悪性黒色腫の原発巣39例,転移巣9例と後天性色素性母斑10例について,蛍光顕微測光法により,それぞれの細胞核DNA量を測定し平均核DNA量と核DNA量のヒストグラムパターンの両面から解析を加えた.原発巣の平均核DNA量については,組織内の正常リンパ球をコントロールとし,その平均核DNA量を2Cで表したとき,悪性黒色腫の平均核DNA量は増加しており,後天性色素性母斑のそれに比べて有意に高値を示した.悪性黒色腫の生存例の平均核DNA量は死亡例に比て有意に低値を示した.また,原発巣切除後3年以内に所属リンパ節転移の見られた群は見られなかった群に比べて平均核DNA量が有意に高値を示した.さらに平均核DNA量3C未満の群の生存率は3C以上の群に比べて有意に良好であった.原発巣の核DNA量ヒストグラムをⅠからⅣの4型に分類した.悪性黒色腫のstage,Clark's level,Breslow's tumor thicknessとヒストグラムパターンとの間に悪性度についての関連がみられ,stageが進むほど,また浸潤が深部に達する症例ほど,ヒストグラムはaneuploid パタ― ンとなった.ヒストグラムパターン別に累積生存率を求めたところ,ヒストグラムが高度のaneuploidyを示すに従って生存率は低下し,パターンⅠとⅡ,およびパターンⅡとⅢの間を除いてすべての組み合わせにおいて有意差が認められた.同一症例の原発巣と転移巣の間の核DNA量の変化について検討したところ転移巣の平均核DNA量は原発巣のそれに比べて有意に増加していた.また,ヒストグラムパターンは9例中7例で原発巣と転移巣の間で変化は見られなかった.
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