過去18年間に旭川医科大学皮膚科で治療した悪性黒色腫58例についてまとめ,治療成績を含めた統計的観察を中心に報告した.年当り平均症例数は3.2人であるが,最近数年間での症例数の増加を認めている.平均年齢は58.7歳で,50歳以上の症例が全体の76%を占めていた.発生部位では下肢が全体の半数を超え,中でも足底が全体の24%を占めている.病型別ではacral lentiginous melanomaが最も多いが,他施設に比較し,superficial spreading melanomaを多く経験し,nodularおよびlentigo maligna melanomaが少ない.未治療例の病期別5年生存率は,Stage Ⅰが100%,Stage Ⅱが77.5%,Stage Ⅲが51%であった.Stage Ⅳは症例数が少なく観察期間も短いため,5年生存率は出していない.当科では1986年よりStage ⅡおよびStage Ⅲの黒色腫に対する外科的治療方針として,原発巣の広範囲切除に加え予防的リンパ節郭清を施行している.予防的リンパ節郭清施行後の病期別5年生存率は,Stage Ⅱ:86.0%,Stage Ⅲ:61.5%と治療成績の改善を認めた.このことは予防的リンパ節郭清の施行頻度が異なる躯幹発生群と四肢発生群の生存曲線を比較した場合においても有意の差となって現れていることからも裏付けられた.以上の結果より,当科における黒色腫の予後の改善には,Stage ⅡおよびStage Ⅲを対象にした予防的リンパ節郭清術が貢献していることが示唆された.
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