小児および成人計8例の正常エッタリソ汗器官(以下E汗器官と略す)の各構造ユニットにおける succinicdehydrogenase (以下 SDH )および phosphorylase-branching glycosyltransferase (以下 P-lase )の電顕細胞化学的特異活性パターンとその細胞下レベルにおける局在を明らかにした. 糸粒体局在性の SDH 特異活性は,分泌部明調細胞および真皮内汗管外周細胞に強い反応が認められ,分泌部暗調細胞および表皮内汗管下部外周細胞に中等度陽性反応が認められた,真皮内汗管および表皮内汗管下部の両管腔細胞では,陰性ないしきわめて弱い陽性反応のみであった.分泌部筋上皮細胞では,個々の糸粒体には強い活性反応が認められたが,総じて各細胞の糸粒体数が少なかった. 原形質基質局在性の P-lase 活性は,分泌部明調細胞および真皮内汗管外周細胞に強い陽性反応が認められ,分泌部の暗調および筋上皮両細胞,真皮内汗管管腔細胞,表皮内汗管下部外周および管腔両細胞に中等度ないし弱い活性が認められた.また真皮内汗管では主として生理的グリコーゲンより小さなpolyglucose (以下 PG )粒子が本反応で合成され,分泌部および表皮内汗管下部では生理的グリコーゲンより大きな PG 粒子が合成された.SDH および P-lase とも汗管のケラトヒアリン顆粒出現部より上部の表皮内汗管では活性を示さなかった.以上,ヒト正常E汗器官の各構造ユニットにつき, SDH およびP-Iaseの電顕細胞化学的活性パターソおよびその徴細構造内の酵素活性の局在を明らかにし,分泌部,真皮内汗管,表皮内汗管の各ユニットならびにその構成細胞の生物学的特質にかかる差異の存することを見い出した(Table 1).
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