日本皮膚科学会雑誌
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114 巻, 1 号
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生涯教育講座
  • 相場 節也
    原稿種別: 生涯教育講座
    2004 年 114 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
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    皮膚科学の教科書を見ると私たち皮膚科医が知っていなければいけない皮膚病は1,000近くにのぼる.しかし,日常診療で私たちが,常日頃遭遇する疾患の大半は,大学病院などの特殊な病院で勤務している先生を除けば,接触皮膚炎を代表とする湿疹皮膚炎,白癬といっても過言ではない.白癬もその病態の本質が,白癬の菌体成分に対する接触皮膚炎と考えれば,私たち皮膚科医は,毎日接触皮膚炎に苦しむ患者を治療していることになる.しかし,それほど皮膚科医にとって一般的な病気である接触皮膚炎であるが,何故接触皮膚炎などという生体反応が存在するのかということはあまり議論されない.本稿では,私たちがこれまでに研究してきたハプテンを中心とした単純化学物質の皮膚あるいは,樹状細胞に対する影響の解析を紹介し,さらに,接触皮膚炎の生物学的意義について考察してみたい.
原著
  • 村山 功子, 岩渕 和久, 染谷 明正, 長岡 功, 高森 建二
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
    ジャーナル 認証あり
    臀部慢性膿皮症の典型例において,症状増悪時と軽快時における患者の好中球機能(①活性酸素生成能,②貪食能,③遊走能)を,健常人と比較検討した.その結果,①活性酸素生成能は,症状増悪時にザイモサン刺激で3.1倍,phorborl myristate acetate(PMA)刺激で1.9倍,formyl-methionyl-leucyl-phenylalanine(fMLP)刺激で2.5倍と健常人よりも上昇していたが,軽快時にはそれぞれ1倍,1倍,0.4倍であった.また,②貪食能は,増悪時には健常人の2.2倍と上昇していたが,軽快時には1.1倍となった.しかしながら,③遊走能は症状増悪時,軽快時ともに健常人と同程度であり,症状による変化も認められなかった.また,増悪時の末梢血好中球の接着分子(CD11b,CD62L)発現量,血中サイトカイン(TNF-α,IL-1β)量は,健常人と大きな差が認められなかった.以上のことから臀部慢性膿皮症患者(自験例)においては,症状増悪時に好中球の活性酸素生成能と貪食能は亢進するが,遊走能や接着分子の発現能などには変化がないことが示された.
  • 野呂 佐知子, 山本 明史, 山﨑 直也, 藤澤 康弘, 岩田 浩明, 中西 幸浩, 笹島 ゆう子
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 1 号 p. 15-24
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
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    国立がんセンター中央病院皮膚科において,1997年10月から2002年9月の5年間に悪性黒色腫61例にsentinel node biopsy(SNB)を施行し,61例中52例にsentinel node(SN)を同定した.SN同定率は,色素法のみでは82.4%であり,RI法を併用することにより100%に上昇した.摘出したSNは最大割面にてその転移の有無を病理組織学的に確認し,陰性であったSNはさらに連続切片を作製して,1.Mitf(microphthalmia transcription factor),2.HE,3.S-100,4.HMB-45,5.Melan-Aの順に免疫組織化学染色を行い,詳細に転移の有無を検討した.その結果,最大割面においてSNの転移が陰性であった39例中4例(10.2%)にmicrometastasisを認めた.
  • 宮岡 由規
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
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    成人型アトピー性皮膚炎の独特な皮疹とも言える頸部色素沈着の成因について考えるため,これを有する患者27名を対象として頸部皮膚の形態的・生理学的な特徴を検討した.デジタルカメラ,ビデオマイクロスコープで記録した表面形態像,皮膚の分光反射率と色(L*a*b*),角層水分量(コンダクタンス),経皮水分蒸泄量(TEWL)について解析した.また6名の患者に1年間間歇的にタクロリムスを外用し,その効果についてこれらの計測値の変化より評価した.結果,(1)頸部色素沈着は臨床的にゼブラ型,びまん型,中間型(部分的にゼブラ,網状,島状の色素沈着がみられるもの)に大別された.(2)頸部画像の輝度解析の結果,ゼブラ型ではLanger割線に沿った色素線条の方向性と周期性を認めた.線条間の平均距離は2.03±0.58 mmであった.(3)ゼブラ型では色素線条間の非色素沈着部はやや隆起して数珠状に並び,軟毛を認める例が多かった.また毛包間の距離に一致する約2 mm間隔で並ぶことから,非色素沈着部はPinkusのtransverse ordering of hair groupsに一致する毛包の連鎖と思われた.(4)色素沈着は皮丘・皮溝とは無関係に生じていた.(5)患者皮膚は健常対照に比べ,色素沈着の程度(L*とa*から誘導)が有意に強く,特にゼブラ型では吸光度のパターンからみて組織学的色素失調があると推定された.これらの結果より,毛包部の隆起を避けて,その間の皮膚にメラノファージを伴った色素沈着が生じた場合にゼブラ型になると考えた.さらに,(6)角層水分量は健常対照に比べ有意に低下していたが,TEWLは有意差を見なかった.(7)タクロリムスの外用で角層水分量は全例で増加したが,頸部色素沈着は短期には改善しなかった.
