趾爪白癬に対するイトラコナゾール(以下ITCZと略す)パルス療法は,400 mg/日3サイクルを基本とした療法が海外では一般的である.今回,この400 mg/日3サイクルと日本で広く行われている200 mg/日の低用量のパルス療法(3サイクル,6サイクル)についてランダム化二重盲検並行群間比較試験を行った.評価は6カ月目の著効率で判定,その後同意の取れた患者については48週間のフォローアップを行った.6カ月目の著効率はIII群(400 mg/日3サイクル)32.7%,II群(200 mg/日6サイクル)25.5%,I群(200 mg/日3サイクル)14.9%であった.また,「著効」以上と「著効」未満の例数より求めたオッズ比はI群に対してIII群(2.78)>II群(1.95)であり,III群のオッズ比の95%信頼区間(1.03~7.47)は1を含まず,著効率から判断して400 mg/日3サイクル(III群)のパルス療法の優位性が示された.また,副作用の発現率も3群間で差がみられなかった.さらに,1年のフォローアップ後においてIII群では24週目の治癒が3例であったものが17例に増加した.また,48週目までの爪中濃度―時間曲線下面積(AUC)は,I群(2,547±1,624 ng·h/g),II群(4,155±2,915 ng·h/g),III群(10,104±7,161 ng·h/g)であり,III群は他の2群に比べ有意に高く(p<0.01),投与終了後も長期にわたってITCZが爪に残存することが示された.また,II群とIII群は総投与量が同じにもかかわらず,爪への移行および残存は1日あたりの投与量が2倍であるIII群で高かった.患者アンケートにおいてもパルス療法による治療を望む患者が多かった.以上,今回の試験において1年間のフォローアップを臨床効果と併せて爪中薬物濃度の推移も検討したが,総投与量が同じでも1日あたりの投与量が倍量である400 mg/日の3サイクルが,投与終了後も爪中に薬物が長期に残留し,臨床効果も相関することが示された.
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