日本皮膚科学会雑誌
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117 巻, 7 号
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皮膚科セミナリウム 第27回 物理・化学的皮膚障害
  • 臼田 俊和
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第27回 物理・化学的皮膚障害
    2007 年 117 巻 7 号 p. 1107-1119
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2014/12/03
    ジャーナル 認証あり
    熱傷の治療のポイントは,重症度と病期を考えて対応することである.熱傷の診断では受傷面積,深度に加えて,年齢,部位,持病や合併症の有無などを総合して重症度を把握することが大切である.初期治療では,入院や輸液療法の適応の有無を的確に判断する必要がある.局所療法は受傷早期,感染期,回復期の熱傷創面の状態に応じて,外用剤を選択・変更していく.自然上皮化が困難な深い熱傷では,漫然と外用療法を続けずに,壊死組織除去と植皮術による早期創閉鎖を目指すべきである.
  • 湊原 一哉
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第27回 物理・化学的皮膚障害
    2007 年 117 巻 7 号 p. 1121-1127
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2014/12/03
    ジャーナル 認証あり
    化学熱傷とは酸やアルカリを代表とする様々な化学薬品によって引き起こされる熱傷様の皮膚・粘膜障害である.その病態は刺激性接触皮膚炎の範疇に位置付けられている.原因となる化学物質は膨大な数におよぶ.そのため,初期の対応にとまどうことが少なくない.本稿では原因となる主な物質の分類と作用機序,診断時のポイント,および一般的な治療について述べ,さらには本邦でこれまで報告された症例をもとに具体的な事例についてまとめた.
  • 上出 良一
    原稿種別: 皮膚科セミナリウム 第27回 物理・化学的皮膚障害
    2007 年 117 巻 7 号 p. 1129-1137
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2014/12/03
    ジャーナル 認証あり
    太陽光,特に紫外線は皮膚に傷害作用をもたらす.急性傷害としてサンバーンがあり,慢性的曝露は日光黒子,シワなどの光老化や,良性,悪性の腫瘍(光発癌)をもたらす.また,免疫反応を抑制することも重要な作用の一つである.一方,皮膚には防御機能も備わっている.これらの機序について最近の知見をまとめた.赤外線の作用についてもまだ十分に理解されていない面も多いが,紫外線による傷害作用を増強することがわかっている.
原著
  • 川島 眞, 林 伸和, 乃木田 俊辰, 柳澤 恭子, 水野 惇子
    原稿種別: 原著
    2007 年 117 巻 7 号 p. 1139-1145
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2014/12/03
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者において,ステロイド外用剤等によりADの炎症が鎮静化した乾燥症状を主体とする部位を対象とし,保湿剤(ヘパリン類似物質含有製剤,以下HS)の有用性を,無処置を対照としたランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)により検討した.炎症が鎮静化した後にHSを1日2回2週間塗布し,寛解が維持された部位を有するAD患者65名をHS継続塗布群あるいは無処置群に無作為割付けし,主要評価項目を炎症の再燃までの期間とし最大6週間観察した.また,皮膚所見(乾燥・落屑)及び痒みの程度の推移を副次的評価項目とした.その結果,6週後における炎症の再燃率はHS継続塗布群で12.5%,無処置群で39.4%であり,HS継続塗布群において有意に炎症の再燃が抑制された(χ2=6.0841,p=0.0136).また,主要評価項目である炎症の再燃までの期間は,両群間に有意な差異が認められ(log rank検定,p=0.0117),HSの継続塗布により炎症の再燃までの期間が延長されることが明らかとなった.また,副次的評価項目についてもHS継続塗布群において,有意に症状の悪化が抑制された.以上より,保湿剤の使用はADの寛解維持に有用であることが示された.
  • 白坂 真紀, 段野 貴一郎, 林 進
    原稿種別: 原著
    2007 年 117 巻 7 号 p. 1147-1153
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2014/12/03
    ジャーナル 認証あり
    正期産新生児の角層水分量,経皮水分蒸散量,水保持能を経時的に測定することにより,新生児期の皮膚角層保湿機能の成熟度を明らかにし,肌ケアを考えるうえでの基礎データを得た.生後3日と2週間では角層の角層水分量と水保持能はきわめて低く,皮膚は乾燥状態で角層保湿機能は未熟であることがわかった.そして生後1カ月までに,胎内から胎外へという環境変化から身体を守るべく角層保湿機能が成熟していく様子が明らかになった.それに対して経皮水分蒸散調節機能(バリア機能)は備わっており,角層そのものの水分の少なさを補填していると思われた.したがって少なくとも生後2週間までは保湿に留意し,角層の成熟過程を損なわない肌ケアが必要である.さらに新生児を家族歴(アレルギー性疾患)の有無に分け角層保湿機能を比較したが有意差はなかった.
  • 吉木 竜太郎, 小林 美和, 安田 浩, 椛島 健治, 戸倉 新樹
    原稿種別: 原著
    2007 年 117 巻 7 号 p. 1155-1160
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2014/12/03
    ジャーナル 認証あり
    術前に軟部悪性腫瘍と疑診したchronic expanding hematomaの2例を,既報告歴の文献的考察を加えて報告した.症例1は72歳の女性であり,14年前の右鎖骨部手術部位に生じた皮下腫瘤が,初診約1年前に増大した.症例2は80歳の男性で,43年前に行った左肩甲部の手術部位への打撲を契機に,数カ月で皮下腫瘤が増大した.2症例とも過去に悪性腫瘍切除歴があり,画像診断においても腫瘤内部構造の不均一性が認められたことから,悪性腫瘍の再発,または悪性線維組織球腫などの軟部悪性腫瘍の発生が考えられた.切除標本では組織学的に血腫であり,悪性所見はなかった.Chronic expanding hematomaと軟部組織腫瘍の臨床的酷似性はすでに指摘されているが,自験2例のように過去の手術部位に生じた場合,鑑別として特に本症を十分考慮すべきであると考えた.
  • 石橋 正史, 長坂 武, 松村 都江, 北原 光夫, 陳 科榮
    原稿種別: 原著
    2007 年 117 巻 7 号 p. 1161-1167
    発行日: 2007/06/20
    公開日: 2014/12/03
    ジャーナル 認証あり
    Lupus erythematosus tumidus(LET)の1例を経験したため,同症の臨床,病理組織学的,免疫血清学的考察,他のlupus mucinosisを呈する疾患との鑑別をふまえ,本症の診断基準について考察した.症例は41歳,女性.17歳時より分類基準を満たさない膠原病として治療されていた.以前より,露光部及び背部に皮疹の出没を繰り返していた.当科受診の3カ月前より顔面,胸背部,上肢に紅斑が出現,拡大し,当科受診時に,同部位に,圧痛を伴う,表面平滑な浮腫性の散在性紅斑と網状紅色局面を認めた.抗核抗体は320倍陽性.組織学的に,表皮真皮境界部への炎症性細胞浸潤を認めず,真皮全層のムチンの沈着,血管,付属器周囲の密な細胞浸潤を認めた.直接蛍光抗体法で陰性.UVB-MED低下あり.以上の臨床,病理組織及び蛍光抗体法の特徴的なよりLETと診断し,遮光を指示,局所はステロイド剤外用にて,皮疹の軽快が得られた.
学会抄録
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