38才正常男子の前腕部表皮をcantharidin含有発疱膏で処置し,真皮からほぼ完全に]R離,その後毛嚢からHaarscheibe(Hs)部へ再生する表皮細胞に混って現れるMerkel(Mk)細胞を経時的,電顕的に観察した.]R離後24~36時間で,Mk細胞は再生表皮基底層に,孤立性乃至2個相接して出現し,48時間で増加,結節状をなし,96時間で基底層に沿って一列に排列する.この所見は新しいHsの形成過程を示すものと推測される.一方出現したMk細胞には,時に小型のdesmosomeやaxonの附着が認められるが,特有な棘状細胞質突起はなく,その顆粒も初期には大部分未熟型で,時を経るに従い成熟型がふえる傾向がみられる.また屡々細胞構築に特長はないが,Mk細胞やAxon-Schwann-complexと緊密な位置関係を示すintraepidermal indeterminate cell(Ic)の増加があり,その一部にMk細胞に近い構造を示すものもあって,]R離後再生表皮内で,Mk細胞自身の分裂による以外に,その新しい形成があり,その際Icが重要な役割をはたしている可能性のあることが推論された.一方真皮性を示唆するMk細胞や,多核を思わせるSchwann細胞の出現も見られ,もしMk細胞に新生が起るとすれば,その母体として真皮に存在するSchwann細胞乃至それに近縁の細胞要素がまず第一に考慮されねばならないという結論が引き出された.
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