  • 伊藤 友章, 加藤 雪彦, 茂田 江理, 辻 香, 斎藤 万寿吉, 坪井 良治, 古賀 道之
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 1 号 p. 35-41
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
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    アトピー性皮膚炎患者に対し,半導体低出力レーザーによる星状神経節近傍照射を実施し,アセチルコリン,メサコリン,vasoactive intestinal polypeptide(以下VIP)による皮膚反応に対する影響を観察した.Ga-Al-As半導体レーザー(メディレーザーソフト1000®)は波長830 nm,光出力1,000 mWが得られる機器であり,連続波で20分間,右星状神経節近傍に照射した.皮膚反応はアセチルコリン1.0 mM,0.05 ml,メサコリン0.2 mM,0.05 mlを右前腕または背部に皮内注射し,15分後の遅延蒼白反応を測定し,VIPについては3.0 μM,0.05 mlを注射し,15分後の紅斑・膨疹面積を測定した.その結果,入院患者5回/週照射群(8名)は,計10回照射後のアセチルコリンによる遅延蒼白反応が8例中6例で,メサコリンによる皮膚反応も8例中3例で蒼白斑の面積が減少傾向を示し,VIP皮内反応は8例中5例で紅斑の面積が増大傾向を示した.外来患者1~2回/週照射群(10名)でもアセチルコリン,メサコリンによる蒼白斑面積の減少傾向,VIPによる紅斑の増大傾向が認められたが有意差はなかった.以上の結果から半導体低出力レーザーによる星状神経節近傍照射はアトピー性皮膚炎患者に認められる遅延蒼白反応を抑制することが判明した.
  • 山前 恵美子, 相馬 良直, 室田 東彦, 山前 正臣, 溝口 昌子
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
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    抗Jo-1抗体に代表される抗aminoacyl-tRNA synthetase抗体が陽性の多発性筋炎/皮膚筋炎患者では,筋炎のほかに間質性肺炎,関節炎,Raynaud現象などが高頻度に認められ,臨床的なサブセットとして認識されることから,antisynthetase症候群と呼ばれる.症例は64歳男性.筋力低下,関節痛,倦怠感と共に,両手の指腹,手指側縁と関節背面に落屑と亀裂を伴う角化性病変が出現.爪郭の出血点を伴うが,ほかに皮膚筋炎を示唆する皮疹はない.手指の皮疹は組織学的には慢性湿疹様で,satellite cell necrosisを伴っていた.血清CPK 6687 IU/l,筋電図で筋原性変化,筋生検にて変性と萎縮.間質性肺炎あり.抗Jo-1抗体陽性より,antisynthetase症候群と診断.手指の病変はantisynthetase症候群に伴ったmechanic’s handと診断した.mechanic’s handの過去報告例を集計し,antisynthetase症候群との関連について考察した.
  • 西島 千博, 佐藤 伸一, 小村 一浩, 平田 昭夫, 竹原 和彦
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
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    抗RNA polymerase(RNAP)抗体は,びまん性皮膚硬化型の全身性強皮症に特異性の高い自己抗体であり,同抗体陽性患者では心臓・腎臓病変の頻度が高く,広範な皮膚硬化を伴い,予後が悪いとされている.臨床的に腎機能の低下を認めない,抗RNAP抗体陽性68歳男性に腎ドップラーエコー法を施行したところ,両側腎において葉間動脈の血管抵抗の上昇を認めた.腎ドップラーエコー法により,潜在する無症候性の腎血管障害を評価しうることが示唆された.なお,トランドラプリルを投与したところ,腎血管抵抗は低下した.腎ドップラーエコー法は,腎クリーゼを来していないSSc患者の腎血管抵抗を評価する,非侵襲的で有用な方法である.抗RNAP抗体陽性患者では,腎血管抵抗の上昇を早期発見するために,定期的に腎カラードップラーエコー法で評価する必要があると考える.
  • 渡辺 晋一, 小川 秀興, 西川 武二, 東 禹彦, 西本 勝太郎, 香川 三郎
    原稿種別: 原著
    2004 年 114 巻 1 号 p. 55-72
    発行日: 2004/01/20
    公開日: 2014/12/13
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    趾爪白癬に対するイトラコナゾール(以下ITCZと略す)パルス療法は,400 mg/日3サイクルを基本とした療法が海外では一般的である.今回,この400 mg/日3サイクルと日本で広く行われている200 mg/日の低用量のパルス療法(3サイクル,6サイクル)についてランダム化二重盲検並行群間比較試験を行った.評価は6カ月目の著効率で判定,その後同意の取れた患者については48週間のフォローアップを行った.6カ月目の著効率はIII群(400 mg/日3サイクル)32.7%,II群(200 mg/日6サイクル)25.5%,I群(200 mg/日3サイクル)14.9%であった.また,「著効」以上と「著効」未満の例数より求めたオッズ比はI群に対してIII群(2.78)>II群(1.95)であり,III群のオッズ比の95%信頼区間(1.03~7.47)は1を含まず,著効率から判断して400 mg/日3サイクル(III群)のパルス療法の優位性が示された.また,副作用の発現率も3群間で差がみられなかった.さらに,1年のフォローアップ後においてIII群では24週目の治癒が3例であったものが17例に増加した.また,48週目までの爪中濃度―時間曲線下面積(AUC)は,I群(2,547±1,624 ng·h/g),II群(4,155±2,915 ng·h/g),III群(10,104±7,161 ng·h/g)であり,III群は他の2群に比べ有意に高く(p<0.01),投与終了後も長期にわたってITCZが爪に残存することが示された.また,II群とIII群は総投与量が同じにもかかわらず,爪への移行および残存は1日あたりの投与量が2倍であるIII群で高かった.患者アンケートにおいてもパルス療法による治療を望む患者が多かった.以上,今回の試験において1年間のフォローアップを臨床効果と併せて爪中薬物濃度の推移も検討したが,総投与量が同じでも1日あたりの投与量が倍量である400 mg/日の3サイクルが,投与終了後も爪中に薬物が長期に残留し,臨床効果も相関することが示された.
学会抄録
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