下結節を認めた.組織学的に臀部丘疹は壊疽性丘疹状結核疹,右外顆下方はバザン硬結性紅斑,頚部リンパ節はリンパ節結核と各々ほぼ典型像を示した.ツ反は前腕全体が腫れる程の強陽性を示した.患者リンパ球をPPD10~30μg/mlと共に培養したところ,ツ反弱陽性の対照健常者に比べ,強い幼若化反応を示した.尚,過去20年間における壊疽性丘疹状結核疹の報告例を集計し検討したところ,30代の女性に発現頻度が高く,合併症を持つものでは,ほとんどのものがリンパ節結核,バザン硬結性紅斑等の結核性疾患であった.近年,年間登録結核患者数は年度ごとに減少しているが,これに一致した壊疽性丘疹状結核疹の漸時減少傾向はみられなかった.
  • 大神 太郎
    1988 年 98 巻 1 号 p. 35-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    Anthracene(AN)および8-MOPはUVA領域に作用波長をもつ光毒性物質である.これらの物質が補体系に影響を及ぼすか否かを比較検討した.実験は,8-MOPまたはAN溶液をモルモット血清に添加後UVAを照射し,前後の補体溶血活性を測定する系で行った.その結果,ANはUVA照射エネルギー量および濃度に依存した補体溶血活性低下をきたすことが明らかとなった.一方,8-MOPには,UVA照射エネルギー量に依存した補体溶血活性低下は認められなかった.しかし,添加濃度が増すにしたがい補体溶血活性の軽度の低下がみられた.このANとUVAによる補体溶血活性低下のメカニズムは,ポルフィリン体による補体の光活性化現象に類似していた.一方,8-MOPはこれらの光毒物質とは異なった態度を示していた.このように,光線による補体活性の変化の有無を比較検討することは,光毒反応物質の分類や,光毒作用の解明にきわめて重要であると考えられた.
  • 赤崎 秀一, 峰松 義博, 吉塚 直伸, 芋川 玄爾
    1988 年 98 巻 1 号 p. 41-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    皮膚角層の水分保持に重要な働きが示唆されている角質細胞間脂質(SCL)の物理化学的性状及びSCL配合クリームの乾燥落屑皮膚改善効果(角層水分保持機能改善効果)について検討した.その結果,1)SCLはin vitroで多量の水の存在下でラメラ構造(両親媒性物質と水との会合体)を形成することが,偏光顕微鏡観察により確認された.2)SCLの角層水分保持機能改善効果発現に際しては界面活性剤の基剤への添加が必要であり,検討した界面活性剤の中ではグリセリルエーテル(GE)が最も高い改善効果を示した.3)ヒト前腕部からアセトン/エーテル処理で単離したSCLを薄層クロマトグラフィーでコレステロールエステル,遊離脂肪酸,セラミド,糖脂質画分に分け,それをW/Oタイプクリーム(ベースクリーム)に分散させ,これを同処理により生じた乾燥落屑状態の皮膚へ1日/1回,数日間塗布した.その結果各脂質画分配合クリームではいずれも,ベースクリームではほとんど認められない,水分保持機能の有意な上昇を伴う,乾燥落屑状態の有意な改善が認められた.4)セラミドの改善効果を更に確認するために,市販の牛脳由来のセラミドを検討したところヒト角層由来のものと同様な角層水分保持機能改善効果が認められた.SCL配合クリームによるSCLの除去により生じた乾燥性皮膚への改善効果は,角層細胞間においてSCLの膜構造が補強,再構築され,角層の水分保持機能が高まった結果と推察される.またこの際,GEのような特殊な界面活性剤の添加はSCLの角層への浸透性を助け,ラメラ構造の形成を促すものと考えられる.以上より角層水分保持機能に関与する因子として,角質細胞間脂質の重要性か確認され,中でもスフィンゴ脂質(セラミド)の主要な役割が明らかとなった.
