日本皮膚科学会雑誌
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80 巻, 5 号
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  • 浅越 博雅
    1970 年 80 巻 5 号 p. 273-
    発行日: 1970年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    ニコチン酸(ナイアシン)は天然にニコチン酸またはニコチン酸アミドのままの形で,あるいはnicotinamide adenine dinucleotide(NAD)やnicotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADP)として広く生体内に存在する.その主体をなすものはNAD,NADPであり,たとえば能勢は血中のニコチン酸は大部分codehydrogenaseとして存在することを認めている.周知のごとくNAD,NADPは糖質代謝,脂質代謝,蛋白質代謝に関与し,脱水素酵素の補酵素として水素の伝達体として働き,細胞の新陳代謝,呼吸に重要な役割を演ずる.したがつて生体内の代謝におけるニコチン酸の意義は,その活性型であるNAD,NADPとしての作用にあり,またこのことから生体内のニコチン酸の変動はNAD,NADPの動きを反映するものと考えてよい.一方ニコチン酸またはそのアミドが,ペラグラ予防因子(pellagra-preventive factor)として発見された経緯についてもまたつとに有名であり,このペラグラがその主要症状として皮膚に特有の病変を惹起するものであることからも,皮膚とニコチン酸との間の密接な関係は疑いをいれえない事実と思われる.このペラグラ予防因子発見の当時(1937年)に比べると,その後のビタミン学は大きく進歩したが,それにもかかわらず今日でもなお,皮膚とニコチン酸との関係については依然として未解決の点が多い.以上のような観点から,著者は種々の条件下の種々の動物またはヒトの皮膚および血中のニコチン酸量についてその動態を追求し,これによつて皮膚とニコチン酸との相関の一端を解明しようとした.なお生体内の代謝を追求する場合,近年分子レベル,細胞レベルでの研究がとみに多くなつている.しかしこのような趨勢の中にあつても組織レベル,全身レベルで生体内代謝を大きくつかむことはなおかつ重要なことと考える.
  • 大城戸 宗男, 松尾 聿朗, 薄 喜代子, 籏野 倫, 菅野 剛史
    1970 年 80 巻 5 号 p. 297-
    発行日: 1970年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    乾癬の発生機序と関連し,本病巣部の表皮内において脂質の代謝異常が存在するか否かは古来多く議論されているところである.さらにある特定の脂質の代謝が正常表皮内におけるそれと異なる態度を示したとしても,それが本症の発生と直接的に関与するのか,それとも本症発生後その表皮細胞のもつ生化学的活性の増加を単に表現するのみであるかは興味のつきない問題である.著者らは正常マウス表皮と共にincubateされた3H-acetateが初めの4時間以内はそのincubationの時間と平行して各脂質にとりこまれるのを観察し,これを応用して乾癬患者の発疹部および無疹部における表皮内の各脂質生合成能を正常皮膚と比較検討した.その結果,無疹部においてリン脂質を除く他の脂質合成には異常を認めなかつた.しかし発疹部においては遊離脂肪酸とトリグリセライドは正常であるも,リン脂質と遊離およびエステル型コレステロールへの3H-acetateのとりこみは著しく上昇していた.本研究においては,乾癬表皮内でリン脂質への3H-acetateのとりこみが盛んである点に着眼し,そのとりこまれたリン脂質のsubfractionの分離,同定を試み,さらにその意義について検討をおこなつた.
  • 川村 太郎, 笹川 正二, 増田 勉, 本田 史朗, 木下 正子, 原田 昭太郎, 石崎 達, 永井 隆吉, 広川 浩一, 安西 喬, 姉小 ...
