平成10年から16年までの7年間,6月1日から9月 30 日までの期間に,長岡市の皮膚科開業医療施設で,細菌の増殖が関係していると思われた皮膚疾患のほぼ全例で培養検査をした.のべ 1,538 人の 1,657 検体中,培養陽性は 92.8% で,1,960 株の細菌が分離された.黄色ブドウ球菌1,372 株中,メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が 1,064 株,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は308株で,MRSAの割合は22.5% であった.メチシリン感受性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が 149 株,メチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌が 16 株,溶血性連鎖球菌が 128 株,その他の細菌が 295 株であった.なお,平成 16 年に MRSA が分離された皮膚疾患患者 51 人中,36 人から37 検体(1 人は再発したため2 回検体採取)を再診時に鼻腔から採取し,20 検体(54.1%)からMRSA が分離された.MSSA は平成 10 年,16 年ともに,ほとんどの菌株がセフェム系抗生物質に対して,感受性が感性(Susceptible,以下,S)と判定された.しかし,ゲンタマイシンへの感受性が S と判定された割合(S 率)は,平成10 年は 43.8%,16 年は 30.9% と低下していた.MRSA に関しては,ミノマイシン(MINO)への S率は,平成 10 年は 100%,16 年は 96.3%,ホスホマイシン(FOM)へ の S 率は,平 成 10 年 は 78.6%,16 年は77.7%,テトラサイクリンへの S率は,平成10 年は 71.4%,16 年は 70.4% と高かった.平成 10 年と 16 年の MRSA 分離皮膚疾患は,セフェム系抗生物質の内服,FOM とセフジニル(CFDN)の2 剤内服やMINO 内服と,外用剤の併用で全例が治癒した.なお,皮膚分離MRSA 株は CFDN やファロペネム(FRPM)に,他のセフェム系抗生剤へよりは高いS 率を示した.細菌が分離された皮膚疾患に対しては,まず MSSA が増殖していると想定し,セフェム系抗生物質の内服を第一選択として用い,症状が改善しない場合にはMRSA 感染症を考慮して,FOM と CFDN の併用内服やMINO 内服に変更するのが良いと考えられた.
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