モルモットの DNCB 接触過敏症における Flare up 反応および Retest 反応の発生機序を抗原の面から検討し,以下の結果を得た. 1) Flare up 反応, Retest 反応とも肉眼的に6ないし9時間後に最高に達する浮腫を伴った紅斑であり,組織学的には表皮細胞内浮腫,海綿状態,表皮,真皮への単核球,多核球の浸潤があり Retest 反応では好酸球の浸潤が目立つ. 2)正常動物に DNB SO3Na を静注し,体内諸組織の DNP 基の分布を抗 DNP 抗体を用いた蛍光抗体法で観察した結果 DNP 基は表皮,口唇粘膜上皮,リンパ節,評,胸腺細胞,末梢白血球に分布し,頬粘膜,胃腸管粘膜,筋,肺,腎,肝内の分布は証明されなかった.表皮での分布は細胞膜を含む胞体に一致して証明され,静注後5分から3日まで証明された.また静脈内に投与された DNB SO3Na は少くとち注射後1時間は未結合であることが示唆された. 3) DNB SO3Na を静注された際に証明される DNP 基の表皮内分布は,感作,未感作動物で差がなく,感作動物の貼布反応をかつて生じた部位とその他の部位で差がみられなかった. 4) Flare up 反応は DNB SO3Na の静脈内,腹腔内投与で誘発され DNB SO3Na の経口投与, DNP-Lysine の腹腔内投与2, 4-dinitrophenol の静脈内投与では惹起されなかった.また前2者の投与後 Flare up 反応部位の表皮に DNP 基が証明されたが,後3者投与後は貼布試験部位の表皮での DNP 基の分布は証明されなかった. 5) DNCB 塗布と同部への FCA の皮内注射によって感作した動物において DNP-GPE, PPD で遅延型皮内反応を惹起し,反応消腿後に DNB SO3Na を静注したところ, DNP-GPE 反応部位のみに Flare up 反応がみられた. 6)DNCB塗布とFCA 皮内注射で感作した動物において DNP-GPE および PPD 反応部位に DNCB を塗布し retest を行なった結果 DNP-GPE反応部位にのみRetest反応がみられた,またFCA加DNP-GPEで感作した動物においてDNP-GPE, PPD 反応部位でDNCBによる貼布試験を行なった結果,試験9時間後には DNP-GPE 反応部位では PPD 反応部位に比し高率に陽性反応がみられた. 7) DNCB 塗布とFCA皮内注射により感作された動物において, DNCB 貼布反応部位で DNP-GPE, PPD による皮内試験を行なった結果 DNP-GPE に対してのみ Retest 反応が観察された. 以上得られた成績から一旦 DNCB に対するアレルギー性接触皮膚炎を生じた皮膚局所には,皮膚炎消槌後にも DNCB と表皮成分に対する感作細胞が残存し,それは DNB SO3Na の静注によってあるいは DNCB の再度の塗布によって形成されたこれらのアレルゲンと表皮成分の結合物と反応して Flare uP 反応あるいは Retest 反応を生ずると推測される.
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