    1970 年 80 巻 5 号 p. 301-
    発行日: 1970年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    近年科学の進歩に伴い数多くの化学製品が次々に開発されているが,これらのうちには接触アレルギーを起こす可能性のある物質が少なくなく,職業的にあるいは日常生活において,これらの物質に接触する機会が多くなつたため,アレルギー性接触皮膚炎は次第に増えてきつつある.アレルギー性接触皮膚炎は,接触抗原によりアレルギー性機序により起こるものであるから,臨床的にも接触物により発症したことの明らかな接触皮膚炎の像をとることが多いが,急性あるいは慢性湿疹,貨幣状湿疹などと臨床的に診断されることも決して少なくない.貼布試験は患者の皮膚に少量の疑わしい物質を貼布し人工的に小範囲にアレルギー性接触皮膚炎を起こさせることにより原因抗原を探索する検査法であるが,上述したように接触皮膚炎は勿論のこと,従来素因の重視されていた湿疹でも一応routineに行なわれなければならない検査法である.欧米では貼布試験は既に長年にわたつて普及し,また市販の抗原セットもできているが,本邦では少数の施設ないし研究者によつて行なわれているが,一般化には程遠い状態である.最近北欧4ヵ国でも貼布試験を標準化するため委員会がもたれているが,われわれも本邦における貼布試験の標準化の第一段階として,貼布試験抗原の至適濃度おでび基剤をきめるため,昭和40年2月より昭和41年5月にわたつて材料および方法を統一して協同研究を行なつた.欧米の研究を参考にして最も有用と思われる49種の抗原を選び,それらの欧米における基剤および至適濃度あるいは使用濃度をそのまま使うことができるかどうかを調べ,本邦におけるそれらの基剤および至適濃度をきめ,またそれらの至適濃度における貼布試験場性率を集計して東京地方の標準系列をつくる参考とした.なお至適濃度とは過敏性のある大多数の人に陽性反応を起こししかも過敏性のない大多数の人に非特異的一次刺激によ
  • 望月 英彦
    1970 年 80 巻 5 号 p. 315-
    発行日: 1970年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
    われわれが日常種々の皮膚疾患で軟膏を使用する際に,その中に種々のTar剤を混入し好成績を得ているが,その作用機序については未だ不明の域を脱していない.Jadassohnの教科書にはCoal tarの作用機序に関する諸家の見解が多数記載されている.1943年にCombesは次のように作用機序を説明した.1)Tar中のNaphthalene,Phenol,Cresolの防腐,殺菌,止痒作用 2)Tar全体としての収斂作用 3)Methylnaphthalene,Dinaphthalene,Xylesol,Naphtholの角質新生作用 4)Tar全体としての還元作用 5)Anthracen油中のAcridine-compoundの光線感受性増強作用 以上のように説明しているが,確実な実験的根拠により説明されているのではないので,Tar剤の皮膚に対する作用機序はなお不明といわざる得ない.そこで今回著者は最もしばしば使われているGlyteer,Pityrol,Tumenolについての概略的な分析,定性,定量ならびに各種成分の正常家兎皮膚および炎症性家兎皮膚に対する肉眼的ならびに組織学的変化を考察し,加うるに各種成分の抗菌作用,さらにTar剤の臨床効果について比
  • 松尾 聿朗
    1970 年 80 巻 5 号 p. 330-
    発行日: 1970年
    公開日: 2014/08/27
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    角化現象における脂質代謝の役割の一端を知るためにマウスの皮膚培養細胞中における各脂質の脂酸構成とその変動,更に脂質生合成能を検討した.培養は前回報告(日皮会誌79:298,昭和44)した短期間培養法に従つた.マウス胎児皮膚由来の培養細胞に対するH-3-acetateの各脂質内への取り込み順位は,遊離コレステロール,トリグリセライド,エステル型コレステロール,遊離脂肪酸であつて,これは培養期間をかえても,ほぼ一定していた.このことは細胞内各脂質の代謝の活発度を示す.次いで培養細胞内の脂酸変動に関しては,ステアリン酸およびリノレン酸が培養日時を経るにつれ細胞内で増加した.更にこの脂酸構成の変動がいかなる脂質分画に由来するかをみると,トリグリセライドとエステル型コレステロール中の変化が著明であつた.これら多価不飽和脂酸の変化は培養液より細胞内に取り込まれるためであるが,一方ではある条件下で細胞内での合成の可能性も存在した.
  • 1970 年 80 巻 5 号 p. 331-
    発行日: 1970年
    公開日: 2014/08/27
    ジャーナル 認証あり
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