  • 宮下 光男, 安井 由美子, 馬場 俊一, 鈴木 啓之
    1988 年 98 巻 1 号 p. 53-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    剥離表皮を用いたオートラジオグラフィーを用い,モルモットにおける標識細胞の標識率と分布を検討した.表皮のトリチウム標識チミジンによる標識率は個体差を有した.毛包間表皮の標識率は,4.5~14.3%であった.標識細胞の42.2~63.1%は単独で散在性に存在した.一方,残りの36.9~57.8%は,2,3あるいは4個集簇して存在した.単独に存在した標識細胞は分裂後,一方の娘細胞は基底層に残り,他方は分化の過程に入ったか,あるいは一方の娘細胞の細胞周期が変化し,片方の細胞だけが標識された,と考えた.そして,2~4個集まっているのは,偶然の隣接以外に,細胞分裂後も,角化過程に入らずそのまま基底層に止まり,同一細胞周期を保ちつつ次の分裂前DNA合成期に入る細胞集団の存在が考えられる.この考えを前提にすると,一方では分裂した2個の娘細胞が双方とも角化過程に入ってしまう可能性を想定することが必要となる.
  • 松田 和子, 佐藤 壮彦, 坪井 良治, 高 益俊, 矢口 秀男, 小川 秀興
    1988 年 98 巻 1 号 p. 57-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    Candida albicansがヒト角層内で増殖する場合にはC. albicans producing proteinase(CAPP)が菌増殖のための重要な菌側因子となっているものと思われる.CAPPは弱酸性の条件でしか作用しないが,カンジダ菌の感染する皮膚のpHは必ずしも弱酸性でなく,中性を含む種々のpH環境が想定されるため,C. albicansのpH環境の自己調整機序について検索した.その結果,C. albicansは種々のpH(3.0~7.0)に調整した培地内のpHを弱酸性にまで低下させることによりCAPPを発動させ,不溶性のタンパク源を分解して,それを窒素源として増殖する機序が判明した.培地内PH低下の機序としては,C. albicansが培地中の炭素源であるグスコースを酸にまで代謝する過程で,その程度により菌周囲のpHを自己調整し,CAPPが最も作用しやすい弱酸性の条件を作りだしている可能性が示唆された.さらに培養を続けると培地pHは再上昇するが,これは窒素源の代謝産物から発生すると考えられるアンモニア濃度の上昇と関連が深いことが示唆された.
  • 江川 清文, 吉村 浩二, 影下 登志郎, 小野 友道
    1988 年 98 巻 1 号 p. 61-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    チミジンのアナログであるbromodeoxyuridine(BrdU)のDNA合成期(S期)細胞への取り込みを,抗BrdUモノクローナル抗体を用いたABC法により可視化し,組織内におけるS期細胞の局在や頻度を知ることができる新しい方法について報告する.本法の皮膚病理組織学的応用について,成長期毛包を対象に検討したところ,S期細胞の分布および頻度は,従来の〔3H〕チミジンを用いたautoradiography法の場合とほぼ同様の結果を示した.また本法はラジオアイソトープ使用の必要性が無いことより,施設面など取り扱い上の制約がなく,結果も短時間で得ることができ研究面のみならず臨床面でも広く応用されうる重要な方法と考えられる.
  • 下妻 道郎, 中川 秀己, 大塚 藤男, 石橋 康正
    1988 年 98 巻 1 号 p. 65-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    超音波診断装置(周波数20MHz,Bモード,電子リニアースキャン方式,立石ライフサイエンス研究所開発)を用いて,男女の胸部,腹部,上下背部,前腕,上腕,大腿,下腿の伸側及び屈側の12箇所の皮膚(角層,表皮,真皮)厚を測定した.対象は20代と30代の健康人及び全身の皮膚厚に影響を及ぼさないと考えられる限局性皮膚疾患を有する患者,男子14例(平均年齢30.5歳),女子10例(平均年齢30.7歳)である.多くの部位では男は女よりも皮膚が厚い傾向があったが,胸部と腹部では,男女の皮膚厚はほぼ同じであった.皮膚厚を生体で直接測定でき,且つ患者への侵襲が少ない点より,超音波を用いた皮膚厚測定法は,有用性が高いと考えられる.
  • 石黒 直子, 尾立 冬樹, 岡村 理栄子, 肥田野 信
    1988 年 98 巻 1 号 p. 69-
    発行日: 1988年
    公開日: 2014/08/08
    ジャーナル 認証あり
    女子医大生216名の血清抗核抗体(蛍光抗体間接法,使用核材はマウス肝)を検索したところ,40倍以上は1.9%,20倍以上は7.0%にみられた.20倍及び40倍陽性の学生を検査したところ現時点で膠原病を思わせる所見はなく,健康人と考えられた.一方,昭和61年2月~62年1月に当科を受診し同様の方法で抗核抗体を検査した512名を膠原病患者とその他にわけて検討したところ,抗核抗体価40倍以上の者が9.2%おり,そのうち膠原病患者が64%を占めた.
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